万博「大阪パビリオン」は鳥の巣で再生表現、透明なETFE膜の屋根に水の流れ

奥山 晃平

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

 

 

 

 

大阪・関西万博で大阪府・市などが出展する「大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn(ネストフォーリボーン)」(以下大阪パビリオン)。地元・大阪が出展するパビリオンで、大阪メトロの夢洲(ゆめしま)駅ができる北東エリアの目立つ位置にできる。鉄道で万博を訪れる人を最初に出迎えるパビリオンの1つで、会場入り口の「顔」になる。そんなパビリオンはどこか涼しげだ。

大阪府・市などが出展する「大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn(ネストフォーリボーン)」。2024年7月初旬時点(写真:日経クロステック)

大阪府・市などが出展する「大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn(ネストフォーリボーン)」。2024年7月初旬時点(写真:日経クロステック)

[画像のクリックで拡大表示]

大阪パビリオンは大屋根(リング)のすぐ外側、北東エリアに立つ。夢洲駅にも近い(写真:日経クロステック)

大阪パビリオンは大屋根(リング)のすぐ外側、北東エリアに立つ。夢洲駅にも近い(写真:日経クロステック)

[画像のクリックで拡大表示]

 敷地面積は約1万500m2で、全パビリオンの中で2番目に大きい。パビリオンは地上2階建てのメイン展示施設「本館棟」(延べ面積が約8000m2)と平屋建ての「ミライのエンターテインメント棟」(同500m2)、2階建ての「バックヤード棟」(同1300m2)の3棟構成になっている。2024年7月初旬時点で、進捗は75%と工事は順調だ。内装や外構の工事も始まっており、同年8月末にも建物が完成する。

パビリオンはかなり大きく目立つ(写真:生田 将人)

パビリオンはかなり大きく目立つ(写真:生田 将人)

[画像のクリックで拡大表示]

 大阪パビリオンは名称にもなっている「鳥の巣(nest)」のような外装デザインが特徴だ。透明な膜屋根の内側に巣が透けて見える。高さは最大20m、全棟が鉄骨造だ。基本・実施設計は東畑建築事務所が担当。実施設計段階から建設会社が技術支援するECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式を採用。施工は竹中工務店が手掛ける。

 内部は楕円の平面が重なるような展示空間になっている。2025年日本国際博覧会大阪パビリオン展示・建築グループの福田篤弘建築整備課長は、「楕円形状から連想されるのは『卵』。鳥の巣の中にある卵に未来の技術が詰まっていることをイメージした」と説明する。

大阪パビリオンの内部動線。左が1階で手前中央から入り、中央のアトリウムに進む。右は2階で、膜屋根が架かる範囲を確認できる(出所:2025年日本国際博覧会大阪パビリオン)

大阪パビリオンの内部動線。左が1階で手前中央から入り、中央のアトリウムに進む。右は2階で、膜屋根が架かる範囲を確認できる(出所:2025年日本国際博覧会大阪パビリオン)

[画像のクリックで拡大表示]

 パビリオンの入り口付近からは、膜屋根の構成がよく見える。「グローブ」と呼ばれる丸いジョイント部で鉄骨をつなぎ、トラス構造を構成している。小さな部材をいくつも重ね、草木を集めてつくる鳥の巣に見立てている。膜素材にはフッ素樹脂をフィルム状にした、透明な「ETFE膜」を用いる。しかも屋根のETFE膜には随時、水を流す。

大阪パビリオンの入り口付近から屋根を見る(写真:日経クロステック)

大阪パビリオンの入り口付近から屋根を見る(写真:日経クロステック)

[画像のクリックで拡大表示]

 竹中工務店大阪本店の三枝大介作業所所長は、「屋根のグローブはほぼ2500個、つなげた鉄骨は約1万本。複雑なパズルのようで施工は難しいが、スケジュール通りに進んでいる」と話す。

屋根は鉄骨トラスとETFE膜で構成。透明な膜を通して、内部が透けて見える(写真:日経クロステック)

屋根は鉄骨トラスとETFE膜で構成。透明な膜を通して、内部が透けて見える(写真:日経クロステック)

[画像のクリックで拡大表示]

 今回の取材では、内観の撮影が許された。屋根の下の本館棟には大空間が広がっていた。来館者はまず本館棟の中心にあるアトリウムに集まり、ここから展示を見て回る。

本館棟1階の「アトリウム」を見上げる。足場が組まれていても大空間であることが分かる(写真:日経クロステック)

本館棟1階の「アトリウム」を見上げる。足場が組まれていても大空間であることが分かる(写真:日経クロステック)

[画像のクリックで拡大表示]

 アトリウムにもETFE膜の屋根が架かっている。足場が組まれた現状でも、自然光が周囲を明るく照らしている。

 足場を上って屋根を間近で見ると、建物の入り口付近に架かっていた屋根とは構成が少し異なることに気付いた。シェードが張られている。

 東畑建築事務所設計室の平野尉仁部長は、「シェードの素材には和紙を使った。シェードの開口率は約35%で直射光を適度に遮れる」と説明する。和紙のシェードは素材が柔らかいので、複雑な屋根形状に対応しやすい。

アトリウムの屋根。内部には和紙でつくったシェードを張る(写真:日経クロステック)

アトリウムの屋根。内部には和紙でつくったシェードを張る(写真:日経クロステック)

[画像のクリックで拡大表示]

和紙のシェードを広げる、東畑建築事務所設計室の平野尉仁部長(写真:日経クロステック)

和紙のシェードを広げる、東畑建築事務所設計室の平野尉仁部長(写真:日経クロステック)

[画像のクリックで拡大表示]

 アトリウムには、DNAの2重らせんをイメージした柱が3本立つ。万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を連想させるシンボルをアトリウムに設置した。東畑建築事務所設計室の武藤優哉技師は、こう語る。

2重らせんをモチーフとした柱。24年7月初旬時点では、柱の周辺に足場が組まれていた(写真:日経クロステック)

2重らせんをモチーフとした柱。24年7月初旬時点では、柱の周辺に足場が組まれていた(写真:日経クロステック)

[画像のクリックで拡大表示]

2階から見たアトリウムのイメージ(出所:2025年日本国際博覧会大阪パビリオン)

2階から見たアトリウムのイメージ(出所:2025年日本国際博覧会大阪パビリオン