もはやここまで…汚職で腐りきったウクライナ政府の実情を全暴露する

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ウクライナに関する報道の歪み

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 ウクライナに関する欧米の報道は歪んでいる。そのため、ウクライナの内情を知る欧米諸国や日本の人々は少ない。4月以降のスキャンダルだらけのウクライナについて紹介してみよう。

 

 

  終身雇用はもはや崩壊、退職金もなくなる…衰退ニッポンがこれから直面する「大変化」  

 

 

 

4月4日、ウクライナのメディア『Slidstvo.info』は、「2023年12月、ウクライナ保安局(SBU)のサイバーセキュリティ部門責任者であるイリヤ・ヴィチュークの妻ユリアが、キーウの高級住宅団地のアパートを購入した件をスクープした(下の写真を参照)。ヴィチュークが税務申告で1280万フリヴニャ(UAH約5100万円)相当のアパートを購入したとのべているにもかかわらず、市場価格はその倍になるというのだ。  記事によると、ユリアが購入したアパートは195平方メートルで、この広さのアパートをリフォームすると、150万ドル近くになるという。不動産サイトでは、この住宅団地のリフォームなしのアパートは1平方メートルあたり約3000ドルする。これは首都の平均価格のほぼ3倍だ。そうなると、ユリアの支払額は58万5000ドル(購入時の為替レートで2150万UAH)となる。つまり、申告書に示された価格は市場価格のほぼ半額であったことになり、不実記載にあたる。  妻ユリアは個人事業主であり、2022年には940万UAH(約3800万円)、2023年には1340万UAH(約5300万円)の利益を得た。しかし、時価2000万UHA(約8000万円)を超す不動産をどうやって購入できたかは不明だ。もちろん、夫イリヤは年俸180万UHA(約720万円)の公職に就いているにすぎず、多額の資金援助は難しい。  このため、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は5月1日付の大統領令で、イリヤ・ヴィチュークを「国益保護防諜部長」の職から解任した。

議会による副首相の解任

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 5月9日、ウクライナ復興担当副首相兼地域・インフラ開発大臣オレクサンドル・クブラコフが、議会によって解任された。彼は、2022年12月1日から統合された機関のトップに就任していたが、5月8日、同省を再び2分割する提案がなされ、これに伴ってクブラコフを解任する決議案を作成されたのだ。そして、9日にこの決議が賛成多数で成立した。  彼は2023年夏前まで、ゼレンスキー大統領のお気に入りの一人と呼ばれていた。しかし、国防省の一連の汚職スキャンダルで解任されたオレクシー・レズニコフの後任として、クブラコフが国防相に就任する予定だったが、ゼレンスキーとクブラコフがこの移行の詳細について話し合っているうちに、クブラコフの野心に気づき、彼は大統領の支持を失ったという(ウクライナ情報による)。それが、5月の電光石火の解任劇につながったのだ。  ゼレンスキーは寵愛していたクブラコフを自ら解任したのではなく、議会に罷免させるという不可思議な手段をとった。もちろん、クブラコフは、新しい省の大臣に任命されていない。  この解任劇の余波として、6月10日、ムスタファ・ナイェム復興庁長官が辞任した。彼は、もともとクブラコフの副官を務めており、クブラコフの提案で、欧米からの資金によるウクライナの復興事業を監督する政府機関である復興庁長官に就任していたのである。  このため、NYT(ニューヨークタイムズ)も、この辞任に注目する記事を報じている。ナイェムが率いていた復興機関は、ウクライナの通貨である1000億フリヴニャ(約25億ドル)の昨年の予算を監督していた。そのプロジェクトは多岐にわたり、発電所の脆弱な電気設備を保護するための物理的バリアを建設する取り組みに資金を提供したり、水道管、橋、道路の補修も行ったりする資金を監督していたのだ。  実は、ナイェムの辞任は、ベルリンで開催された復興に関する主要ドナー会議の前日という、気まずいタイミングでなされた。ウクライナ当局は彼を代表団から排除し、彼が予定していたウクライナ復興への寄付に関する外国政府高官との会合を台無しにしたのである(デニス・シュミハリ首相がナイェムの会議出席を許可しないとする書簡が暴露されている)。  おそらくナイェム自身は、腐敗に手を染めていない。クブラコフやナイェムは、欧米諸国と直接接触する機会をもち、彼らからの信頼を得ていたとされる。クブラコフはブリジット・ブリンク駐ウクライナ米国大使をはじめ、米国財界や大使館の代表とかなり親密な関係を築いてきた。しかも、クブラコフも、2023年1月に任命されたナイェムも、2023年のおとり捜査で、汚職防止当局が接待の疑いを摘発するのを助けていた。同年秋、ナイェムは2人の国会議員が賄賂を支払おうとしたとの告発で反汚職当局に通報し、事件は現在裁判中だ。  だが、こうした二人のやり方に対する反発が、ウクライナの指導者の一部にあるのは間違いない。大統領府のトップ、アンドリー・イェルマクとゼレンスキーは彼らを快く思っていなかった。それが、ゼレンスキー政権内部の相次ぐ不祥事につながっている

