ノートルダム再建、よみがえるパリの象徴
デジタル技術を使って5年でスピード修復
星野 拓美
日経クロステック/日経アーキテクチュア
ノートルダム再建、よみがえるパリの象徴
デジタル技術を使って5年でスピード修復
星野 拓美日経クロステック/日経アーキテクチュア
- フランス・パリのノートルダム大聖堂が2019年の火災被害からよみがえりつつある。デジタル技術を駆使した修復工事が猛スピードで進行中だ。一般公開を再開する24年12月8日に向けて、工事は最終段階に入っている。
ゴシック建築の傑作として知られ、その荘厳な姿で世界中の人々を魅了してきたパリ・ノートルダム大聖堂。炎に包まれた尖塔(せんとう)が倒壊したあの大規模火災の悲劇から、2024年4月15日で丸5年がたった。
あれから大聖堂はどうなったのか。23年12月末、記者は現地を訪れた。セーヌ川沿いから外観を見ると、新しい小屋組みと鉄骨の足場に囲まれた尖塔の姿が確認できた。大聖堂は元の姿を取り戻しつつある〔写真1〕。
〔写真1〕ゴシック建築を代表する大聖堂
パリ・ノートルダム大聖堂はゴシック建築の傑作として知られる。1163年に建設が始まり、13世紀に工事が完了したとされている。その後も長い歴史の中で改築を繰り返してきた。2019年4月15日に発生した大規模火災で屋根や尖塔が焼失。再建が進んでいる。写真は23年12月末の様子。鉄骨の足場に囲まれた尖塔が見えた。元の姿を取り戻しつつある(写真:日経アーキテクチュア)
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再建のために集まった寄付金は総額8億4600万ユーロ(約1390億円)を超える。24年12月に予定する一般公開の再開に向けて、修復工事は大詰めを迎えている〔写真2、3、図1〕。
〔写真2〕尖塔に黄金の風見鶏を設置
23年12月16日、尖塔の頂点に新しい風見鶏の彫刻が設置された。彫刻のデザインは、大聖堂の修復工事を担当する歴史的記念物主任建築家フィリップ・ビルヌーブ氏によるものだ(写真:Romaric Toussaint - Rebâtir Notre-Dame de Paris)
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〔写真3〕尖塔がパリの空に再び
24年に入り、大聖堂を取り囲む鉄骨の足場が徐々に取り外され、尖塔がパリの空に再び現れた(写真:David Bordes - Rebâtir Notre-Dame de Paris)
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大聖堂の西正面。建物内に入ることはできないが、その姿を一目見ようと今も多くの観光客が訪れている(写真:日経アーキテクチュア)
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〔図1〕セーヌ川のほとりにそびえ立つ
パリ中心部、セーヌ川の中州であるシテ島に大聖堂は立つ。西正面には2つの塔があり、鐘が収められている。焼失前の尖塔は19世紀半ばにビオレ・ル・デュクが設計したもので、地上からの高さは96m。写真は大聖堂の南西側。屋根や尖塔が足場に囲まれている(出所:取材を基に日経アーキテクチュアが作成、写真:日経アーキテクチュア)
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19年の火災では、木造の小屋組みと地上から96mの高さを誇る尖塔が焼け落ち、石造のアーチ天井の一部も崩落するなど壊滅的な被害を受けた。火災翌日、フランスのマクロン大統領は「5年以内に再建する」と目標を表明。以来、国を挙げて復興を進めてきた。
残念ながら5年以内の再建はかなわず、24年7月26日に開幕するパリ五輪にも間に合わない。それでも、このスピードは驚異的といえるだろう。火災から間もない頃は「修復には数十年かかる」との見方を示す専門家が少なくなかったほどだ。屋根材が溶けたことによる鉛汚染や、新型コロナウイルス禍が工事の進行に支障を来すという逆風も乗り越えてきた