知識さえあれば投資は怖くない」18歳で資産は“原資の2.5倍”、高校生投資家を通して見えてきた「新時代のお金の常識」#令和のカネ

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(※写真はイメージです/PIXTA)

 

 

 

 

物価の上昇、新NISAのスタート、日経平均株価の最高値更新など、投資の追い風となるような変化が立て続けに起こっている日本。このままいくと10年後、20年後には「投資をすることは当たり前」という時代がやってくるのでしょうか? 本記事では、そんな時代の訪れを待つことなく早々と投資を始めている高校生投資家の「のむよーぐると」さんに取材。それと共に、この先に待つ「投資の未来」と、過熱する投資ブームの中で注意すべきことを、経済アナリストの森永康平さんに伺いました。

 

 

 

 

高校1年生の夏前に投資を開始、きっかけは「YouTube」

どんな質問にもよどみなく答えてくれた、爽やかな印象の高校生投資家「のむよーぐると」さん。

 

 

 

 

テレビでは投資をテーマにした番組がゴールデンタイムに放送され、本屋では投資関連の書籍が山積み。投資フィーバーともいえる状態ですが、それでも「投資をしてお金が減ったら困る」と、躊躇している人も少なくないでしょう。しかし、一歩を踏み出せない大人を横目に、学生でありながら投資を始めている人もいます。 その一人が、高校生投資家の「のむよーぐると」さん。「これからの時代、投資をしなくていい人はいないと思います」とキッパリ語る現役高校3年生は、どんなきっかけで投資を始め、どんな目的を持ち、お金に対してどんな考えを持っているのでしょうか。話を伺いました。 Q:どうして投資を始めようと思ったんですか? きっかけを教えてください。 A:投資を始めたのは高校1年生の夏前ぐらいです。きっかけはYouTubeで、たまたまおすすめで投資の動画が出てきたんです。それを観たわけではないのですが、投資ってなんだろうと気になって、一番最初にベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』を読みました。 少し難しかったですが、投資理論のバイブルということで、この本から入りました。もちろんそれだけでなく、YouTube、ネット、Xなど、色んなところから情報収集しました。 Q:投資を始めるにあたって、ご両親から影響を受けたということは? A:とくにないです。親も投資はしていますが、勧められたことはありません。放任主義で、投資も「自分のお金の範囲内で、やりたいならやってみれば」という感じで。私は未成年なので、証券口座の開設などは協力してもらいましたが、あくまで自発的に始めています。貯めていたお年玉などを使って10万円からスタートしました。 Q:具体的に、どんな投資をしているのですか? A:最初はジュニアNISA口座で、簡単に分散投資できる「eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)」を選びました。しばらくはその1本で運用していたんですが、勉強していくうちに「個別株はもっとおもしろい」と思って、今は個別株投資をしています。 投資手法は「コア・サテライト戦略(※)」で、Apple、Microsoft、Google、Tesla、SOXLなどを保有しています。SOXLはレバレッジ3倍のETFなんですが、少しリスクをとっても増やしたいので組み込んでいます。銘柄選びでは、尊敬している投資家の広瀬隆雄さんのnoteを参考にしたり、アメリカのYahooファイナンスの動画を観たり。企業の決算情報もしっかり見るようにしています。 (※)保有する資産をコア(安定運用)部分とサテライト(積極運用)部分に分けて考え運用する投資の戦略。 Q:資産運用の実績はどれぐらいでしょうか。 A:トラブルを避けるために資産は公開していませんが、「原資の2.5倍」になっています。私の話ではなく例えになりますが、原資が100万円だったら250万円になっているということです。現金で持っていたらこれだけ増えることはないので、やっぱり投資って大切だなと思いますね

 

 

 

 

 

 

