岸田文雄首相、空路54時間の強行軍で経済協力の強化図る 対中意識、南米と仏へ出発

産経新聞

岸田文雄首相=首相官邸(酒巻俊介撮影)

 

 

 

 

 

岸田文雄首相は1日午前、フランス、ブラジル、パラグアイ訪問のため政府専用機で羽田空港を出発した。空路で計54時間以上、機中2泊で地球を1周する3泊6日の強行軍。南米2カ国とは貿易・投資の拡大、市場開拓、現地の雇用創出といった「ウィンウィン」の経済関係強化を図る。ロシアのウクライナ侵略や中国の覇権主義的な行動により国際秩序が揺らぐ中、経済力の大きい中国に傾斜しないよう引き止めたい考えだ。

 

 

 

  【写真】フランスに向けて羽田空港を出発する岸田首相 

 

 

 

首相は1日の出発に先立ち、記者団に「ブラジルのルラ大統領とは二国間関係、国際場裏の連携などを確認したい。パラグアイのペニャ大統領とは経済、宇宙、情報通信、人的交流といった二国間関係とあわせて国際的な課題も意見交換したい」と抱負を語った。中南米は今年、ブラジルが20カ国・地域(G20)議長国を務めるなど国際社会でカギを握る存在といえる。日本の首相の中南米訪問は2018年以来。 日本政府には「中国が中南米に積極進出し、影響力を高めているのに、日本は出遅れている」(外務省幹部)との危機感がある。中南米はエネルギー資源、鉱物、食料の一大供給地で、中国は年間貿易額を約20年で40倍程度に増やしている。 首相は今回のブラジルとパラグアイそれぞれの首脳との会談で、「力による現状変更」を試みる中露を念頭に「『法の支配』に基づく自由で開かれた国際秩序」の重要性について認識の共有を図る。加えて、相手国の経済的利益につながる協力強化を打ち出す。ブラジルには40社以上、パラグアイには10社以上の日本企業の幹部が同行し、現地企業と協力の覚書を結ぶ見通しだ。 ブラジルは、リチウムイオン電池の主要原料であるリチウム、ニオブなど重要鉱物の産地。首相は3日(日本時間同)のルラ氏との首脳会談で、重要鉱物の供給網(サプライチェーン)構築について協議する。 また、脱炭素社会実現に向けた包括的な協力の枠組み「グリーン・パートナーシップ・イニシアティブ」を立ち上げる。ブラジルはバイオエタノール生産国で、ガソリンの代替燃料として普及している。日本には調達先確保やエタノールを燃料に走る自動車市場の開拓、ブラジルには日本の技術力の活用というメリットがある。 3日(日本時間4日)のパラグアイとの首脳会談でも貿易・投資の拡大を議論する。パラグアイは中国ではなく台湾と外交関係を結ぶ世界12の台湾承認国の1つ。首脳会談では「力による一方的な現状変更」への反対を確認したい考えだ

 

 

 

4日(日本時間5日)には、日本の首相として10年ぶりに中南米に関する政策スピーチを行う。日本と中南米の深い歴史を強調しながら、日本は強権的ではなく信頼できるパートナーだとのメッセージを打ち出す。

首相は南米2カ国に先立ってフランスを訪問し、日本が議長国を務める2日(日本時間同)の経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会で、基調演説を行う。

基調演説では「自由で公正な経済秩序」の重要性を指摘する。これに反する動きを見せる中国を念頭に、経済的威圧や非市場的政策・慣行への対応、サプライチェーン強靱化のため各国の協力の必要性を強調。OECDの分析や評価を通じた国際標準の形成により、そうした取り組みに貢献できると訴える方向だ。(田中一世

 

 

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