星海社新書日本再発見

発売日 20240423(発売日はお住まいの地域によって異なります。)

超「日本通」大使が語る、日本人の知らない日本

 

「日本にはこんなに多くの美点が眠っているのに、他ならぬ日本人がその価値を見過ごしている」――日本文化への深い洞察で人気を集めるティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使に、日本への思いの丈を語り尽くしていただいたのが本書です。外交官だからこそ垣間見える、私たちの知らない皇室の一面、国際的に見て特異な発展を遂げた日本の食文化、ローカルな街に隠された驚くほど複雑な歴史など、日本人は当たり前だと思っている、しかし世界から見るとユニークでおもしろい「日本らしさ」は数多く眠っています。さあ、ジョージア生まれ日本育ちのレジャバ大使と、日本の魅力を再発見していきましょう。

20240403 更新

 

 

 

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契約書がなくてもウソをつかない、約束を破らない…“駐日ジョージア大使”が語った「日本のビジネスパーソンの素晴らしい所」

文春オンライン

駐日ジョージア大使が驚いた「日本人の性質」とは? 写真はイメージ ©getty

 

 

 

 

「一般の人たちがこれほどまじめでなければ、日本の経済的な繁栄は成し得なかったでしょう。日本は根幹がしっかりしているのです」 

 

 

 

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 駐日ジョージア大使で、日本企業にも務めたことがあるティムラズ・レジャバ氏が語る「日本人の素晴らしいところ」とは? 新刊『 日本再発見 』(星海社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

 

 

 

 

「普通の人」のレベルが普通ではない国・日本

 日本人は社会構造的に、富裕層でも貧困層でもない「中間層」が厚いと言われています。これは非常に立派なことです。もちろん日本の政治家もみなさん力を尽くしてがんばっておられますけれども、一生懸命に働いている、まじめでウソをつかず、プロフェッショナル精神を持つ中間層の人たちこそがもっとも尊い存在だと思います。  そういう人たちが「普通の人」として当たり前にいて日本社会を支えていますが、これはほかの国ではまったく普通でも当たり前でもないことなのです。  たとえば私のところに取材に来られる記者の方々は、みなさん事前にジョージアのことをよく調べ、私の過去の発言も調べた上で、深いコメントをもらえるよう準備してから取材に臨んできます。ジョージアにも優秀な記者はたくさんいますが、あまり下調べせずに初歩的なことから尋ねてくる記者も正直少なくありません。  そういう記者職の人たちは頭が良くて高学歴な人が多いし、ちゃんとしていて当たり前ではないかと思うかもしれません。しかし、日本では、メディアで取り上げられることもなければ、一般的にステータスがあるとはみなされていないような仕事に就いていらっしゃる人でも仕事に手を抜きません。「そんなにバカ真面目にやらなくてもいいだろう」という、社会で注目されないようなところでも高いプロ意識を持っている。どんな職種、役職であっても、です。これは日本特有のことだと思います。

 たとえば清掃員の方がそうですね。外国人は「日本は道もトイレも、どこに行ってもきれいだ」と驚きます。それはもちろん日本人ひとりひとりが汚さないように気をつけていることもありますが、清掃をされる方のクオリティがすばらしいからです

 

 

 

まるで心を読んだかのような「接客サービス」

 先日もそれを実感することがありました。デパートの化粧品売り場に行って、保湿用のアフターシェーブローションを探していたのですが、売り場の販売員の女性は非常にテキパキと質問に答えてくれました。失礼ながら初めて知ったブランドの店員さんでしたが、「うちにはアフターシェーブローションはないけれども、ローションはあるし、アフターシェーブローションはこのフロアならあそこで売っているかもしれない」と即座に調べ、その上で「うちの保湿用ローションはこんな感じです」と、ぴかぴかのきれいな手で私の手に塗りながら商品説明をしてくださいました。  その流れはあまりにもスムーズで丁寧で、すべてがこちらの心を読んだかのような対応でした。「この人はサービスのプロだ」と感じ、「こんなによくしてもらうのは悪いな」と思ったほどです。その方に教えていただいた商品を買うことを伝えると、やはり効果が最大限発揮されるような使い方や注意点をひとつひとつわかりやすく教えてくれました。その接客からは、自分の仕事に誇りと責任を持った上で楽しんでいることが伝わってきました。  このように、何気なく足を運んだデパートにこのレベルのスタッフがいるのが日本です。外国人が予期しないようなところで、ものすごいプロフェッショナルと出会えるのが日本なのです。  私が勤めていたキッコーマンにも長年蓄積されたノウハウが山ほどありました。外に出さないのはもったいないと思えるような独自のノウハウがローカルに閉じた形で使われていたりするのです。日本では庶務の女性が会社の歴史に通暁していて、何十年も前の出来事を生き字引のように語れたりすることもありますよね。  しかも驚くべきは、従業員と企業とが契約を結んでいるがゆえに徹底してプロフェッショナルとして振る舞っている、というわけではないことです。

 日本は会社の中で従業員と会社組織との間で結ぶ契約の内容も曖昧ですし、会社と会社の間の商談ですら契約書なしで話を進めることが多いでしょう。むしろ交渉の内容があらかた決まったあとで事後的に契約を交わす――つまり明文化された契約がなかったとしても、相手がウソをつかない、約束を破らないという信頼に基づいてビジネスが進められていきます。言い換えると、日本人は「言ったことはすべて守る」「発言には責任が伴う」という価値観に厳格なところがあります。  しかし現実には、社内の会議や対外的な交渉ごと、あるいは政治家の発言にしても「言った」「言わない」がいくらでも生じますし、同じ言葉でも受け取り方は人によって変わります。だからこそ契約書で交わしたことや公式な場での発言と、そうでないことを区別する国・地域のほうが世界的には多数なのではないでしょうか。少なくともジョージア人は、日本人ほど言葉に対する責任意識は高くありません。  翻って、「契約で定められていないことはいい加減にやってもかまわない」「オフィシャルな記録に残らない場での発言に責任を負う必要はない」とは日本人は思っていません。お互いウソをつかないことを前提にして、発言に対する責任を重んじる、そして契約の条文に書かれていなくてもプロとしてこだわりを持って仕事に取り組むというモラルが高い人たちで社会が構成されています。私からするとあまりにも人々の責任感が強すぎて、もう少し肩の力を抜いていいのではないかと思うほどです。

 

 

 

 

「日本は根幹がしっかりしているのです」

 一般の人たちがこれほどまじめでなければ、日本の経済的な繁栄は成し得なかったでしょう。日本は根幹がしっかりしているのです。バブル崩壊後に「失われた30年」と呼ばれた停滞期があったものの、近年では改めて外国の著名な投資家も日本に注目し、高く評価した上で投資をするようになっています。  さらに驚くべき日本人の特徴は、お金にならないことにも最大限パワーを注ぐ点です。 「外国の人間からしたら、まったく信じられない」駐日ジョージア大使が『欽ちゃんの仮装大賞』は“日本でしか成立しない”と考えるワケ へ続く

ティムラズ・レジャバ/Webオリジナル(外部転載

 

 

契約書がなくてもウソをつかない、約束を破らない…“駐日ジョージア大使”が語った「日本のビジネスパーソンの素晴らしい所」(文春オンライン) - Yahoo!ニュース