スパニッシュイタリアンで坪月商58万円! 学芸大学『カルボ』に学ぶ洋食居酒屋の作り方

 2024年04月19日 

 

 

株式会社Visca代表の由利拓也氏(右奥)、根津直樹氏(中央)と『囲炉裏バル カルボ』のスタッフたち

 

 

 

 

 

中目黒のスペイン料理店『Pablo(パブロ)』や、

 

 

学芸大学のスパニッシュイタリアン『囲炉裏バル カルボ』

 

などを運営する株式会社

 

Visca。

 

 

学芸大学の『囲炉裏バル カルボ』

は洋食居酒屋という気さくな雰囲気と

客単価5,000円程度ながら、

坪月商58万円を売り上げるなど店作りのうまさが光る。

 

Visca代表でありオーナーシェフの由利拓也氏に、お客に喜ばれる洋食居酒屋の作り方を聞いた。

 

テーマは「友達がフラッと来られる店」。1号店の中目黒『パブロ』は坪月商70万円

レコールバンタン卒業後、中目黒のダイニングバー『モノポール』で学んだのちスペインへ渡り、バルセロナの一つ星レストラン『エルスカサルス』や『アルキミア』、三つ星レストラン『ラサルテ』などで4年ほど修業した経験を持つ由利氏。「国際パエリアコンクール」日本大会で2年連続準優勝、全日本タパス選手権でも優勝はじめ各賞を連続受賞している。そんな由利氏が独立して最初に開業したのが、2018年4月オープンの中目黒のスペイン料理店『パブロ』だ。

「自分の中でお店を展開する上でテーマにしているのが『友達がフラッと来られる場所』です。『パブロ』は自分がスペインで経験したことを日本の方にも体験してもらえるよう、メニューの半分は昔ながらのスペイン料理にしています。残り半分はモダンなスペイン料理、そしてほんの少しだけ自分がアレンジを加えた料理をラインナップさせました。ドリンクもワインなどのほか、スペインの食後酒も置くなど、現地らしさを反映させています」

店内9坪、テラス席1坪の計10坪に23席を配置し、現在客単価は約8,000円。オープンからこれまで売上は右肩上がりで、2024年3月には過去最高売上を記録するという好調ぶりだ。ディナー営業のほか土日祝はコースのみのランチ営業も行う。平日ディナーは1〜2回転、土日祝ディナーは2〜2.5回転しており月商は約650〜700万円、坪月商は約70万円にも上る。

“市民の台所”と呼ばれるスペインの市場をイメージし、現地から取り寄せたタイルをカウンターに貼り、食材を並べた『囲炉裏バル カルボ』

 

学芸大学に『囲炉裏バル カルボ』をオープン

中目黒の『パブロ』の経営が安定し、次第に「自分たちがしたいことを実現できるお店を作りたい」と考えるようになった由利氏。「国際パエリアコンクール」や独立前の日本一周旅行も共にしたスタッフの上村氏とも「仕事終わりに立ち寄れる、パスタやレモンサワーを楽しめるようなお店が欲しいよね」と話していたという。

その後、以前より知り合いだった、福岡の名フレンチ『Restaurant Sola』などで研鑽を積んだ根津直樹シェフに声をかけた由利氏。一度は断られたものの、引き受けてもらうことができ2020年1月に『囲炉裏バル カルボ』が学芸大学に誕生した。

店名はスペイン語で「炭」を意味する「カルボン」に由来する。その名の通り、囲炉裏や薪火で調理した、スペインやイタリアなど各国の郷土料理とお酒が気軽に楽しめるお店だ。

カウンターの目の前で薪火焼きや藁焼きを行っており、ライブ感あふれる

 

「日本で炭焼きというと囲炉裏で魚を焼くイメージですが、アルゼンチンでは牛を丸ごと焼きますし、スペインだと豚を焼く。素材は違えど、火を囲んで楽しく会話をしながら、お酒を飲む風景は一緒だなと思っていて。これってマンモスを狩って食べていた狩猟採集民の時代から続いている、人間の根源的な営みですから多くの人に受け入れられると思ったんです。スペインでは薪火料理がメジャーで、藁焼き料理もあるからそれらをメインにしようと思い、囲炉裏バルというコンセプトにしました

