K2西壁で遭難の登山家2人を追悼 日本山岳会「偉大な功績と精神」
朝日新聞社
K2西壁で遭難の登山家2人を追悼 日本山岳会「偉大な功績と精神」
登山家で山岳カメラマンの平出和也さん(45)と中島健郎さん(39)がパキスタン・カラコルム山脈のK2(標高8611メートル)西壁の未踏ルートで滑落した遭難を受けて、日本山岳会は「追悼」と題するメッセージをホームページで公表した。
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メッセージは橋本しをり会長名で23日に掲載した。「彼らは、日本を代表するアルパインクライマーとして数々の偉業を成し遂げ、その功績は世界中の登山家から尊敬を集めてきました」とした上で、中島さんについては「生涯を通じて未踏峰への挑戦を続け」、登山界のアカデミー賞にあたるピオレドールに2度輝いたことを挙げた。
ピオレドールを日本人最多の3度受賞した平出さんについては「アルパインクライミングにおいて独自のスタイルを確立し、卓越した技術と精神力で多くの難関ルートを突破」「山岳カメラマンとしても多くの作品を残し、登山の美しさと厳しさを余すところなく伝え」たことを挙げて、それぞれの功績をたたえた。
そして「二人の偉大な功績と精神は、これからの登山家たちにとって大きな指針となり、私たちの心の中で生き続けることでしょう」とコメントしている。
日本山岳会は1905(明治38)年に設立された日本最初の山岳クラブ。現在、本部と33の支部で約4300人の会員が活動している。会員による世界の高峰への挑戦が続けられているほか、登山・アルピニズムの振興や山岳文化の継承、自然環境保全、国際交流などの活動が行われている。
平出さんと中島さんが所属していた石井スポーツによると、2人はK2西壁の未踏ルートに挑んでいた7月27日、標高約7550メートルの地点から約6300メートルの地点まで氷とともに滑落した。現場にはヘリコプターも近づけず、地上から向かうことも難しいため、30日に救助を断念していた。
石井スポーツは8月22日、事故に関する「最終の報告」をホームページに掲載した。その中で「追悼」のコメントを発表し、2人は亡くなったとの見解を示していた。(吉沢龍彦