〈新宿・立ちんぼ大移動〉手招きして「遊ぼう~」“現行犯でなくとも逮捕”に踏み切った警察に対して、立ちんぼはナワバリを広げて…女性から声をかける“キャッチ”パターンも

4月24日、警視庁保安課と新宿署は新宿・大久保公園で住所不定・無職の女(28)を売春防止法違反の疑いで逮捕したと発表した。これまでは男性とホテルに入ったところを”現行犯”逮捕してきたが、今回は初めて、過去に売春の客待ちをしたことについて逮捕状をとり“通常”逮捕に踏み切ったという。この事実は、立ちんぼへの新たな抑止力となっているのか。現場へ訪れてみた。

 

 

集英社オンライン編集部ニュース班

 

 

〈新宿・立ちんぼ大移動〉手招きして「遊ぼう~」“現行犯でなくとも逮捕”に踏み切った警察に対して、立ちんぼはナワバリを広げて…女性から声をかける“キャッチ”パターンも | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け (shueisha.online)

 

 

現行犯ではなく、立ちんぼを初めて“通常”逮捕。その影響は?

この28歳の女への逮捕容疑は4月11日午後6時30分ごろ、新宿・大久保公園のガードレールに腰かけ、売春目的の客待ちをしたこととしている。

社会部記者はこう解説する。

新宿区立大久保公園(撮影/集英社オンライン)
新宿区立大久保公園(撮影/集英社オンライン)

 

「新宿署の捜査員は、女が昨年から計5回以上にわたって客待ちを繰り返し、男性と交渉したり、ホテル街へ向かっていくところを確認している。

そうした客待ち行為は本来であれば、男性とホテルに入ったところを”現行犯“逮捕してきたが、なかには摘発を免れるために友人との待ち合わせを装うなどのケースも少なくなかった。

そこで今回初めて、過去の客待ち行為をもとに逮捕状を取り、23日夕方に大久保公園にて客待ちしている女の身柄を押さえて”通常“逮捕に踏み切った」

集英社オンラインでは、4月6日配信の記事において、警察の取り締まり強化後、“聖地”である大久保公園に立ちんぼたちが戻ってきている様子についてリポートした。

そしてその直後、警視庁は今回初めて立ちんぼに対して、過去の客待ち行為についての逮捕状を取った”通常”逮捕に踏み切った。

同庁の保安課長も「過去の売春事実でも逮捕されることがあると知ってもらえれば」と新たな抑止効果に期待している。

だが、「今回の“通常”逮捕を受けても、立ちんぼたちはまったく懲りていない」と語るのは、東京在住の実話誌ライターの男性だ。

以前と比べて閑散とした大久保公園周辺(撮影/集英社オンライン)
以前と比べて閑散とした大久保公園周辺(撮影/集英社オンライン)

「昨年、取り締まりが厳しくなってからは、彼女たちも二人一組で行動したり、私服警官に警戒したりと対策していた。

そして、今回の一件で立ちんぼたちは逮捕から逃れるため、大久保公園周辺のガードレールではなく、付近の建物の前に立つなどして客待ちの範囲を広げるなど、“新たな一手”に出ている。

一見すると、立ちんぼは減ったように見えますが、全体の人数にほとんど変化はありません」 

 

 

 

 

客待ちエリアを拡大する立ちんぼ

はたして実際はどうなのか。5月16日夜8時ごろ、新宿・大久保公園を訪れてみると、そこに以前のような盛り上がりはなかった。

4月初旬ごろまでは15~20人ほどの女性がズラリと立ち並んでいた公園近くの路地も、この日は4、5人といったところ。

しかし、大久保公園周辺から一本入ってラブホテル街へと向かう道には、7、8人の女性が立ち並んでいる。見たところ10代後半~20代前半がメインで、ヒザ上のワンピースに厚底ブーツを身に付けた、いわゆる”地雷系“ファッションの女性も多い。

