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世界の大富豪に「恐竜」を売りさばく男─「化石バブル」の裏側へ

クーリエ・ジャポン

トリケラトプスの化石「ビッグ・ジョン」とアレクサンドル・ジケロ Photo: Michel Stoupak / NurPhoto / Getty Images

 

 

 

 

野生動物の剥製をインテリアとして飾る──かつては金持ちの象徴のようにも考えられていたが、最近は倫理的にあまりイメージが良くない。それならば、恐竜の化石は? これはどうやら「アリ」のようだ。一握りの特権階級を相手に、その市場は急成長している。

 

 

  【画像】ビッグ・ジョンのオークションの様子 

 

 

パリ8区、ボエシー通りにある彼の書斎は、まるで物置小屋だ。隕石、アフリカの仮面、化石……とにかく書斎のスペースを超えない大きさのあらゆるものが、ガラスケースに展示されているか、床に積み上げられている。 ただし、3m近くある後期ジュラ紀の竜脚形類の脚については、カタログ写真に甘んじるしかない。ステゴドンの臼歯も同様だ。この臼歯の持ち主、絶滅した長鼻目の旧象は重さが12トンもあった。残念ながら、どうがんばってもアレクサンドル・ジケロの自宅にこれらの巨大な骨格を置くスペースはない。 ブロンドの髪で魅惑的な笑みを浮かべるこの50代の男は、フランスでは「恐竜を売る男」として知られる。より正確には、この分野でもっとも多くの業績を持つオークショニアだ。 若くしてキャリアをスタートさせた彼だが、初めからこの道が運命づけられていたわけではない。そもそもは中世の装飾写本や原始美術、ナポレオンの遺品などを専門とし、ナポレオンの帽子を188万ユーロ(約3億円)で売却したこともある。ただ、オークションハウス「オテル・ドゥルオー」を率いるようになってからは、アフロベナトル、アードニクス、スピノサウルスなどに夢中だ。 「2017年、初めてトリケラトプスの頭蓋骨を18万ユーロ(約3000万円)で売却しました。いまではその2~3倍の価値があります」とジケロは話す。それ以来、「ムッシュ・恐竜」は巨大な生物たちへの情熱を育んできた。2023年10月におこなわれた、全長5mのカンプトサウルス「バリー」(取引対象のすべての品にはあだ名がついている)の競売では、100万ユーロ近い値でハンマーを打った。これは彼にとって9回目の恐竜の競売で、これが最後でないことは明らかだ。なぜなら、まだあまり知られていないこのマーケットは、度を失った価格とともに急成長しているのだ。 およそ2億年前から5000万年前の骨格愛好家たちの世界──これはなんと不思議なものだろう。本物も多いが、詐欺師もいる。「ジュラシック・パーク」ごっこなら何でもする客もいる。 2020年、ニューヨークのオークションハウス「クリスティーズ」で、1体のティラノサウルスがセンセーションを巻き起こした。 全長12メートル、高さ4メートル、重さは7トンあり、70%が本物の骨でできている「スタン」は、2900万ユーロ(当時の為替レートで約33億円)で落札された。アブダビ首長国のオイルマネーによって達成された前代未聞の記録だ。同首長国は、この巨大な獲得物を2025年にオープン予定の自然史博物館で展示するとしている。しかし、スタンのようなケースはまれだ。たいてい、このような品は大金持ちの個人宅に収まる。 「邸宅の広間に置かれたときに目を引くのは、ルイ16世様式の箪笥やレジアンス様式の肘掛け椅子なんかよりも、恐竜のほうだということは認めざるを得ないでしょう」とアレクサンドル・ジケロは笑う。招待客たちから「おお……」と感嘆の声が上がること請け合いだ。 ホッキョクグマやキリン、ライオンなどの剥製は昨今、倫理的な理由から批判されるようになった。それ以来、恐竜の化石は実業家、裕福な資産家の跡取り、スタートアップ起業家や映画スターなど、ごく少数の超特権階級の間で猛烈に流行している。 さらに恐竜は、世界中で毎年ほんの数体しか売りに出されないため、戦利品を手にできるのは一番乗りだけ。レオナルド・ディカプリオは実際にいくつも購入している。6500万年前のモササウルスの頭蓋骨を手に入れ、それをラッセル・クロウに売却したこともある。クロウはテレビのインタビューで「ある晩、ウォッカで酔っ払っていたとき」、この巨大な海生爬虫類の頭に誘惑されたと語った。しかし、「離婚資金を調達するため」、再度売りに出したという。 いっぽう、ニコラス・ケイジは約25万ユーロ(当時の為替レートで約3300万円)で立派なタルボサウルスの頭蓋骨を購入したが、密輸されたものだったことが明らかになり、モンゴルに返さなければならなくなった

 

 

 

