浮体式洋上風力の2海域選定、鹿島と東亜建設工業が参加し半潜水型を実証

佐藤 斗夢

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

 

 

経済産業省は、風車を海に浮かべる「浮体式」の洋上風力発電施設の普及に向け、2024年6月11日に現場実証の2海域と事業者を選定した。喫水が浅い半潜水型の「セミサブ型」で低コスト化を進める。事業者の2つの企業連合には、総合建設会社では鹿島と東亜建設工業がそれぞれ入り、これまでの検証成果や工事経験を生かす考えだ。

稼働中の洋上風力発電施設。写真は着床式の秋田洋上風力発電(写真:日経クロステック)

稼働中の洋上風力発電施設。写真は着床式の秋田洋上風力発電(写真:日経クロステック)

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 経産省は各実証費用の一部を補助する方針で、同省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」から最大850億円を拠出。事業全体にかかるコストを減らし、浮体式基礎の大量製造・施工を実現することが、実証の目標だ。

 

 今回の現場実証は、「フェーズ2」と位置付けている。21年度からの「フェーズ1」では試験実証として、浮体式基礎の製造・設置コスト低減や運転保守の高度化などの各研究に取り組んだ。

 フェーズ2では、その各要素技術の統合を目指す。実証期間は、24~30年度。初めて、事業者が事前調査や基本設計、施工、試運転、発電、運転保守まで一貫して手掛ける。漁業調整も担う。

 NEDOの第三者委員会が実施計画を審査し、秋田県南部沖と、愛知県田原市・豊橋市沖の2海域を実証エリアに選んだ。前者は丸紅洋上風力開発やジャパンマリンユナイテッド(JMU)、東亜建設工業などで構成する連合、後者は中部電力系のシーテック(名古屋市)、日立造船、鹿島などで構成する連合が事業者を務める。

 2つの海域では、セミサブ型の浮体式基礎を採用している。半分海に沈んでいる状態を維持する型式だ。暴風時でも揺れが少なく安定性に優れている。加えて、喫水が浅いので、港内など水深の浅い箇所でも、風車を組み立ててから設置海域まで運搬できるメリットがある。

2海域で建造するセミサブ型のイメージ(出所:新エネルギー・産業技術総合開発機構)

2海域で建造するセミサブ型のイメージ(出所:新エネルギー・産業技術総合開発機構)

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 NEDOによると、審査時に提出を受けた実施計画では、複数の浮体方式が盛り込まれていた。その中でもセミサブ型を選出したのは、日本を含むアジアの気象・海象条件への対応に加え、性能や施工性、コスト性などが優れているからだという。こうした特性はフェーズ1での各種試験などで検証しており、フェーズ2では実海域での発電に移行する

 

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