ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への揺るぎない献身を示す?
<中東の親米国家ヨルダンは、イランの大規模攻撃からイスラエルを防衛するのに協力したと報道されたが、ヨルダン空軍のパイロットになったサルマ王女までが参戦して大活躍したという噂は本当なのか?>
母のラーニア王妃(右)とサレマ王女(2015年8月26日) REUTERS/Regis Duvignau
先週末、イランがイスラエルに初の直接攻撃を行った後、ヨルダン空軍のパイロットでもある同国のサルマ王女が、イスラエルを守るためにイランのドローンを撃ち落とした、という噂がネット上で広まった。【ジャック・ロイストン(王室担当記者)】
【画像・動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女
イランは、シリアのイラン領事館が攻撃されたことに対する報復として、
イスラエルに330のドローンとミサイルを発射した。
イスラエル軍によれば、
その99%は撃墜された。
イスラエルだけでなく、
ドローンやミサイルが空域を通過した
ヨルダンや
アメリカなども協力して撃墜した。
多数のX(旧ツイッター)アカウントが、
サルマ王女もそこでパイロットとして参加し、
5または6機のドローンを撃墜したと主張している。
Xアカウント「モサド・コメンタリー」の投稿は、
すでに削除されているが、
少なくとも160万回閲覧され、
4万5000の「いいね」を獲得した。
この投稿には、
「ヨルダンのサルマ王女が昨夜、イランのドローン5機を撃墜したと伝えられている」と書かれていた。
モサド・コメンタリーはその後、
「ヨルダン軍司令官からの要請を尊重し、以前のツイートを削除した」と投稿している。
■王女が本当に救ったのは
また、ウェブサイト「エミレーツ・ウーマン」の見出しと思われるスクリーンショットも、オンラインに出回った。
そこには、「
ヨルダンのサルマ王女が、イランのドローンを一晩で6機撃墜したと伝えられている」という説明が添えられている。
スクリーンショットには
エミレーツ・ウーマンの記事の冒頭部分も含まれており、
「紛争のさなか、ヨルダンのサルマ・ビント・アブドッラー王女が再び、
人類への揺るぎない献身を示した」と書かれている。
サルマ王女がヨルダン空軍の中尉であることは事実だ。
しかし、エミレーツ・ウーマンの記事のスクリーンショットは
偽情報のようだ。
ヨルダンの公式情報筋は本誌の取材に対し、
「完全に間違っている。
この件に関する報道や
ソーシャルメディアの投稿は、
すべてつくり話だ。
ヨルダンは、
組織的な偽情報キャンペーンの標的にされている。
これは明らかに、
そのキャンペーンの一環だ。
根拠のない主張だと断言できる」と述べている。
写真、
記事の冒頭、
記者の署名はすべて、
エミレーツ・ウーマンの古い記事と一致している。
これは、サルマ王女が2023年12月に行ったパレスチナ地区ガザ上空からの支援物資投下について詳述した記事であり、
「ヨルダンのサルマ王女、空軍によるガザへの医薬品投下の指揮を執る」という見出しが付いている
捏造された「証拠」
記事の冒頭には、「紛争のさなか、ヨルダンのサルマ・ビント・アブドッラー王女が再び、人類への揺るぎない献身を示した」と書かれていた。 「王女は、ヨルダン空軍のチームを率いて、ガザ北部への5度目となる緊急医薬品投下の指揮を執り、パイロットとしての能力だけでなく、困窮している人々への思いやりと献身的な姿勢を示した」 この食い違いは、D-インテント・データによって発見された。D-インテント・データはXへの投稿で、こう指摘する。「ヨルダンのサルマ王女が昨夜、イランのドローン6機を撃墜したという主張が、デジタル加工されたスクリーンショットとともに共有されている」 「この記事のオリジナルの見出しには、『ヨルダンのサルマ王女、空軍によるガザへの医薬品投下の指揮を執る』と書かれている。記事が公開されたのは2023年12月15日だ」 ネットで引用されている唯一の情報源が偽物であることを考えると、根拠のない主張だったと考えられる。サルマ王女がドローンを撃墜したという主張を裏付ける証拠は、捏造されたスクリーンショットしか存在しないようだ。 (翻訳:ガリレオ)
ジャック・ロイストン(王室担当記者
ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への揺るぎない献身を示す?(ニューズウィーク日本版)