 

 

 

 

大統領府の前副長官の起訴

ヴェルビツキーが住んでいた家は、キーウのエリート・コニク・コテージ・コミュニティにある2階建てのタウンハウスだった

 

 

 

 5月7日には、ドミトロ・ヴェルビツキー副検事総長をめぐるスキャンダルも報じられた。ヴェルビツキーが、甥によって市場価格をはるかに下回る価格で購入された借家に住んでいることを突き止めたというのである。  アンドレイ・コスティン検事総長は6月20日、同長官とウクライナ国家腐敗防止局(NABU)が、ヴェルビツキーの資産に関する公式調査を開始したと発表した。コスティン検事総長によると、ヴェルビツキーとそのガールフレンドが、キーウの裕福な地域に高級車と高価な家を所有しており、公務員として予想される給与を上回っているようだというRFE/RLの複数の記事(下の写真)を受けて、同事務所はヴェルビツキーに対する内部調査を開始したという。  5月22日、ウクライナ国家腐敗防止局(NABU)は、大統領府の前副長官アンドリー・スミルノフが不正蓄財の容疑で起訴されたと発表した。彼は、2019年9月から今年3月まで副長官ポストにあったが、3月、ゼレンスキー大統領によって理由を明かさずに解任されていた。NABUによると、同容疑者は2020年から2022年の間に42万6000ドル以上の資産を取得したが、その間の給与と貯蓄の公式報告は3万2500ドルにすぎなかった。スミルノフは高級車2台、オートバイ2台、駐車スペース数台、リヴィウのアパート、ザカルパチア州の土地を購入したと報じられている。資産の所有権をわからなくするために、彼は財産資産の大部分を弟に譲渡したが、密かにアクセス権を保持していたとされる。

深刻なスキャンダル

 最新のスキャンダルは、もっと深刻だ。NABUの職員が有名な汚職捜査の容疑者に情報をリークしただでなく、この情報漏洩疑惑に関するスキャンダルについて、NABUのセメン・クリヴォノス長官がウクライナ議会の反汚職委員会での報告を拒否したことから、事態が複雑化しているのである。  この問題を理解するには、いまのクリヴォノス長官が大統領側トップの汚職疑惑を調査する能力と意欲に欠けるとの疑いが強まっていることを知らなければならない。クリヴォノス長官は、2023年3月、7年間の任期が満了したアルテム・シトニク初代長官の後任となった。クリヴォノスの下で、NABUはゼレンスキー大統領の政党の議員や、元最高裁判所長官のヴセヴォロド・クニャゼフ、オリガルヒ(政治家と結託した寡頭資本家)のイホル・コロモイスキーといったウクライナで最も影響力のある人物を逮捕・起訴した。さらに、ゼレンスキーの与党「人民の奉仕者」の複数の国会議員を汚職事件で告発した。  しかし、国防省の調達取引で汚職があったとされるオレクシー・レズニコフ国防相は2023年9月に辞任したが、今のところ告発はされていない。  こうしたなかで、NABU職員による不祥事が6月6日に暴露されたのだ。それにもかかわらず、クリヴォノスの対応が不誠実なために、NABUに対する批判が高まっているのである

 

 

 

 

