契約違反


米国を結びつけてきた社会契約が破綻している。

 

それは

 

一生懸命働き、ルールを守れば、両親よりも豊かに暮らせる」という契約だ。

 

だが米国史上初めて、これが真実ではなくなっている。

現在、25歳の若者は

 

親や祖父母が同じ年齢だった頃よりも

 

収入が少ないが、

 

想像を絶する額の学生ローンを抱えている。

 

最低賃金も

 

中間賃金も、

 

インフレや

 

生産性の向上に追いつかず、

 

住宅価格はさらに高騰している。

 

子供や若年成人の幸福度に関する統計は見るに耐えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高等教育は世代間格差を埋める最も効果的な手段だ。

 

だが、

現状の支配層は

 

大学へのアクセスを人為的に制限し、

 

入学機会を富裕層世帯にほぼ独占させている。

 

そして下位90%の層から際立って優秀な少数の若者を選抜することで、

高等教育が「カースト制度」であることを隠蔽しているようにも見える。

 

 

 

 

ハーバードの学部生の定員はここ半世紀近く1600人で横ばい※1だが、寄付寄金はインフレ調整後、なんと500%も増えている。資産基盤が6倍になったのに、生産量を意図的に増やさないのは、もはや公益に貢献する機関ではなく、シャネルのバッグと同じである。一桁の入学率は、学長や寄付者がカクテルパーティーで自慢するような、究極の虚栄心の指標でしかなく、恥ずべきものだ。

前にも提案したこと※2だが、高等教育機関には「大きな取引」を持ちかけるべきだろう。つまり、大学に通った米国人の3分の1の救済措置に充てられる予算を、新入生の受け入れ枠の拡大と学費の削減に振り向けるのだ。バイデン政権が提案している学生ローン救済措置は腫瘍を縮小させるだろうが、根本的な問題である「高い学費と低い入学率」には対処していない。
 

資本 vs 汗

 
 
 
労働による実質所得の中央値が1974年以来40%上昇しているのに対し、S&P500種株価指数は4000%上昇しているのだ。

米国では、
 
投資による利益を優遇する税制によって、
 
労働で得られる所得が犠牲にされ、
 
所有によって生み出される富が保護されている。
 
株式の売却益は、
低いキャピタルゲイン税率で課税される。
 
不動産の保有は非課税で評価され、
売却すれば利益を別の投資に回すことができる
 
 
 
 
 
 
 

議員は我々の代表?


さらに徴収された税金は、それを最も必要としない世代にますます再分配されつつある。

1985年当時、
連邦政府は1人当たりに対して、
子供よりも高齢者に3倍多く支出していた。
 
それが2019年には8倍に上昇した。
 
 
高齢者の貧困は
1970年代の17%から現在は9%まで削減されており、
 
これは称賛すべきことだ。
 
 
 
だが、
子供の貧困は
同期間に16%から19%へと上昇しているのだ
 
 
 
 
 
 
 
民主主義の「民主」部分が機能不全に陥っている。高齢者が高齢者を選挙で当選させ、当選した高齢議員が高齢者に有利な政策を通しているからだ。年齢制限も任期制限もなく、現職議員の再選率は90%を超えているため、連邦議会の議席は終身雇用になっている
 
 
 
 
 
 
 
 
 

責任の所在


米国は
 
60歳以上の人にとっては世界で10番目に幸福な国だが、
 
 
30歳未満の人にとっては62番目にすぎない
 
 
 
 
1993年には、
30〜34歳の60%が少なくとも1人の子供を産んでいたが、
 
 
現在は
27%に低下している。
 
 
若者は出会いがなく、
 
カップルにもなりにくく、
 
それは深刻な結果を招くはずだ。
 
 


若者の労働力が経済に活気を与え※8
 
 
若者の税金が
高齢者の利用するサービスの資金源となっている。
 
 
若者の雇用環境が悪化すれば、
社会保障制度は破綻し、
財政は債務返済に費やされ、
国家は崩壊するだろう。
 
 
 
私たちが作り出した未来は
 
あまりにも魅力に欠けるため、
 
若者は身を引こうとしているのだ。
 
 
 
 
 
 
私たちは我が子を大切に思っているが、本当に愛しているといえるだろうか?
 
 
 

PROFILE

スコット・ギャロウェイ ニューヨーク大学スターン経営大学院教授。MBAコースでブランド戦略とデジタルマーケティングを教える。連続起業家としてL2、Red Envelope、Prophetなどを立ちあげている。 Translation by Naoko Nishikawa