 

スパニッシュイタリアンで坪月商58万円! 学芸大学『カルボ』に学ぶ洋食居酒屋の作り方 | 飲食店ドットコム ジャーナル (inshokuten.com)

 

 

 

 

 

右奥から時計回りで「カルボサワー」(650円)、「ヤリイカと春野菜のサラダ」(1,100円)、「初鰹のカルパッチョ」(1,430円)、「黒豚のTボーンステーキ」(2,750円)

 

 

 

 

 

炭火焼き・藁焼き料理に、自家製サワーを揃えオリジナリティも追求

メニュー表には、「ミックスオリーブ」(500円)のおつまみから1,000円程度の前菜や温菜、300グラムほどとボリューム満点な「黒豚のTボーンステーキ」(2,750円)などのメイン類、デザートなど幅広く並ぶが、1,000円台のものが多いだろうか。薪火で表面を焼いたヤリイカに春野菜、ブッラータチーズを合わせ、オリーブやアンチョビを使ったタプナードソースを回しかけた「ヤリイカと春野菜のサラダ」や、藁焼きした「初鰹のカルパッチョ」には、同じく薫香が楽しめるいぶりがっこを合わせるなど、組み合わせの妙が光る。『パブロ』よりもカジュアルな値段設定と雰囲気のお店でありながら、わかる人が食べたら「この料理、この値段でいいの?」という驚きを与えることで、見事にリピーターを獲得した。

 

 

 

スペインのローカルフード「エストレジャードス」などは知らない人でもわかるように、フライドポテト、生ハム、ニンニクマヨ、半熟目玉焼きと補足するなどの工夫も

 

 

 

 

ドリンクもワインだけでなく、ビール、サワー、ウイスキー、ジンなど、居酒屋系ドリンクを充実させた。サングリアのほか自家製レモンチェッロを使った名物の「カルボサワー」や、ローズマリーを効かせた「季節のヴィネガーサワー」など、オリジナルグラスに入ったオリジナルドリンクも人気だ。

 

 

ドリンクも400〜920円と手が届きやすいメニュー展開で、スパニッシュイタリアンながら居酒屋定番のサワーを豊富に揃える

 

 

 

 

 

客単価5,000円、14.5坪28席で月商約850万円

メニュー作りで意識していることを聞くと「スペイン語やイタリア語など横文字はとっつきにくい場合もあるので、わかりやすいネーミングにしています。たとえばウニのフランという料理があるのですが、語感やイメージで伝わるよう『ウニウニプリン』にしていますし、肉詰めパスタのラビオリも『餃子』と記載して親しみやすくしていますね」と由利氏は答える。

 

フードやドリンクの原価については「全体で30%以下に抑えられればいいと考えています」と話す。例えば2019年の「全国タパス選手権」でオーナーの由利氏が優勝をおさめた「鮮魚のパリパリ包み揚げ」(1,200円)は看板商品として多くの人が値段をそこまで気にせず注文すると踏み、原価率は15%と低めに設定。その分、他の料理に原価をかけるなど、全体でバランスを取っている。

現在『囲炉裏バル カルボ』の客単価は約5,000円、男女比率は3:7。14.5坪、28席で月商850万円という好成績を残している

 

 

 

 

 

 

 

18坪の店内にカウンター14席、テーブル20席の計34席からなる『カルボ 渋谷店』

 

 

 

スペイン版鉄板焼き“プランチャ”が楽しめる『カルボ 渋谷店』もこの春オープン

2024年3月10日には、中目黒『パブロ』の2号店だった渋谷のスペインバル『Llevant(ジェバン)』をリニューアルし、『カルボ 渋谷店』としてオープンさせた。

 

 

 

「本格的なスペイン料理は、誰でもできる料理ではないため、『パブロ』のようなしっかりスペイン料理を伝えるお店を作るとなると、キャラが立つ人じゃないと難しいんですよね。その点、酒場要素を取り入れた『カルボ』ブランドは横展開しやすい。ちょうど『Llevant』の料理長が独立することになったので、そのタイミングで、『カルボ 渋谷店』としてリニューアルすることにしたんです」とその経緯を明かす。

