ホンダが“ドル箱”HEVで4WDシステムを方針転換へ、トヨタ・日産と同じ方式に
伏木 幹太郎
日経クロステック/日経Automotive
ホンダが“ドル箱”HEVで4WDシステムを方針転換へ、トヨタ・日産と同じ方式に | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
2040年までに新車販売の全てを電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)に絞る「脱エンジン戦略」を掲げるホンダだが、当面はハイブリッド車(HEV)を進化させていく方針だ。同社社長の三部敏宏氏は、2024年5月に開いた社長会見「2024ビジネスアップデート」で、ハイブリッドシステム「e:HEV」とHEV用プラットフォームを改良することを明らかにした。2026年以降に市場投入する。
ホンダ社長の三部敏宏氏
2024ビジネスアップデートでHEVの重要性について言及した。(写真:ホンダ)
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HEVを刷新
2026年以降のモデルから採用する。(出所:ホンダ)
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HEVは、ホンダにとってまさに“ドル箱”である。世界的なHEVの需要好調を追い風に、同社は2023年度、世界でHEVを約80万台販売した。2024年度は100万台の販売を見込む。2024ビジネスアップデートで三部氏は「現在、北米を中心にHEV事業は好調だ。このままいくと(HEVの販売台数は)180万台まで伸びる可能性がある。ピークは2029年から2030年だろう」と予測した。
これまでホンダは、最大3種類あったハイブリッドシステムをe:HEVのみに絞ることで、コストを効率化してきた。
e:HEVに統一したことで「コンセプトや制御の考え方など基本的な構成を同じにできた。エンジンやモーター、電池などの制御が共通だと、基本的に相似形でハードウエアを設計できる。その分、開発効率が良くなる」とホンダの技術者は説明する。実際に中型セダン「アコード」の2023年型は、2018年の従来型に対して、出力密度を向上しつつハイブリッドシステムのコストを25%削減した。
三部氏は「e:HEVはICE(内燃機関)車よりも(販売価格を)高く取れる。そのためICE車よりも十分収益が得られる」とした。その上で、「2020年代後半にもう一段階e:HEVを進化させる。コストをさらに下げ、小型化を図る」と語った。e:HEVで稼いだ収益は、EVやソフトウエアの開発に充てる考えだ。
e:HEVの進化の1つとして三部氏が明かしたのが、
電気式四輪駆動(4WD)システムの採用である。
トヨタ自動車や日産自動車は既に、HEVに電気式4WDを組み合わせた車両を販売している。
電気式AWDシステムの特徴は、独立したリアモーターを配置することである。
電気式4WDは、
独立したリアモーターを積むことで「機械式(4WD)と比べて
最大駆動力の向上や
高応答・高精度化など、
駆動力の配分制御が可能となる」
(三部氏)利点がある。
機械式から電気式4WDへ
利点は少なくない。(出所:ホンダ)
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例えば日産自動車の「エクストレイル」の4WD車は、前後2基のモーターとブレーキを統合制御することで、走行安定性を向上させた。具体的には、フロントモーターと共に後輪でも回生できるため、減速時の車両の揺れを低減した。リアモーターがあることで、後輪駆動時の応答性が上がり、瞬間的な前後のトルク配分にも対応しやすい。
これまでホンダの「ZR-V」や「ヴェゼル」などe:HEVの4WD車は、車両前部のパワートレーンからの駆動力を、プロペラシャフトを通じて後輪に伝える機械式4WDシステムを採用する。機械式4WDは、全車速域で安定して後輪に駆動力を伝えられるのが特徴だ。同社の開発者は「リアモーターを採用する電気式4WDよりも、機械式の4WDは登坂性能で有利だ。雨の日に高速走行しても走りの安定感が高い」と説明した。
ZR-V(手前)とヴェゼル(奥)
どちらもe:HEVに機械式4WDを設定する。(写真:日経Automotive)
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機械式4WDを採用した理由について、
同社の開発者は「ICE車と共通の技術が多く、コストもかからないため」と以前の取材で語っていた。
それでは電気式4WDに転換する狙いはどこにあるのか
ホンダが“ドル箱”HEVで4WDシステムを方針転換へ、トヨタ・日産と同じ方式に | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
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