Q:学校生活と投資に使う時間、どう使い分けていますか? A:受験生なので、基本的に勉強中心の毎日です。朝7時に起きて、学校に行って、終わったら塾に行って。時間があればカフェに行って本を読んだり、買い物をしたり、友人と遊んだりしています。 短期売買ではなく長期投資をしているので、投資に使う時間が毎日必要ということもないです。株価はXに投稿したりするために、夜に見る程度。なので、学校生活を送りながら投資は問題なくできています。 Q:投資で増えたお金を何かに使っていますか? A:とにかく資産を増やしたいので、買い物などには基本使っていません。分配金も再投資に回しています。でも学生でアルバイトもしていないので、投資の原資がなかなかつくれなくて……。毎月もらっているおこづかいも、なるべく使わずに投資に回したいんです。 そうすると趣味や遊びに使うお金がなくなってしまう。だから、そういったお金はポイ活でつくるなど工夫しています。 Q:具体的にどんなポイ活をしているのでしょうか。 A:「ハピタス」というポイントサイトを使っているんですが、私のXの投稿を経由して証券口座を開設などをしてもらうと、ポイントが入るんです。高校生投資家として情報発信しているのも、マネタイズの目的が大きくて。PR案件をいただくこともあります。 ほかには、未成年でも作れる「Olive」のデビットカードで支払いをして、日常生活でもポイントを貯めてます。マネーフォワードの家計簿アプリを使って毎日の収支管理もしています。何をすればお得というのも、投資の情報を集める中で自然と入ってきます。 Q:同級生との間で、投資の話をすることはありますか? A:学校では投資の話はまったくしません。投資以前に、お金の話は少しタブーな感じすらあります。目の前のことを楽しんで、お金が入ったらすぐ使いたい、それが高校生なんですよね。だから自分から投資の話をすることはないです。 ただ、親友など限られた人には投資の話もしていますよ。あと、Xを通じて高校生投資家の友人もできました。気兼ねなく投資の話ができて楽しいし、新しい発見もあったりと刺激を受けています。その友人の中には親にiDeCoをおすすめして、積立を始めてもらったという人もいます。 Q:運用が順調だと何もしなくてもお金が増えていきますが、「働いてお金を稼ぐ」ことに対してどう考えていますか? A:働くことは大事だと思っています。大学では経済学や金融学を学び、ゆくゆくは起業したいという夢があるんですが、それを実現するときに、生活に困らない程度のお金があれば失敗したとしても路頭に迷うことはないですよね。やりたいことをやるために、まずはそれなりの資産をつくりたいというのがベースにあります。 少し質問とズレるかもしれませんが、お金は「人の役に立つことでもらえるもの」だと思うんです。なので、極端にいえば、投資で自分が困らない程度に資産ができたら、お金をもらえなくても人のために仕事をしたいです。 Q:大人でも投資の一歩を踏み出すのに躊躇する人は多いのですが、投資への不安とどう向き合ってきましたか? A:投資を怖いと思うのは知識がないからです。ちゃんと勉強すれば、暗号資産やFXといったリスクの大きい投資をすることもないし、もし相場が一時的に悪化しても、「今は買い場だ」と考えることができます。だから投資への不安を感じたことはありません。 今はスマホ1台でどんな情報も手に入れられるので、昔よりずっと知識を身に付けやすい時代ですよね。でも知識があるだけじゃダメで、口座を開設して始めてみるなど実際に行動に移すことがとても大切だと思います。 Q:高校生にして投資を始めていますが、やはり早く始めた方がいいと思いますか? A:私は学生ですから、親が生活を支えてくれているうえで投資をしていて、自立した社会人とは違う部分も大きい。だから、高校生で投資を始めているからすごい、偉いとは思っていません。 ただ、投資は誰もがやった方がいいと思っています。それに、今からやって遅いということもない。「始めたもの勝ち」なので、興味を持ったときに始めてみることをおすすめしたいです

 

 

 

 

 

