経済を支え続ける
移民・難民のハングリー消費と、
もう好き勝手にだけやっているアメリカに、
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知ってはいけない、世界の《残酷な常識》日本メディアは報じない、”正義のアメリカ”国家解体「やりたい放題」の実態

欧米世界で高まるパレスチナ人への同情――ハマスのイスラエルへの奇襲攻撃は、耐え難い犠牲を伴ったものの「政治的」に見れば成功だったともいえる。だがその代償は大きく、イスラエル軍の凄まじい反撃によってガザ地区は焦土と化した。
アメリカがこれまで行ってきた世界各地での軍事介入政策は、特に中東諸国の国家崩壊をもたらし、無政府状態と混乱を引き起こした。
それゆえ、今では「中東で一番嫌われているのはアメリカ」といえる状況となっている。
だが、そんな嫌われ者・アメリカの中東での影響力は次第に弱まってきている。
そんな状況のなかで、
中東で新たな戦争が起こってしまった。
ドイツ在住のベストセラー作家・川口マーン惠美氏と
青山学院大学教授・福井義高氏が、
「ハマスのイスラエル奇襲攻撃」とこれに対するイスラエルの凄まじい反撃について語り合う。
※本記事は、『優しい日本人が気づかない 残酷な世界の本音―移民・難民で苦しむ欧州から、宇露戦争、ハマス奇襲まで』より一部を抜粋編集したものです。
世界各地で混乱をまき起こすのは、いつもアメリカ
福井義高(以下福井):アメリカは世界中で同じようなことを繰り返しています。 特に中南米ではやりたい放題です。1898年の米西戦争ではキューバの独立を支援すると称して開戦したのに、スペインを追い出した後は、キューバを事実上、保護国にします。その状態はフィデル・カストロに追い出されるまで続きました。 1903年には、運河建設をめぐりアメリカの意に沿わないコロンビアから、パナマ共和国を独立させたうえで、パナマ運河を建設したのみならず、運河両岸地帯を米領土としました。1999年にやっとアメリカはパナマに運河両岸を返還しました。
川口マーン惠美(以下川口):
リューダースに言わせれば、2001年9月11日の同時多発テロ以降、アフガニスタン、イラク、シリア、リビア、イエメンに至るまで、アメリカが行ってきた軍事介入政策は、中東諸国の国家の崩壊をもたらし、無政府状態と混乱を招いた。そして、イスラム国のようなテロ組織の台頭もこの介入政策と因果関係があるとみています。 彼の観点から眺め直せば、今の国際情勢はまったく違った風景に見えてきます。
イラクについても非常に詳しく、イラクがアメリカのせいで混乱状態になって以来、50万人もの子供たちが無惨にも死んでいった責任はアメリカにあると断言しています。
ところが普通のメディアではそういう意見がなかなか出てこない。
福井:
そのことは当のアメリカでも、主流派ではない左翼と伝統的保守が取り上げて、
自国政府を批判しています。
アメリカ指導者の非人道性を示す例が、
1996年5月、当時国連大使で後に国務長官となるマデレーン・オルブライトがCBSの報道番組《60Minutes》に出演した際の発言です。
これまで対イラク経済制裁で
ヒロシマより多い50万人の子供が死んだとされていることを問われたオルブライトは、
「難しい選択だったけれども、犠牲に見合う価値があったと思う(we think, the price is worth it)」と断言したのです。
この発言にはさすがに大きな批判が巻き起こりました。
オルブライトは「50万人」という数字にも異議を唱えませんでした。
川口:そう、いつも冷静なリューダースが、その話のとき、怒りで身を震わせるようになったのが印象的でした
イスラエルに「ノー」と言った最後の大統領
福井:
アラブ世界では英仏に植民地とされた歴史があるので、長年にわたり反英仏感情が広がっていたのに対し、アメリカは植民地支配とは無縁で、政治的関わりがあまりなかったので、反米感情は希薄でした。
