ウクライナは、戦争のさなかであり、大きな危機でありながらも、
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高官更迭続くウクライナ、政権内不和か 「ロシアと変わらぬ」危惧も
相次いで軍や政権の高官を交代させてきたウクライナのゼレンスキー大統領=トルコのイスタンブールで2024年3月8日、AP
ロシアから侵攻されているウクライナでは、軍や政権の高官が相次いで更迭されている。2月にザルジニー軍総司令官が交代させられたことに続き、3月26日、ダニロフ国家安全保障国防会議書記も解任された。度重なる要職の交代は、政権内部の結束にほころびが生じている可能性も示す。
ダニロフ氏は、ゼレンスキー大統領が議長を務め、主要閣僚が参加する国家安保国防会議を統括。大統領側近と位置づけられながらも、欧米諸国を相手にして歯にきぬ着せぬ物言いを続けてきた。 2月下旬に毎日新聞の取材に応じた際にも「西側諸国はロシアを恐れ過ぎている」と発言。解任理由は明かされていないが、一連の発言が問題視されたともみられている。近く駐ノルウェー大使に転出するとも報じられている。 今回の解任劇に先立ち、ゼレンスキー氏がザルジニー氏を更迭した背景には、その人気を脅威に感じていたとの指摘もある。2023年12月の世論調査で、ザルジニー氏の支持率は88%を記録し、ゼレンスキー氏の62%を上回った。 2割弱の領土がロシアに占拠されている事態を踏まえ、ゼレンスキー政権は当初3月末に予定されていた大統領選を延期させた。今後、どこかの段階で選挙を実施する場合、ザルジニー氏が競争相手になるとの観測が消えていない。この点を考慮したのか、解任された後のザルジニー氏は駐英大使に任じられて、国内から遠ざけられる形となった。 ザルジニー氏の解任を巡っては、戦況についてのメディアへの情報発信などで意見の相違があった可能性もある。 ザルジニー氏は23年11月の英誌エコノミストのインタビューで、「戦況が行き詰まった」と発言したが、ゼレンスキー氏がすぐに否定。両者の不和が明るみに出た。 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は同年12月、大統領府や軍関係者の証言を基に、国内への投資や支援を呼び込むために報道統制を強めて楽観的な戦況を伝えようとする大統領府と、より現実に即した情報発信を主張する軍との間に溝が生まれていると指摘していた。 ゼレンスキー氏への権力の集中を懸念する声も出ている。ウクライナ最高会議(議会)野党のホンチャレンコ議員は23年12月の独有力誌シュピーゲルに「ウクライナではゼレンスキー氏とイエルマク大統領府長官の2人がすべてを決めている」と証言。首都キーウ(キエフ)のクリチコ市長は「私たちはいずれ、1人の男性の機嫌にすべてが左右されるようになり、もはやロシアと変わらなくなるだろう」と危惧した。 国力で劣るウクライナがロシアへの抵抗を続けてこられた理由の一つには、国内が結束してきた点が挙げられている。一方でロシアによる侵攻開始以来、ウクライナ政府はテレビ局を統制下に置き、政権批判が生まれにくい状況となっている。
【ブリュッセル宮川裕章