投資が当たり前の時代」は来るのか

いまだに現金主義が根強い日本。野村アセットマネジメントが全国20~69歳の1万664人に行った『金融教育に関する意識調査2023』(2023年3月実施)では、「投資をしている」と答えた人は27%という結果でした。また、投資をしていない人が投資を始める条件として、「絶対に損をしなければ」が29%、「給料・所得が増えたら」が24%と続き、「どんなことがあっても投資はしない」という回答も31%に上っています。 国が「貯蓄から投資へ」を掲げ、新NISAもスタートしたことで、投資をする人の数は増えていくことが予想されますが、これから先、大人はもちろんのこと「のむよーぐると」さんのように学生でも「投資をするのは常識」という時代になっていくのでしょうか。経済アナリストの森永康平氏に伺いました。 ――日本人にとっての「投資」の現在地を教えてください。 森永氏:日本人が投資に目を向けることになった1つのきっかけは、2019年6月に話題になった「老後2,000万円問題」です。それまでは漠然と「定年まで働けば老後生活は大丈夫だろう」と考えていたところに、年金だけじゃ足りないという情報が広まって、急に不安になりだした。そこで一部の人は投資を始めたんです。 さらに今年から新NISAが始まって、一気に投資熱が高まっています。新NISAが始まった1月に日本株がすごく強かったことも追い風になりました。そして何より、この30年ずっとデフレだったのに、2023年ぐらいから物価が上がりだしたのが大きいです。 デフレ下では「Cash is King」で、現金で持っていても勝手に価値が上がっていきますが、インフレだと物価が上昇した分現金の価値が下がってしまいます。まだインフレが定着するところまではいっていませんが、お金を減らさないために投資が必要になりつつあるというのが、現時点までの流れです。 ――この先、投資が当たり前という時代になっていくと思われますか? 森永氏:やはりカギになるのはインフレの動向です。インフレが定着すれば、運用次第でお金が増やせる投資をする人は増えていくと思います。周囲にやっている人が増えれば「自分も」と続く人も多くなりますしね。 私と同世代(30代)の人などは、まだまだ投資が身近とはいえなくて、投資をしていることに特別感がある。でも今から10年ぐらいたったら、「保険に入るのと同じように投資をしている」というような感覚になっているかもしれません。 つまり、普通のことだからあえて言うことでもない、当たり前のことになっている可能性はあるでしょう。そこまで身近になれば、学生で投資を始める人も今よりは当然増えていくと思います。 また、今は「オールカントリーやS&P500を選んでおけばOK」というように、投資の方法がパッケージ化されている感じがあります。それが投資を身近にしているところもありますが、積立投資ではなく個別銘柄を選ぶ人が増えるなど、投資の方法も枝分かれしていくだろうと思います

 

 

 

 

――投資が身近になるほど、トラブルに巻き込まれる危険性も高まりそうです。 森永氏:投資詐欺は本当に増えていて、大学生など若い世代もかなり被害に遭っています。まず理解してほしいのは、投資というのは「ローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターン」だということ。つまり、損をしたくなければ増える可能性も低いし、大きく増やしたいと思えばその分減る可能性も大きくなるんです。 「ローリスク・ハイリターン」はあり得ないので、そういう話を持ち込まれたら100%詐欺です。ですから、「ローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターン」という投資の原理原則を、まずは頭に叩き込むことが大切です。 それと「リスク」の意味を正しく理解すること。日本人はリスクのことを「危ない」という意味で使いがちですよね。でも、統計学的には「すごくうまくいくかもしれないし、すごく失敗するかもしれない」というリターン(収益)のブレを指すんです。だから、「リスクが低いけど、すごく儲かる」っていうのは、そもそも成り立たない。 あとは、相場観を持っておくことも大事です。アメリカの国債がダメになるとき=アメリカが破綻するときなんですが、それってほとんど考えられないことじゃないですか。そんな信用力の高いアメリカの国債の利回りが、今5%ぐらいなんです。 それを知っていれば、「リスクはないけど数十%の利回りが保証されますよ、儲かりますよ」なんていう話、いかにぶっ飛んだことかわかりますよね。 あと、「月5%の利回り」という言い方をされて、騙されてしまう人もいます。月5%って年率に換算すると78%ぐらいなんですよ。でも数字に強くないと、「月5%なら大したことないから、詐欺ではないだろう」と思って、引っかかってしまう。数字に弱い人は注意が必要です。 そんなに難しいことじゃないので、こういったことは常識として覚えておくべきでしょう。 ――親が投資未経験だと、子どもが投資を始めたいときに困る時代になるでしょうか? 森永氏:子どもが投資をしたいと言ってきたときに、自分が知らないから頭ごなしにダメというのは論外だし、かといって難しい投資本を読むのもハードルが高いですよね。だから、お金を使わなくてもできる「ポイント投資」なんかを、子どもと一緒に始めてみるのがいいんじゃないかと思います。ポイントなら損をしてもダメージがあまりないですから。 こういうときに「投資がわからないから一緒に勉強なんて、親の威厳がなくなる」ということを気にする人もいるんですが、「大人だってわからないことがあれば学ぶんだ」、「なんでも知ってるわけじゃない」っていうことを見せるのも大切ではないでしょうか。 投資が同じ話題をつくるきっかけにもなりますし、協力しながら一緒に勉強していけばよいと思います。 森永 康平氏:金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO/経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとしてリサーチ業務に従事。その後はインドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて法人や新規事業を立ち上げ、各社のCEOおよび取締役を歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。 参考:野村アセットマネジメント 資産運用研究所『金融教育に関する意識調査2023』(2023年3月実施) ※この記事は、THE GOLD ONLINEとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

THE GOLD ONLINE編集部

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