クリヴォノス長官への嫌疑

左がクリヴォノスNABU長官、右がナフトガスCEO (出所)https://www.pravda.com.ua/news/2024/06/20/7461727/

 リーク疑惑について説明する前に、6月20日付の「ウクラインスカヤ・プラウダ」の「NABUのクリヴォノス長官の要請により、刑事はチェルニショフの家宅捜索を行わなかった」というスクープについても紹介しておこう(下の写真を参照)。  家宅捜索の対象となった事件は、オレクシー・チェルニショフ(国営のウクライナ・ナフトガスCEOで、前職は 2020-2022年ウクライナ地域開発大臣、2019-2020年キーウ地方行政長官)とその関係者が、KSMグループのオーナーである開発業者セルヒイ・コピシュティラから不当な利益を受け取ったという疑惑に関するものだった。しかし、クリヴォノス長官とチェルニショフは2023年4月に会い、事件のもみ消しを謀議したと考えられている。さらに、チェルヌニショフは最近、閣僚に復帰する予定だったが、NABUが大統領府に、刑事から質問される可能性があるという別の情報をリークした。そのため、この問題は保留となったという。  はっきりいえば、ウクライナ政府は内部から「腐っている」のである。腐敗を取り締まるはずのNABUの長官から「腐っている」のだから。

不祥事の発端                                    

 一方、リーク疑惑は、注目の汚職事件で捜査を受けていた実業家ユーリー・ホリックの携帯電話を捜査当局が押収したことで発覚した。その携帯電話には、2021年から2023年にかけてNABUの職員と話をしたとされる仲介者から、ホリックが入手したメッセージのコピーが入っていたのである。  情報遺漏の中心人物として疑われているのは、NABUの第一副長官ギゾ・ウグラヴァで、情報漏洩事件ですでに調査を受けており、本人の申し出により停職処分中だ。ただ、クリヴォノス長官は、情報漏洩スキャンダルに迅速かつ適切に対応せず、ウグラヴァを解雇しなかったとして非難されている。  5月にNABU の刑事が調査活動を行った際、NAPOの法律の遵守を監督する反汚職特別検察庁(SAPO)は、職権乱用とNABUによる捜査情報漏洩の疑いで捜査を開始した。法執行当局筋と、反汚職調査を専門とするウクライナのジャーナリズム・プロジェクト、『Bihus.info』が公表したリーク文書によると、情報は2020年から実施されている政府の「ビッグ・コンストラクション」(100億ドルを費やして1万4000キロメートルの道路、500の橋、橋の交差点が建設・改修された)プロジェクトの一環としての汚職スキーム疑惑に関する事件で漏洩した。NABUは、「ビッグ・コンストラクション」で巨利を得た実業家ホリックの利益のために情報をリークしたとされている。  2023年8月、『Bihus.info』の調査ジャーナリストがホリックを尾行したところ、ホリックは毎日大統領府を訪れており、ジャーナリストたちはホリックが非公式に大統領府で働いているのではないかと疑っている。ホリックの他に、ゼレンスキーの元大統領府副長官キリロ・ティモシェンコと、元ドニプロペトロウシク州知事ヴァレンティン・レズニチェンコも「ビッグ・コンストラクション」汚職事件で捜査されている。レズニチェンコと、かつてレズニチェンコの側近だったホリックは、彼らとつながりのある会社に高値で建設契約を発注した件で捜査されている。なお、ホリックは今月、18歳から60歳までの男性の出国禁止を回避するため、当局の許可証を利用してウクライナを出国したと報じられている

 

 

 

 

情報流出事件

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 この流出事件は、SAPOとNABUが「ビッグ・コンストラクション」捜査の一環としてホリックの携帯電話を押収した1年後に発覚した。「キーウ・インディペンデント」の報道によると、NABUとホリックとの仲介者とされる大統領府顧問ゲオルギー・ビルカゼは、SNSの「テレグラム」でNABUの職員と話し、メッセージを撮影し、その写真をホリックに送った。メッセージは後に削除されたが、写真はホリックの携帯電話に保存されていた。  ビルカゼはNABUから、オフマディット・クリニックとヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の政党「国民の奉仕者」の元議員オレクサンドル・トゥルヒンに対する汚職調査に関する情報を入手した。ビルカゼはまた、ホリック事件における法医学鑑定、盗聴、捜索令状に関する情報も入手していた。2023年1月、ビルカゼはホリックに対し、NABUの対話者が、ホリック事件は「危険だからできるだけ早く解決すべきだ」と言ったという。

