ウクライナ敗北は恐怖の始まり】21世紀型の戦い方を習得したロシアが晒す欧州への脅威

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(mel-nik/Hase-Hoch-2/gettyimages)

 

 

 

 

 2024年4月11日付の英Economist誌が、ウクライナが戦争に負ければ何が起きるのかを論じるコラムを掲載し、恐怖が欧州に浸透することとなろうと述べている。  

 

昨年のウクライナの反転攻勢の希望は失せ、このところ支配するのは恐怖である。  

 

 

もしウクライナが敗北すれば、それは西側にとって屈辱的となろう。

米国と欧州は、過去2年、道義的・軍事的・財政的支援をウクライナにしてきた。

 

 

 

この支援の提供を時に躊躇したことが事態を悪化させた。  

 

ウクライナの領土がロシア領に塗り替えられれば、

力は正義なりという理念が固まるであろう。

 

元北大西洋条約機構(NATO)事務局長ジョージ・ロバートソン

「もし、ウクライナが敗れれば、われわれの敵が世界秩序を決めるであろう」

と警告した。

特に台湾の人々にとっては不幸なことになろう。  

 

 

 

ウクライナの隣国による支援の速度は米国よりも遅かった。

しかし、ゆっくりだが着実に、彼等は可能な限り要望に応えた。  

 

武器を届け、

 

ウクライナの財政を支え、

 

数百万の避難民を受け入れ、

 

何度も対ロシア制裁を課し、

 

ロシアからのガス・パイプラインを断ち、

 

欧州連合(EU)は

当初可能と思われたことの限界を超えた支援をした。

 

目下、

EUにはタカ派の東部周辺と

その他の間に分断が存する。

 

もし、ウクライナが負ければ、分断は相互の非難と憤りに発展するであろう。

 

 

 

 ウクライナの敗北の地政学的な影響は

和平合意の形に依存するであろう。

 

翻って、それは軍事の力学にかかって来る。

 

 

 

もし、弾薬不足のウクライナ軍が崩壊し、

ロシアが東部だけでなくベラルーシ型の傀儡政権の下で国全体を支配するならば、

ロシアはEUと追加的に1000キロメートルを超える国境を接することになる。

 

 

  

EUの将来の形は変わるであろう。

 

ウクライナへのEU拡大の約束は包括的な勝利を前提としていた。

 

西バルカン諸国のEU加盟申請も放置されることとなろう。

  

罪と恥の感情を超えて、恐怖が欧州に浸透するであろう。

 

更なる攻撃があれば、

それはNATO加盟国に対するもので

同盟国の行動を強いるものか。  

 

プーチンはバルト三国におけるナチズムに言及し、

ウクライナ侵攻の際に用いた口実を繰り返したことがある。

もしロシアが勝利すれば、

プーチンは戦闘で鍛えられ領土を奪取する21世紀型の戦闘技術を備えた

唯一の戦闘集団を指揮することとなろう。

 

 

 

  たとえウクライナが勝つにしても、

欧州は変わる必要がある。

 

NATOは今月75周年を祝うが、欧州がその領土の一体性の米国による保証のよすがとするNATOの将来は不確かである。

 

 

 

冷戦後の平和の配当の収穫の数十年を経て、より大きな国防費が必要となる。 

 「もし、ウクライナが負ければどうなる?」という問題に対する欧州の答えは依然単純である――「ウクライナは負けてはならない」というのが答えである

 

 

 

 

 

 

 

欧州はすでにロシアに備える時

 ウクライナ戦争は、ウクライナの負けと決まった訳ではないが、

このまま推移すれば、

ロシアを22年2月24日の線まで押し戻すというウクライナの半分ほどの勝利も覚束ない。

 

 

 

仮に、ウクライナが負ける場合、

何が起きるかを考えておくことは必要で有益である。

 

その場合、

欧州を支配するのは屈辱と恐怖であろう。

 

 

  欧州は結束して行動した。

ロシアの戦闘能力を削ぐべく累次の制裁によりロシアに懲罰を課し、

ウクライナの自衛努力を助けるべく軍事的・財政的に多大の支援を提供している。

 

けれども、

欧州は、ウクライナの戦場で鍛えられ21世紀型の戦い方を習得したロシア軍の脅威に向き合うことになる。  

 

 

仮に、ロシアとの和平合意に持ち込めたとしても、

それは幻想の安全を提供するに過ぎず、

欧州はロシアがNATO領域、

特に、

バルト三国など東部領域に

 

次なる侵略を企てる脅威への対処を迫られるであろう。

 

 

加えて、核を含む米国の拡大抑止の信頼性が、

ドナルド・トランプの言動によって揺らいでおり、

それが欧州の不安を煽っている。  

 

 

重要なことは、

ウクライナの命運がこの先どう決するかにかかわらず、

欧州が防衛努力を各段に強化し、

ロシアに備えることであり、

7月のワシントンにおけるNATO首脳会議はそのための重要な機会となろう。

 

 

 

 ロシアは軍事能力を高めている。

ロシアの軍事予算の国内総生産(GDP)比は

本年6%に達すると見込まれている。

ロシアの軍事産業は拡大しつつある。 

 

 

 NATOはこれに対抗し、

抑止と防衛の能力を強化せねばならない。

 

国防費のGDP比目標を現行の2%から2.5%に引き上げることも意義があろう。

 

より重要なことは、

ウクライナ戦争においてドローン(情報収集・偵察および自爆型の攻撃)、

 

低軌道衛星(通信・目標設定・情報収集・監視)、

 

AI、

 

水中ドローン、

 

電子戦等

 

により具現化したハイテクによる戦闘の革命的な進化を

NATOの作戦計画に組み込むことであろう

 

 

 

 

 

ウクライナができること

 ウクライナ自体については、

敗北が限定的で、

ロシアに占領された部分を除く残余の領土で国として機能するとしても、

果たして活力ある国として生き残れるのかの疑問がある。

 

 

多くの国民が国を離れ、国が空洞化するかも知れない。

 

  この記事には、

「ウクライナへのEU拡大の約束は包括的な勝利を前提としていた」とある。

 

そうだったのか承知しないが、少なくとも、打ちひしがれたウクライナをEUが抱きかかえることは出来ないかも知れない。  

 

 

NATO加盟はあり得ないこととなろう。

この記事が結論的に述べているように、

「もし、ウクライナが負ければどうなる?」という問題に対する唯一の答えは

「ウクライナは負けてはならない」であろう。

 

岡崎研究所

 

 

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