日本とEUが経済安保強化へ共同構想…中国を念頭、半導体など調達を特定国に依存しない方針

読売新聞オンライン

(写真:読売新聞)

 

 

 

 日本と欧州連合(EU)は、経済安全保障の強化に向けた国際的な共同構想を打ち出す。半導体など戦略物資の調達で、特定国に依存しないことや、環境への配慮など共通の原則を策定していく。中国製など安価な製品が市場を席巻していることが念頭にある。米国を始め同志国にも賛同を呼びかけ、透明性の高いルールに基づく市場競争を目指す。 

 

 

 

 

【一目でわかる】日本とEUの間の半導体協力

 

 

 

 

 5月初旬に日EUのハイレベル経済対話をパリで開催して共同声明を出す見通しだ。日本からは上川外相と斎藤経済産業相、EUの執行機関・欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長が出席する。

 共同声明では、日EUが「透明、強靱(きょうじん)で、持続可能な供給網」を推進していくことを盛り込む。日EUで経済安保の強化について具体的な声明を出すのは初めてだ。

 

 

 

 戦略物資の価格だけが着目されないよう、公共調達や企業への補助金支出の際、環境への配慮や特定国に依存しない供給の安定性、サイバー攻撃への十分な対応といった条件を共通の原則とする。今後、分野ごとに詳細を詰める。

 

 

 非先端分野の半導体やEV(電気自動車)、太陽光パネルなどでは、中国勢が低価格を売りに世界市場で存在感を高めている。欧州委トップは、中国政府が自国企業に巨額の補助金を出し、意図的に価格を低く抑えているとして不満を募らせている。2022年には、中国の対EU貿易黒字が約4000億ユーロ(約67兆6000億円)と過去最大を記録した。

 

 

 共同声明では「市場をゆがめる産業補助金などの結果、戦略物資で特定の供給源に頼り、貿易が兵器化している」と懸念を表明する。

 

 

 

ブリュッセルの欧州連合(EU)本部

 

 

 

 ただ日EUとも、中国は重要な貿易相手だ。中国製品を市場から排除するのではなく、戦略物資や重要技術で中国への依存度を下げる「デリスキング(リスク低減)」を目指す考えで一致している。

 

 

 米国などでは中国との対立が先鋭化し、半導体やEV工場の誘致が過熱している。世界経済が保護主義に陥らないよう、日EUは国際的な共通原則を制定して先進7か国(G7)や新興・途上国「グローバル・サウス」にも理解を呼びかけ、「協調的な取り組みによって、公平な競争条件を促進する」ことを目指す。

 

 

 さらに、日EUが協力し、AI(人工知能)や先端半導体など重要技術でリスク評価の分析や漏えい防止を進め、経済安保を強めることも共同声明で確認する

 

 

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