最上川堤防が「粘り強さ」発揮で決壊免れる、24年7月の山形・秋田豪雨
佐藤 斗夢
日経クロステック/日経コンストラクション
最上川堤防が「粘り強さ」発揮で決壊免れる、24年7月の山形・秋田豪雨 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
秋田県と山形県を中心に大きな被害をもたらした2024年7月の豪雨災害で、山形県戸沢村蔵岡地区の国道を兼ねる堤防が長時間の越水に耐え決壊に至らなかったことで、浸水はしたものの家屋倒壊などのより深刻な被害を免れた可能性があることが分かった。国土交通省東北地方整備局などが24年7月31日に実施した有識者委員会の現地調査で、明らかになった。
戸沢村蔵岡地区の被災直後の様子(出所:国土交通省新庄河川事務所)
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24年7月24日から26日にかけて、秋田県と山形県を中心に記録的な大雨に見舞われた。総雨量が500mmを超える箇所が出るなど、多くの雨量観測所で観測史上1位を記録。国交省が管理する河川では2水系5河川で氾濫が起こった。県管理河川を含めると15カ所の堤防が決壊するなど甚大な被害となった。
このうち、山形県戸沢村の蔵岡地区では、集落沿いを流れる最上川の堤防で、集落側の法面(のりめん)が約100mにわたって崩れ、流れ込んだ水などによって集落のほぼ全体が浸水。堤防は国道47号との兼用で使われており、一時的に全面通行止めとなるなど大きな被害を受けた。下流に狭窄(きょうさく)部があるので、大雨時に同地区周辺が増水しやすい環境だったことが影響した可能性がある。
2024年7月29日に撮影した戸沢村蔵岡地区付近の様子。集落全体が泥に覆われ、浸水した痕跡がうかがえる(写真:パスコ・国際航業)
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ただし、付近では約8時間にわたり計画高水位を超えていたものの、この堤防は決壊に至らず一部欠損した状態にとどまっていた。「(幅が大きい)国道との兼用堤だったことが功を奏し、粘り強さを発揮できた」と評する有識者もいたという。
国交省新庄河川事務所によれば、この堤防は50年以上前の昭和30~40年代にかけて整備された。国道47号の兼用堤として使われており幅員は約8m。幅員に合わせて比較的大きな断面を確保できており、堤防の強度が高かったと見られる。
欠損した堤防の応急復旧のイメージ(出所:国土交通省新庄河川事務所