 

 

 

 

 

カウンター前に設けたプランチャで肉や魚、野菜を豪快に焼く

 

 

 

 

 

 

しかし今回は物件の契約上、薪や炭が使えなかった。フライパンではない調理法で何かできないかと考え、由利氏が思い至ったのがスペインの大衆的な食文化である鉄板焼きの「プランチャ」だった。

 

 

「プランチャは食材のエキスや肉汁がこぼれ落ちず、鉄板にこびりついたおこげもうまみとして使えるし、素材の味が生きる料理です。一度にたくさん調理もできて効率的。お客さまの目の前で調理するライブ感もあり、コンセプトに据えてみました」

料理については「新店に慣れていないスタッフもいるということで、学大と一緒のメニューも取り入れています。とはいえ、面白いことをしつつプランチャを活かしたいので、直取引している天草大王の出汁を使った“スープパスタ”という名のラーメンなんかも提供したりしています」と話す通り、渋谷店限定メニューも面白い。

 

 

 

右手前から「白レバーとハツのコンフィ山葵風味」(650円)、「鮮魚のパリパリ包み揚げ」(2P 1,200円)、「ハラミのステーキとフォアグラ スペイン風玉葱ソース」(2,200円)、「カルボのラタトゥイユ」(850円)、「濃厚カルボナーラ 目玉焼きハンバーグトッピング」(3,000円)、「本場バスクチーズケーキ」(600円)、「カルボサワー」(650円)

 

 

 

 

 

 

 

渋谷ということで若年層の来店も意識し「面白くて映えるけど、ちゃんとおいしい料理」を追求しており、由利氏の欲望を体現した「濃厚カルボナーラ 目玉焼きハンバーグトッピング」(3,000円)などもある。

 

 

コロナ禍にリースした物件だったため初期費用は高かったが、賃貸費用は18坪で月52万円と破格だった。『Llevant』時代から9割ほど店を作り替えたためリニューアルの費用はかかったというが、学芸大学『囲炉裏バル カルボ』の知名度も高かったため、ターミナル駅・渋谷という立地もあいまり集客は上々だという。

 

 

 

 

スタッフが楽しく働くことで定着率が上がり、良い店の雰囲気が生まれる

中目黒、学芸大学、渋谷、さらには福岡など出店が続くVisca。由利氏は「個人店の集合体」ととらえ、それぞれの店、それぞれのスタッフに合った働き方を実現できるよう心がけているという。

 

 

 

 

「人が辞めない会社、お店づくりをするようにしています。仕事をする上で何を大切にしているかを各人に聞くよう、各店舗のボスにもしっかり伝えていますね。やはり、スタッフが楽しく働くことがお店の雰囲気作りにおいて大切ですから」

現在社員13人、アルバイトは25人弱。創業から6年が経ち、退職した社員は、独立で辞めた人も含めて2人だけだという。

 

 

 

今後、恵比寿にスペイン料理の新店を出店予定のVisca。とはいえ店舗展開に意欲的というよりは「やりたいという仲間がいたら、次に動きたい」と由利氏は考えている。何よりも一緒に働く人がいるかどうか、楽しく働けているかどうか、それが指針になっているようだ。

 

 

 

 

 

『囲炉裏バル カルボ』
住所/東京都目黒区鷹番3-7-13 ホワイトウエル鷹番2F
電話番号/03-6303-2236
営業時間/15:00〜24:00(料理L.O.23:00、ドリンクL.O.23:30)
定休日/不定休
席数/29
公式Instagram

 

 

 

『カルボ 渋谷店』
住所/東京都渋谷区道玄坂1-16-15 道玄坂NKビル1F
電話番号/03-6416-3224
営業時間/12:00〜14:30(LO 14:00)
17:00〜23:00(フードL.O.22:00、ドリンクL.O.22:30)
定休日/不定休
席数/34
公式Instagram