パレスチナからは8人の選手がパリ五輪に出場。戦火によって出場機会を奪われたアスリートも多い Photo: Sina Schuldt / picture alliance / Getty Images

パリ五輪への参加「イスラエルはOK、ロシアはだめ」は正当なのか

 

 

デイリー・テレグラフ(英国)ほか

 

Text by COURRiER Japon

「平和の祭典」であるオリンピックのさなかにも、ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルによるパレスチナに対する軍事行動が続いている。

国際法違反とされる侵攻をおこなうロシアとそれを支援するベラルーシは、今回のパリ五輪への国としての参加を認められていない。他方で、軍事行動や占領政策が国際法違反だと国際司法裁判所に指摘されたイスラエルは、通常通り参加が認められている。

これは二重基準ではないのかという議論は、大会が始まった現在もくすぶり続けている。
 

「選手も戦争に加担」


米誌「ネイション」は、今回のオリンピックにイスラエルが参加できていること自体が「イスラエルにとっての勝利」であり、人権侵害を正当化し、さらには称賛することにつながる「スポーツウォッシング」の典型例だと厳しく批判する。

ジャーナリストのカリム・ジダンによると、パリ五輪に参加している88人のイスラエル選手のうち少なくとも30人が、国際司法裁判所によって国際法違反だとされている今回の軍事行動とイスラエル国防軍を公に支持しているという。そのなかには軍の宣伝やスポークスマンを務めたり、ミサイルにサインを書いたりした選手もいる。

ロシアとベラルーシの選手は、軍の関係者でないこと、軍事侵攻を明確に支持していないことなどの条件のもとに、「中立的な個人資格」としての参加のみが認められている。同じ国際法違反という観点で見ると、イスラエルの選手が無条件で参加できるのは確かに二重基準と言える

 

 

 

 

「政治問題」の線引き


他方で、国際オリンピック委員会(IOC)は、一貫して「イスラエル・パレスチナ間にあるのは政治問題であり、スポーツとは無関係」と主張する。では、排除されたロシアやベラルーシに関しては「政治問題」ではないのだろうか。

米誌「ニューズウィーク」によると、ロシアの出場資格を認めない理由としてIOCは「ロシアオリンピック委員会はウクライナオリンピック委員会の管轄下にあったいくつかの組織を一方的に併合しており、それがオリンピック憲章違反に当たるため」と述べている。イスラエルオリンピック委員会は他国のオリンピック委員会の管轄権を侵害していないため、2つの状況は同じではないというのだ