その中の一人は、親子ほどの年の差がありそうな中年のサラリーマンらしき男性から声をかけられ、交渉がまとまったのか、ラブホテル街へ向かって歩いていった。

立ちんぼに声をかける中年男性(撮影/集英社オンライン)
立ちんぼに声をかける中年男性(撮影/集英社オンライン)

この状況について、立ちんぼ歴5年のサキさん(仮名・20代)はこう語る。

「今、一番人気なのは大久保公園からラブホテル街へ向かう途中にある飲食店や薬局の前あたりかな。大久保公園沿いには2、3人しかいないのに、こっちのほうには10人以上いる日も珍しくありません」

大久保公園からおよそ100メートルほど離れたバッティングセンターや、西武新宿駅に向かうガードレール沿いで客待ちする立ちんぼもいるというが、そこまで範囲を広げる理由についてこう話す。

「これまで大久保公園のガードレールで立ってたときは、警察が『ここで立ち止まらないで』と拡声器で警告してきたり、『今日はなんでここに来たの?』とあれこれ聞かれたりと、マジでダルかった。それに逮捕された女の子も大久保公園で客待ちしていたところを捕まえられたし。

だから、公園からある程度離れてしまえば、警察もまだマークしてないのか、絡まれることはない。実際にまだ公園以外でパクられた子がいると聞いたことがないので、わりと安心して立ってます」(同)

歌舞伎町のラブホテル街へと続く道に立ちんぼが増加中(撮影/集英社オンライン)
歌舞伎町のラブホテル街へと続く道に立ちんぼが増加中(撮影/集英社オンライン)

時刻は夜9時すぎ。大久保公園周辺のガードレール沿いに立つ女性は相変わらず少ないが、例のラブホテル街へと向かう道には10人ほどの立ちんぼが佇む。

そして、それを見定めるように歩く中年男性や、「お前あの子いけよ」などと話しながら物色する若い男性グループが群がるなど、異様なにぎわいを見せていた

 

 

 

 

積極的に客へアピールする立ちんぼも

そして記者は、ここでひとつの変化が起きていることに気づく。

以前までの立ちんぼは声をかけられるまでジッと待っているだけだった。しかし、この日は近くを通る男性に手を振ったり、ニコッとほほ笑みかけるなどして、女性側からアプローチを試みる立ちんぼが何人かいたのだ。

これはいったいどういうことなのか。前述のサキさんはこう解説する。

「大久保公園に立っていたころは勝手にあっちから『いくらで遊べる?』とか聞かれるから待っているだけでよかった。

でもラブホ街側の路地に移ってからは、男性側も『ここは大久保公園じゃないし、この子は本当に立ちんぼなの?』と迷ってしまうようで、買う男性から声をかけられる回数が減ったんです。

だから『私たちは立ちんぼですよ』って自分からアピールする意味も込めて、男性に愛想を振りまくようにしてるんです。それで興味を持ってくれたら『遊ぼ~』と声をかけます。

でも、私服警官がいるかもしれないので、私が狙うのは“沼っぽい”人たち(外国人や路上喫煙者、年寄りなど警察ではなさそうな人)だけかな」

(撮影/集英社オンライン)
(撮影/集英社オンライン)

 

しかし、範囲を広げたものの現在の平均収入は、1日2~4万円ほどだとか。周りの立ちんぼ女性たちも以前と比べて収入が半分近くまで落ち込んでいることから、新たな方法を模索しているという。

「少しでも稼ぐためにガラッと場所を変える子も増えましたね。とくにゴジラが目印の新宿東宝ビルの前は、マッチングアプリの待ち合わせ場所として有名なので、そこでパパ活の約束をしたおっさんに『初めまして~』と、さもアポった本人を装って客を横取りしている子もいます。

私は大久保駅のラブホ街まで行って客待ちをすることもあります。でも、あそこはアジア系の立ちんぼの縄張りで、『ワタシタチノ客トラナイデ!』と片言の日本語で怒られるんですが、無視してます(笑)」

警察と立ちんぼのイタチごっこは、まだまだ終わる気配はなさそうだ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班