ウクライナ向け砲弾、エストニアが新たに100万発発見 年内にロシア凌駕も

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ウクライナ軍のBM-21グラート自走多連装ロケット砲。2016年10月、キーウ州ジウチキー村近くで(paparazzza / Shutterstock.com)

 

 

 

 

チェコ国防省のヤン・イレシュ国防政策・戦略局長が欧米以外の国々でウクライナ向けに調達可能な砲弾80万発(のちに100万発に増えた)の所在を確認したと発表してから7週間後、エストニアのハンノ・ペフクル国防相は、ウクライナ向けにさらに100万発の砲弾やロケット弾を探し出したことを明らかにした。 地元紙ポスティメースのインタビューで語った。ペフクルはこれらの砲弾を購入するのに必要な22億ドル(約3300億円)ほどの資金について、チェコが見つけた砲弾の購入資金13億ドル(約2000億円)を提供したのと同じ国々から募りたい考えを示している。 ペフクルは、財源が確保できた場合、エストニアのイニシアチブによる100万発とチェコの購入分、それに英国が独自に進めているとされる取り組みで集められる分を合計すると、ウクライナに今年「200万~250万発」の砲弾を送ることができそうだとも述べている。 ペフクルによると、これが実現すればウクライナ軍への砲弾供給量はロシア側と並ぶことになる。つまり、ウクライナ軍の砲弾発射数は1年ぶりにロシア軍と同水準に回復する 自由なウクライナの味方にとってじつに喜ばしいことに、おそらくそれにとどまらない。米議会でロシアに融和的な共和党一派の妨害に遭い、半年間滞ってきた米国の対ウクライナ追加支援法案の採決を、マイク・ジョンソン下院議長が約束どおり近く行えば、ウクライナ軍は数カ月後、砲兵火力で優位に立つと見込まれる。 エストニアが新たに砲弾やロケット弾の在庫を確認した国がどこなのかは、ペフクルは公表していない。「(調達は)主に欧州以外の国々からになりますが、欧州からの分もあります。残念ながら、具体的な国名を挙げることはできません。多くの場合、売却側の国は売却の事実を知られたくないのです」 ペフクルは、発見した弾薬には北大西洋条約機構(NATO)規格の155mm弾のほか、旧ソ連規格の152mm弾やBM-21グラート自走多連装ロケット砲用122mmロケット弾が含まれると説明している。これは、対象に東欧やバルカン半島の国が含まれることを示唆する。アフリカの国も候補かもしれない。チェコのイニシアチブでは、調達先に韓国や南アフリカ、トルコが含まれると報じられている。 スピードが重要になる。手元に砲弾がある国々は、ウクライナの支援諸国だけでなくロシアにも砲弾を売ろうとする可能性がある。早い者勝ちになるかもしれない。「誰が先に確保できるかはちょっとした時間勝負です」とペフクルは話している

 

 

 

ウクライナ軍は砲撃の強化でロシア軍の大きな前進を食い止めている

とはいえ、仮にエストニアが100万発にのぼる砲弾・ロケット弾の全量は購入できなくても、購入できた分はウクライナ軍の在庫を増やし、ロシアが拡大して3年目に入る戦争の戦場でウクライナ側にとって目下、最大の問題を解決するのに寄与するはずだ。 ウクライナ軍の砲兵は以前は砲弾を1日6000発ほど発射していたが、現在はわずか1000発程度まで落ち込んでいる。ロシア側は引き続き1日6000発近くのペースで砲撃している。弾薬が枯渇したウクライナ軍部隊は、ロシア軍の突撃部隊を発見しても攻撃する手立てがないことも多くなっていた。 ウクライナ東部アウジーウカの守備隊が2月下旬、5か月にわたる過酷な戦闘の末についに撤退に追い込まれたものも、弾薬不足が最大の理由だった。アウジーウカの廃墟になだれ込んだロシア軍は、過去9カ月で最大の領土を獲得し、戦争全体で勢いを得た。 ウクライナ側の弾薬不足に気づいたロシア軍は、アウジーウカの西方でさらに攻勢を続けた。チェコがウクライナのために独自の砲弾確保の取り組みに乗り出したのはちょうどその頃だ。ウクライナ軍の砲兵はその後、新たな砲弾が供給されることを確信し、緊急用にとっていた予備の弾薬に手をつけ、砲弾の発射ペースを上げたもようだ。 ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは「この改善によって、ウクライナは東部で重要な陣地の喪失を防ぎ、ロシアのさらなる進撃を遅らせることができた」と解説している。「ロシア国民は当初興奮し、ロシア軍司令部はアウジーウカ近郊での最初の攻撃に続き、ウクライナ側の防御線をさらに深く突破する狙いだったが、ロシア軍は結局、アウジーウカを占領したあと大きな土地を得られなかった」 ウクライナ軍が砲兵火力をわずかに増強しただけでロシア軍の前進を食い止められたのだとすれば、砲兵火力を大幅に増強すればロシア軍の前進を押し返すことができるのではないか? つまり、ウクライナ軍は新たな砲弾を200万~300万発得られれば、戦局をウクライナ有利へと転換できるのではないか。 たしかにウクライナ軍にはほかにも問題がある。人員不足、対空ミサイルの欠乏、戦闘で損傷した装備の修理の遅れなどだ。 だが、最も深刻な問題は砲弾の枯渇だった。ウクライナの支援諸国は、お世辞にもスムーズとは言えないにせよ、ようやくそれを解決しつつあるようだ。

David Axe

 

 

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