「商業古生物学者」という仕事

古生物学博士でトゥールーズ自然史博物館の館長を務めるフランシス・デュラントンは嘆く。「科学、教育、そして驚嘆の対象であるべき化石が、いまや商売の対象になっているのです。博物館にはそれらを購入するだけの予算がなく、研究者たちの仕事を狭めています」 こうした指摘がアレクサンドル・ジケロを苛立たせる。「古生物学者たちはいまこうして文句を言いますが、彼らは昔、何ひとつ買わなかったのですよ」 ジケロはマーケットの力を信じている。「美術史を振り返るとわかります。個人コレクターたちは、最終的に所蔵品を美術館に譲渡してきました。ルーブル美術館を見てください。あそこからマザランやルイ14世のコレクションを取り除くとほぼ何も残りません。最終的には、誰もが何かしらの利益を見出すことになるのです」 そうこうしている間にも、落札価格の上昇は続く。これは出品者にとっても朗報だが、売り上げに対して歩合を受け取るオークショニアにとっても良いことだ。 「ああ、ビッグ・ジョン! あれはすごい冒険だった!」とアレクサンドル・ジケロは振り返る。 ギネスブックにも登録されているこの世界最大のトリケラトプス「ビッグ・ジョン」について、彼は何時間でも語ることができる。2021年10月21日、ドゥルオーで開催された競売で、ジケロはその価格を660万ユーロ(当時の為替レートで約8億7000万円)にまでつり上げることに成功した。 米国人落札者は匿名を希望しつつも、ビッグ・ジョンを見て「恋に落ちた」と打ち明けている。サイの3倍の大きさがあるこの草食動物の最大の敵はティラノサウルス・レックスである。3本の角と巨大な襟飾りを持ったビッグ・ジョンは、オークション会場で、背中を丸めた突撃のポーズで展示された。 実はそんなビッグ・ジョンは、永遠にバラバラのままになるところだった。この骨格は米国の「商業古生物学者」(そう、そんな職業があるのだ)のウォルター・スタインが2014年にサウスダコタ州で発掘した。 「新しい発掘場を調査していたとき、突然、トリケラトプスの角の一部が地面から突き出ているのが見えたんです。その後、襟飾りの一部と椎骨が見つかりました」とドキュメンタリー番組で語っている。その後、5ヵ月かけて骨格全体を取り出し、保管手順に従ってそれぞれの骨を石膏で包み、崩れないようにした。 サウスダコタ州やワイオミング州などでは、スタインのように、地主から「発掘権」を買い、試掘している者が何百人もいる。米国は「宝物は発見者のものになる」という、世界でも珍しい国の一つだ。幸運にもお宝が見つかれば、自由に輸出もできる。 そのため、オークションのカタログに掲載される化石のほとんどは、アメリカの特にワイオミング州(ジケロによれば、まさに「恐竜ハンターたちのパラダイス」)から来ているという。「白亜紀、アメリカのこの一帯は、泥土状の土壌に囲まれた内海でした」とジケロは説明する。この地質学的特徴により、化石化が起きたのだ。また、深く掘らなくても骨が見つかるという点が、発掘を容易にしている

 

 

 

 

ビッグ・ジョンとジケロが出会うまで

ビッグ・ジョンを掘り起こし、その貴重な骨を60以上の木箱に収めた後、ウォルター・スタインは博物館からの連絡を待った。しかし、どこからも連絡はなかった。「ですから2年後、私はある民間企業に20万ユーロで売ることに同意したのです」。購入したのは、ジュラ紀の標本修復で世界的に有名なイタリアのゾイク社だった。 ここから、緻密で膨大な作業が始まった。まずはそれぞれの骨を洗浄し、固めなければならない。それから骨格全体を巨大なジグソーパズルのように組み立てる。2年後、この生物は本物かを確認するために正式鑑定を受け、ようやく出品の準備が整った。 そこでアレクサンドル・ジケロが登場する。彼の目的は二つ。買い手を見つけること、競り値をつり上げることだ。この目的を達成するために、彼は一連の流れを「イベント化」した。まず、ビッグ・ジョンを一般大衆に公開することから始めたのだ。 そのトリケラトプスは、華やかなパリの中心地、マレ地区のアルシーヴ通りに展示された。成功は保証されていた。普段は恐竜ショーよりもファッションウィークに慣れているような人々が、ビッグ・ジョンを一目見ようと押し寄せた。アレクサンドル・ジケロは子供たちの「唖然とした顔」を覚えている。それだけでなく「ビッグ・ジョン」は、他の種類の来場者も魅了した。 「ある日の午後、紳士が店のドアをノックし、自分の上司がトリケラトプスを見たがっていると言うのです。そこで私たちがドアを開けると、なんと入ってきたのはブラッド・ピットでした」。彼は長い時間をかけてあらゆる角度から骨格を観察し、興味を示したが、最終的に競売には参加しなかった。 「ジャレッド・レトも来ましたよ。彼は店の地区一帯を封鎖しろと要求した。さすがに少し大げさでしたね」とアレクサンドル・ジケロは振り返る。

「夢」に、「思いつき」に…

ビッグ・ジョンの競売には、もう一人、より控え目なコレクターが値の競り上げに参加していたが、650万ユーロ以上の値がついたところで諦めた。フランス第386位の富豪フランキー・ミュリエスだ。彼は2023年の夏、雑誌のインタビューでビッグ・ジョンを所有することを夢見ていると語っていた人物だ。 「私の所有するダンピエール城のティールームに、ビッグ・ジョンを置きたかったのです」と打ち明けている。フランス最大級のこの城はシュヴルーズ渓谷にあり、大富豪はその購入と修復作業に全財産の3分の1(1億ユーロ以上)を費やし、一般公開した。以前獲得し、いまは城の翼棟に鎮座しているモササウルスの頭蓋骨を眺めることが、せめてもの慰めになるだろう。ちなみにそれは、レオナルド・ディカプリオが酔ったラッセル・クロウに売ったものとほぼ同じものだ。 なぜ金持ちたちは恐竜を買いたがるのだろう? 子供の頃の夢を満たしたいという欲求があるのだろうか? それともただ客を感心させたいだけなのだろうか。実はきっかけはもっと単純なことだったりする。

Matthieu Aron