断熱改修の達人
古川 繁宏氏(住まい環境プランニング代表取締役)
断熱範囲と優先箇所を定め、コストを絞る部分断熱
日経クロステック/日経アーキテクチュア
断熱範囲と優先箇所を定め、コストを絞る部分断熱 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
住まい環境プランニング(盛岡市)の
古川繁宏代表取締役は、
住宅会社などからの依頼で
100棟を超す建物の断熱設計と施工を支援してきた。
2つの断熱改修事例を基に、
コスト削減の手法を解説する。
古川 繁宏氏(住まい環境プランニング代表取締役)(写真:住まい環境プランニング)
盛岡市内に立つ築約30年の木造2階建て
住宅A邸は、
もともとほぼ無断熱だったが、
断熱リノベーションを実施し、
外皮平均熱貫流率(UA値)を約0.23に高めた。
等級6に該当する断熱性能だ。
リノベーションの全体設計を手掛けた
佐川アトリエ設計事務所(盛岡市)は、
住まい環境プランニングの古川繁宏代表取締役に
断熱設計を依頼。
山井建設(岩手県滝沢市)が施工した。
A邸は過去の増築で延べ面積が約260m2に膨らんでいたが、
予算は3000万円と限られていた。
古川代表は予算内に収めるために
断熱改修面積を減らすことを提案した。
対象から外したのは、
1階の和室2間。
住人には思い入れのある部屋だったものの、
普段は使用していなかったからだ〔図1〕。
〔図1〕断熱改修範囲を減らす
左上の写真は改修前の外観。
左下は改修後の外観。
改修工事は2017年3月に終了。
手前の平屋部分は耐力壁を増やすため開口面積を減らし、
2階建て部分と同じ外装材で仕上げた。
改修前の1階平面図には、
断熱改修範囲を減らすために解体した部分と、
既存のままにした部分を示した
(出所:佐川アトリエ設計事務所の資料に日経アーキテクチュアが加筆)
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また、1階の浴室と居間の外壁線から飛び出している部分は取り壊した。
「減らせる面積は限られるが、
建物の外形に凸凹のある箇所は断熱・気密施工の欠損が生じやすく、
結露リスクを高める恐れがある」
と古川代表は説明する。
断熱改修から外した床面積は約55m2。
全体の約5分の1に当たる。
改修費は家全体を断熱改修した場合と比較すると、5分の4で済んだ。
部分断熱の場合、
室内に熱的境界が生じる。
住宅Aでは
和室2間と居室との間仕切り壁が、
熱的境界になる。
ここには外皮と同様に、
UA値0.23を達成するのに欠かせない付加断熱を施した。
その際、
和室側に手を加えずに済むように、
間仕切り壁に居室側から
アキレスの
「キューワンボード」を張っている〔写真1、図2〕。
キューワンボードは
硬質ウレタンフォームに
アルミを蒸着した製品なので、
居室側に防湿フィルムを張る手間を省けた。
〔写真1〕熱的境界は付加断熱で
熱的境界となる和室2間と居室との間仕切り壁の
居室側に、
付加断熱を施工している様子。
手前は間仕切り壁に
グラスウールを充填した状態。
奥はグラスウールの上に
キューワンボードを張った状態。
中央の引き戸はドアに交換する
(写真:住まい環境プランニング)
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〔図2〕熱的境界の居室側に断熱材を張る
熱的境界である
和室2間と居室との
間仕切り壁まわりの断面図。
非断熱空間の和室側に
手を加えずに済ませるために、
断熱空間の居室側からキューワンボードを張る(出所:住まい環境プランニング