モサデク追放の少し後、1956年に
「スエズ動乱」という軍事紛争がありました。
エジプトのガマール・アブドゥル=ナセル大統領がスエズ運河国有化を宣言し、これに反対して英・仏・イスラエルが出兵した「第二次中東戦争」あるいは「スエズ戦争」とも言われる軍事紛争です。
このとき、軍事力行使に慎重なアイゼンハワー大統領は、
力による現状変更は認めないという観点から、
事実上、ソ連とともにナセル側に立ち、
英仏そしてイスラエルに断固とした態度で撤兵を迫ります。
アイゼンハワーはイスラエルに明確に「ノー」と言った最後の米大統領といえるでしょう。
おそらく、このときがアラブ世界の
アメリカへの好感情が頂点に達した時期です。
しかし、せっかく築き上げた親米感情を、
アイゼンハワー以降の米歴代政権が崩していき、
今では中東で一番嫌われているのはアメリカといえる状況となっています。
川口:
力に任せて勝手なことをしすぎたのですから、
自業自得ともいえますが、
アメリカは今では嫌われているだけでなく、
中東での影響力も弱まってきていますから、
そのアメリカに庇護されていたイスラエルとしては、
不都合な状況でしょう。
福井:
イラクが国家として完全に崩壊し、リビアも同様の運命をたどり、中東の混乱は収拾がつかない状態となったのですが、イスラエルの安全は相対的に高まったともいえます。 イスラエルからすれば、人口で自国を圧倒する安定した国民国家が周囲にあることは、ただちに武力衝突とはならないにしても、潜在的脅威ですから。ただし、最大の敵イランは残っています。
川口:
先にも話に出ました「アブラハム合意」ですが、
これはすでに2020年8月に結ばれて、イスラエルはUAEと国交正常化を実現しました。
そして、スーダンとモロッコもこれに続きました。
しかも、今年(2023)になって、イスラエルとサウジの国交正常化という、絶対に不可能だと思われていたことが中国の仲介で成立。
エジプトやヨルダンは、すでにイスラエルと国交がありますから、
これはイスラエルとアラブ諸国の本格的な雪解けの始まりといってもよい画期的な動きです。
ただ、そうなると、パレスチナは置いてきぼりにされる可能性が確実ですので、
今回のハマスのイスラエル急襲は、その焦りに突き動かされた急進的な行動だったのではないでしょうか。
福井:
ハマスは当初、これほどの大事になるとは想定していなかったとも言われています。イスラエルから人質を連れ去り、イスラエルで拘束されているパレスチナ人奪還の交渉材料にするのが目的だったというのです。
この説が正しいかどうかはともかく、今回の奇襲の大成功は、世界中で畏怖されているイスラエル軍と情報機関モサドの威信を大きく傷つけました。攻撃を予測できなかったばかりか、やすやすとハマスの侵入を許しました。
当初、現地部隊はほとんど抵抗できず、兵士と民間人に1000人強の犠牲者が出ました。面目をつぶされたイスラエル軍による反撃はすさまじいスケールのものとなり、カザ地区は焦土と化し、ハマスの攻撃によるイスラエル人犠牲者の10倍以上の犠牲者が出ています。ほとんどが子供を含む一般民衆です。
ただし、これまでイスラエルとの対立でパレスチナ人が犠牲になっても、欧米主流メディアではほとんど取り上げられなかったのが、今回のガザ地区の惨状は大々的に報道されています。
そのため、アラブ諸国だけでなく、欧米でもパレスチナ人に同情が広がっており、結果的にハマスの無謀ともいえる攻撃は、耐え難い犠牲を伴ったものの、政治的には成功だったということもできます。
* …引きつづき本記事の連載は<日本人が知らない、世界の《残酷な常識》…ウクライナ、ゼレンスキー英雄説はじつは「危ない行為」と専門家が指摘するワケ>からどうぞ。
川口 マーン 惠美、福井 義高
知ってはいけない、世界の《残酷な常識》日本メディアは報じない、”正義のアメリカ”国家解体「やりたい放題」の実態(現代ビジネス)