NABUの情報遺漏者はウグラヴァか

 携帯電話のメッセージ情報によると、ビルカゼの重要な対話相手の一人の名前はない。名前の代わりに日本の国旗が使われているが、これはNABU職員のニックネームである「日本人」への明らかな言及であるという。  「キーウ・インディペンデント」は、これは前述したウグラヴァか、ウグラヴァから情報を得た人物がそれを伝えている可能性があると書いている。ウグラヴァは元検事で、2000年代にグルジアでミヘイル・サアカシュヴィリ元大統領の改革派チームのメンバーだった。彼は2015年からNABUの第一副長官を務めており、実質的にはNABUの副官である。彼は2022年から2023年までNABUの長官代理を務めた。  日本の国旗を目印にした対話者(つまり、おそらくウグラヴァ)は、2022年10月、ビルカゼに、すでに紹介したクブラコフ元副首相(当時)がビルカゼに会いたがっていると告げた。「クブラコフは、我々が彼を捜査していることを知っており、だから私に会いたがっているのだ」とその対話者は語ったという

 

 

 

 

 

ウグラヴァを解任しないクリヴォノスNABU長官

 反汚職行動センターのヴィタリー・シャブニン執行委員長は、クリボノスNABU長官がウグラヴァ第一副長官を解雇しなかったことを批判している。すると、ウクライナの国家捜査局は、シャブニンを刑事告発する準備を進めていると、『キーウ・インディペンデント』紙に語った。  シャブニンは、ウクライナでもっとも影響力のある反腐敗運動家の一人で、この事件はオレフ・タタロフ大統領府副長官を含む大統領府による自分への政治的復讐だと考えている。

大統領府が伏魔殿

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 ここまでの記述からわかるように、大統領府は伏魔殿と化している。スミルノフ副長官とティモシェンコ副長官はいずれも汚職の嫌疑がかかって大統領府を去った。しかし、大統領府にはまだまだ、犯罪が疑われる複数の副長官がいる。  たとえば、タタロフ副長官は2020年、NABUにより、元議員マクシム・マイキタスの代理として法医学専門家に25万フリヴニャ(1万ドル)の賄賂を渡した罪で起訴されたことがある。この事件は、ゼレンスキーの子分であるイリーナ・ヴェネディクトワ元検事総長、ウクライナ保安局(SBU)、ウクライナの腐敗した司法当局によって妨害され、事実上破棄された。  2020年、オレクシー・シモネンコ副検事総長(当時)は裁判所の判決を口実に、タタロフ事件を独立したNABUから大統領管理のウクライナ保安庁(SBU)に移管した。NABUは、タタロフ事件は完全に同局の管轄内であるため、移送は違法であると考えている。その後、シモネンコはタタロフ事件を担当する検事団を交代させ、事件を妨害しようとした。2021年、裁判所はタタロフ事件の捜査延長を拒否した。シモネンコの部下である検事たちは、裁判にかける期限に間に合わなかったことで、この事件を事実上葬り去ったのである。

こんなウクライナにカネを出す愚行

 ここで紹介したように、「腐りきっている」ウクライナ政府を支援する欧米諸国や日本の政府は何を考えているのだろうか。  アメリカのアンソニー・ブリンケン国務長官は5月にキーウを訪問した際、ゼレンスキー大統領に対して、「しかし、まだやるべきことは残っている」として、反腐敗政策の強化を促した。他方で、欧州委員会のウルスラ・フォンデアライエン委員長は6月、ウクライナ企業への融資を希望する銀行に対する保証とともに、欧州の銀行から14億ユーロの新規投資を行うことを発表した。さらに、ゼレンスキー大統領は同月、「X」において、「日本はウクライナに45億ドルを提供し、協定の10年間の全期間を通じて支援を続ける」と岸田文雄首相が約束したことを紹介している。  EUも日本も、能天気な指導者にめぐまれているらしい。残念だ。国民の税金を腐敗しきった伏魔殿に投じるのだから。

塩原 俊彦(元高知大学大学院准教授

 

 

 

もはやここまで…汚職で腐りきったウクライナ政府の実情を全暴露する(現代ビジネス)