トンネル覆工の厚さ不足問題、施工者に損害賠償を請求へ

坂本 曜平
 

日経クロステック/日経コンストラクション

 
 
和歌山県内の道路トンネル工事で覆工コンクリートの大幅な厚さ不足が判明して再工事が必要になった問題で、県は工事を請け負った建設会社への損害賠償請求を検討している。当初の計画通りに開通した場合の交通量を算定するなどして、開通延期に伴う逸失利益を算定する。供用開始時期のめどが立った時期に請求する考えだ。2024年3月14日の県議会建設委員会で明らかにした。

施工不良が発覚した八郎山トンネル(仮称)で覆工コンクリートを撤去している様子(写真:和歌山県)

施工不良が発覚した八郎山トンネル(仮称)で覆工コンクリートを撤去している様子(写真:和歌山県)

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 施工不良があったのは、県道長井古座線の一部として整備する全長約711mの八郎山トンネル(仮称)だ。浅川組・堀組JVが20年9月~22年9月の工期でNATMによって施工。22年12月に照明設置工事の施工者が覆工コンクリートを削孔したところ、厚さ不足が発覚した。

照明設置のために削孔したトンネル天井(写真;和歌山県)

照明設置のために削孔したトンネル天井(写真;和歌山県)

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 調査の結果、トンネル全長の約7割で厚さが不足していると判明。設計値の30cmに対して3cmの箇所もあった。その他、掘削線形や鋼製支保工の設置位置のずれ、吹き付けコンクリート厚の管理不良なども明らかになった。

 県はさらに、3次元測量や地中レーダー探査などで詳細調査を実施した。20mごとに測点を設けて支保工幅(スプリングラインにおける支保工前面の内空幅)と天端の位置を測定した。その結果、54地点中49地点で設計値を満たしていないことが判明。幅は最大で369mm設計値より狭く、天端はトンネル断面で見て左右に207mm、上下に144mmずれていた。

支保工幅の調査概要(出所:和歌山県)

支保工幅の調査概要(出所:和歌山県)

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 調査結果を受けて県は、掘削以外の全ての工事をやり直すことを決めた。補修工事は浅川組が担い、費用は全額、同社が負担する。当初の計画では23年12月に供用を開始する予定だったが、約2年遅れる見込みだ。

 県の技術検討委員会(委員長:大西有三・京都大学名誉教授)のメンバーは24年3月28日、再工事が進む現場を視察し、再工事が計画通りに完了するかを確認。今後の作業の進め方などを議論した。

 施工不良に伴う再工事で供用開始が大幅に遅れることについて、片桐章浩県議は県議会建設委員会で「県民の利益逸失に該当する。県として損害賠償請求する考えはあるか」と質問。県建設課の鈴木伸幸課長は「損害額の算定方法や請求方法について弁護士と相談している」と回答した

 

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