ウクライナがロシアに越境攻撃、主要ガス施設制圧との情報も クルスク州に非常事態宣言
ウクライナがロシアに越境攻撃、主要ガス施設制圧との情報も クルスク州に非常事態宣言
ロシアは6日、ウクライナと国境を接するクルスク州がウクライナ軍の越境攻撃を受けたと発表した。攻撃は翌7日も続いており、同州に非常事態が宣言された。 クルスク州のアレクセイ・スミルノフ知事代行は非常事態宣言について、「この地域への敵軍の侵入がもたらす影響を排除するため」に必要なものだと説明した。 スミルノフ氏は先に、国境地帯からは数千人が避難し、複数の都市から医師たちが集められていると述べていた。 ロシアは、数百人のウクライナ部隊が6日朝にクルスク州の町スジャ付近の国境を越えたと発表。これを受け、ウラジーミル・プーチン大統領はウクライナが「大規模な挑発行為」を開始したと非難していた。 ウクライナ軍の攻撃には戦車11台と装甲戦闘車両20代以上が加わっていたと、クレムリン(ロシア大統領府)は付け加えた。 ロシアが2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以来、ウクライナ軍がロシア領内に侵入するのは極めてまれ。
■主要ガス施設を制圧か ウクライナ国会議員のオレクシイ・ホンチャレンコ氏は7日夕、ウクライナ軍がスジャの主要なガス施設を制圧したと発表した。これは、ロシアからウクライナを経由して欧州連合(EU)諸国へ天然ガスを輸送するのに必要な施設で、侵攻が開始してからも運用が続いている。同施設はロシア産ガスをEUへ運ぶ唯一の地点となっている。 ホンチャレンコ氏の発言が事実かどうかBBCは検証できていないが、ロシア領内への侵入をウクライナ政府関係者が初めて認めたことになる。ウクライナ政府はこれまでのところ、越境攻撃に関する報道についてコメントしていない。 アメリカ・ホワイトハウスの報道官は、越境攻撃について事前に承知していなかったとし、「彼ら(ウクライナ側)の目的についてもっと知るために」ウクライナ軍に連絡を取るつもりだと述べた。 ホンチャレンコ氏はロシア領内への侵入の背後にどんな「計画」があるのかは知らないが、今回の攻撃は「ロシアは攻撃される可能性があり、攻撃される必要があるということを(中略)欧州の人々やアメリカ人に」示すことになるだろうと、フェイスブックに投稿した。 そして、「我々の使命はロシアを倒すことだ。ロシア領を打ち砕き、あらゆる場所で敵を破壊する必要がある」と付け加えた。
■現地の状況は ロシアのヴァレリー・ゲラシモフ参謀総長は7日午後に放送されたテレビ演説で、クルスク州への「前進」を停止させ、ロシア軍は「ロシアとウクライナの国境に直に隣接する複数地域で敵を破壊し続けている」と、プーチン大統領に伝えた。 また、最大1000人のウクライナ部隊がスジャ周辺を占領する目的で同地域に入ったとし、ロシア軍がすでに100人を殺害、215人を負傷させたと述べた。 しかし、一般的に良く知られている戦争賛成派のテレグラム・チャンネルの一部は、現地の状況はクレムリンが主張するほど安定していないことを示唆した。 ブロガーのユーリ・コテノク氏はスジャと近くのコレネヴォでの戦闘は「激しいもの」だとしている。軍事チャンネル「Rybar」はスジャ周辺の状況は「悪化し続けている」とし、ウクライナ部隊がスジャに向かって前進していると伝えている。BBCはこれらの主張を検証できていない。
■原発警備を強化、空襲警報が発令 ロシア国家親衛隊はスジャの北東約70キロに位置するクルスク原子力発電所の警備を強化したと発表した。 モスクワでの安全保障会議に先立ち、プーチン氏はウクライナ軍が民間の建物や住宅を「無差別に攻撃」したと非難した。 戦闘は6日中、ロシア領内のさまざまな村で起きたと報じられた。その後、ウクライナ軍の空爆が夜まで続き、市民3人が死亡したと、ロシア当局は発表した。 ロシア政府によると、ウクライナ軍の国境地帯への砲撃で子供6人を含む24人が負傷した。 クルスク州では多数の空襲警報が発令され、地元当局は住民に移動を制限するよう促した。すべての公共行事は中止された。 オンライン上に投稿された動画には、同地域で6日に複数の戦闘機が低空飛行する様子や、地上から煙が上がっている様子が映っていた。 隣接するベルゴロド州では、ヴャチェスラフ・グラドコフ知事が一日中、ミサイル攻撃警報を発令。ウクライナ軍の空爆で数人が負傷したと、同知事は述べた。
■「予防的措置」とウクライナ軍 ウクライナ北東部スーミ州のウォロディミル・アルテュク知事は7日、クルスク州と接する地域からの避難を命じた。 ウクライナ軍のウラディスラフ・セレズニョフ大佐は、推定7万5000人のロシア部隊が国境近くに集結し続けているとし、今回の攻撃は「予防的措置」だったと、著名メディア「NEXTA」に語った。 5月にロシア軍が国境を越えてウクライナ北東部ハルキウ州に大規模な侵入をした後、ロシアがさらに北に位置するスーミ州にも同様の攻撃を試みるのではないかとの懸念が浮上した。 現在ウクライナはいくつかの集落や複数の高速道路を占領しているとみられ、今のところはロシア側の野心をくじいたとも言える状況となっている。 ただ、ウクライナ軍はすでに手薄状態で、こうした越境攻撃を行うという考え方を疑問視する軍事アナリストもいる。 ウクライナ拠点の戦闘員がロシア領内へ侵入したのは今回が初めてではない。昨年にも、反ロシア政府のロシア人準軍事集団が侵入して攻撃を仕掛けたが、その後撃退された。 この集団は今年3月にもベルゴロド州とクルスク州に侵入し、ロシアの治安部隊と交戦した。
(英語記事 State of emergency declared as Ukraine launches raid into Russia)
(c) BBC News