初年度売上高251億円のFビレッジ

 プロ野球・日本ハムの新球場

 

「エスコンフィールドHOKKAIDO」

 

を核として、23年3月に開業した北海道ボールパークFビレッジ。

 

その運営会社であるファイターズ スポーツ&エンターテイメント(北海道北広島市)は24年2月、

 

初年度となる23年の営業利益が36億円になったと発表した。

 

 

 

 コロナ禍前の札幌ドーム時代の営業利益は毎年、数億円から10億円程度で推移していたので、大幅に増えたことになる。売上高も23年は251億円となり、19年の札幌ドーム時代の157億円と比べて1.6倍を記録した。内訳を見ると、広告収入が1.8倍、チケット収入が1.5倍などとなっている。

エスコンフィールドHOKKAIDO。可動屋根の面積は米大リーグのテキサス・レンジャーズの本拠地、グローブライフ・フィールドを抜いて世界一。写真右端の3塁側外野席には、レストランや温浴・サウナ施設、ホテルなどを備えた球場一体型複合施設、TOWER 11(タワーイレブン)がある(写真:吉田 誠)

エスコンフィールドHOKKAIDO。可動屋根の面積は米大リーグのテキサス・レンジャーズの本拠地、グローブライフ・フィールドを抜いて世界一。写真右端の3塁側外野席には、レストランや温浴・サウナ施設、ホテルなどを備えた球場一体型複合施設、TOWER 11(タワーイレブン)がある(写真:吉田 誠

 

 

Fビレッジへの23年3~12月の来場者数は346万人で、道外からの来場者が3割を占める。来場者の平均滞在時間は、試合を観戦しない人でも3時間超。球場以外に商業施設やホテル、レストランなどを備えるからだ。試合がない日も催す球場ツアーや飲食、音楽イベントなどの開催も奏功した。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、球場の所在地である北広島市に対して直接効果が年間500億円超、北海道に対しては波及効果を含め年間約1000億円の経済的価値があるとはじいた。Fビレッジでは今後、北海道医療大学や付属病院、ホテルを新たに誘致する計画が進んでいる。

 さらに、28年にはJR千歳線にFビレッジと隣接する新駅が開業し、駅周辺の開発も進む予定だ。運営会社は28年の年間来場者数約700万人を目指し、追加の売上高として約60億~70億円を見込む。球場だけでなく、複合型エンターテインメント施設として地域の価値を高める運営会社は、「世界がまだ見ぬボールパークをつくろう」と呼び掛けている。

アジア最高額がついた愛知県新体育館の命名権

 もう1つ、明るい話題を紹介する。

 コンセッション方式で25年の開業を目指す愛知県新体育館は、英金融サービスのIGグループがネーミングライツ(命名権)を取得し、「IGアリーナ」という名称になる。期間は25年から10年間。愛知県や運営権者の愛知国際アリーナ(名古屋市)が24年2月に発表した。

 金額は非公表だが、リリースによると「日本およびアジア地域における最大規模のアリーナネーミングライツ契約」になる。なお、アリーナ以外のスタジアムを含めたこれまでの国内最高額は「エスコンフィールドHOKKAIDO」の推定年間5億円前後といわれている。

 愛知県新体育館のネーミングライツでは、運営権者が契約額の全額を手にする。運営権者が県に支払った運営権対価は税込みで約200億円。ネーミングライツも収入の一部に見込んでいた。集客可能性が高い施設は、ネーミングライツも高く売れるという事例だ。

札幌ドームは年2.5億円で応募なし

 一方で、プロ野球・日本ハムの本拠地ではなくなった札幌ドームには暗雲が漂う。札幌市が所有し、筆頭株主として市も出資する札幌ドーム(札幌市)が指定管理者として運営・管理する施設だ。野球開催時は人工芝で、サッカー開催時には屋外で育てた天然芝のステージをドーム内に引き込む。斬新な仕掛けが開業当時に話題となった。

01年に竣工した札幌ドーム。札幌市が02年のサッカー・ワールドカップ開催に向けて整備した(写真:寺尾 豊)

01年に竣工した札幌ドーム。札幌市が02年のサッカー・ワールドカップ開催に向けて整備した(写真:寺尾 豊)

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 運営会社は24年1月、札幌ドームのネーミングライツを年間2億5000万円以上、2~4年の複数年契約で募集を開始。しかし、期限の2月末までに買い手が現れなかったため、募集期間を延長することになった。

 

 

 

 

運営会社がまとめた札幌ドーム管理運営業務計画書によると、23年度は約2億9000万円の赤字を計上する見通し。24年度以降はサッカーJリーグの北海道コンサドーレ札幌の試合開催や、ネーミングライツの販売などで黒字化を想定するものの、頼みのネーミングライツが決まらない。

 23年10月の札幌市議会決算特別委員会では、市が負担する札幌ドームの設備改修費として、5年間で48億円を見込んでいるとの説明があった。市は市債の償還や支払利息なども負担している。

 こうした状況を受けて議員からは、今後の経営が安定しない場合、札幌ドームの運営会社の交代や民間企業への売却を求める意見が出た。札幌ドームはプロ野球のためだけに造られた施設ではないが、重要なコンテンツの1つを失い、今後の運営を心配する声が後を絶たない