首都直下地震の経済的被害は4割減らせる、土木学会がインフラ大型投資を提言

安藤 剛
 

日経クロステック/日経コンストラクション

 土木学会は首都直下地震によるインフラ関連の被害総額が約1000兆円に上るとの推計を発表した。一方で、耐震化などインフラ整備に大型投資をすれば、経済的被害を4割近く減らせるとの見通しも明らかにした。藤井聡・京都大学大学院教授が委員長を務める小委員会が中心となってまとめた。

 

土木学会本部(写真:日経クロステック)

土木学会本部(写真:日経クロステック)

[画像のクリックで拡大表示]

 

 小委員会の名称は「国土強靱(きょうじん)化定量的脆弱性評価委員会」。2024年3月14日に発表した「国土強靱化定量的脆弱性評価・報告書」で、首都直下地震などで生じる道路、港湾、建物などの被害額について最新の推計結果を明らかにした。

 対象とした災害は首都直下地震と、東京湾ほか2カ所の湾の巨大高潮、全国109水系の河川に生じる戦後最大規模の洪水だ。主要な交通インフラの被害額については道路だけを対象とし、鉄道施設と空港は「技術的に推計が困難」(藤井教授)なため除外した。

 

■首都直下地震の経済被害を事前の対策で4割減らせる

■首都直下地震の経済被害を事前の対策で4割減らせる

(出所:土木学会の資料を基に日経クロステックが作成)

[画像のクリックで拡大表示]

 

 関東地方南部を震源とする首都直下地震では、道路や生産施設の被災による国内総生産(GDP)の低下を示す「経済被害」を954兆円と試算。住宅被害などの「資産被害」を含めると、被害総額は1001兆円と推計した。事前のインフラ整備などの対策をしなかったと仮定して、進行中の対策を中止し、新規の対策を凍結した場合を想定した。

 その上で、道路、港湾・漁港、建物について21兆円以上の対策を事前に講じることで、経済被害を4割近い369兆円減らせると見積もった。対策事業費のうち公的支出額が21兆円で、民間主体の建物耐震対策については金額を定めなかったため合計額を「21兆円以上」とした。

 道路への対策では、重要物流道路などの整備、橋梁の耐震補強、無電柱化に15兆円を投じる。港湾・漁港については耐震強化岸壁の確保などを実施。建物の耐震化では、1981年5月以前の旧耐震基準で造られた建物を、81年6月以降の新耐震基準に適合させる。

 木造住宅に関する新耐震基準は2000年6月以降、阪神淡路大震災を踏まえた旧建設省の告示で基準適合の要件が厳格化した。土木学会の小委員会は、「2000年基準」と呼ばれるこの点を考慮していない

 

 

首都直下地震の経済的被害は4割減らせる、土木学会がインフラ大型投資を提言 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)