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愛知県長久手市の愛・地球博記念公園内
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「魔女の家」や「ハウルの城」に建築好きもうなる、ジブリパークの本格再現
菅原 由依子
日経クロステック/日経アーキテクチュア
「魔女の家」や「ハウルの城」に建築好きもうなる、ジブリパークの本格再現 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
愛知県長久手市の愛・地球博記念公園内で県が整備を進めてきた「ジブリパーク」の2期工事が完了し、2024年3月16日に「魔女の谷」エリアが開業した。映画「魔女の宅急便」「ハウルの動く城」など、スタジオジブリ作品の中でも主に魔女をテーマとした映画の世界観を再現したテーマパークだ。これで計画されていたジブリパークの5エリアが全てそろった。
愛知県長久手市の愛・地球博記念公園内で県が整備を進めてきた
「ジブリパーク」の2期工事が完了。
写真は、エリア内に建てられた「ハウルの城」(写真:日経クロステック)
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映画「魔女の宅急便」で主人公キキが修行前に暮らしていた、「オキノ邸」を再現した(写真:日経クロステック)
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公園は約194万m2と広大で、「魔女の谷」は約2万8900m2を占める。エリア内の池を囲むようにして、映画に登場する家やパン店などを再現した28棟、メリーゴーラウンドなど工作物4基を新たに整備した。
2024年2月28日に行われた施設説明会の資料。敷地はゆるやかな斜面地で、池の周りを囲むように施設を配置した。配置のイメージも、ランドスケープを学んだ宮崎吾朗監督がディレクションしている(写真:日経クロステック)
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ジブリパークでは初となるメリーゴーラウンド。ただの馬ではなく、よく見ると映画のキャラクターたちがいくつかまぎれこんでいる(写真:日経クロステック)
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制作現場を指揮した宮崎吾朗監督は2月28日の施設説明会で、「『サツキとメイの家』を愛知万博で建ててから20年がたつ。今後、20年も100年もあっという間だと思える時期を迎えられるといい」と期待を述べた。
施設説明会の様子。左が愛知県の大村秀章知事、右が宮崎吾朗監督(写真:日経クロステック)
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宮崎監督はランドスケープアーキテクトの顔も持ち、「建物としての説得力」を追求した。設計した日本設計建築設計群チーフ・アーキテクトの大山政彦氏は、「来場者が触れて体験できるようにFRP(繊維強化プラスチック)でなく、実際の建材でファンタジーの再現が求められた」と語る。施設の施工は鹿島が担当した。
建築関係者に注目してもらいたいのが、「魔女の家」だ。
映画「アーヤと魔女」に登場し、主人公アーヤが引き取られた家を再現している。外壁は英国の石積みを日本の職人に伝えて細部まで表現した。
映画「アーヤと魔女」に出てくる「魔女の家」を再現した家(写真:日経クロステック)
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奥の部屋では、英国近代以前の郊外で農村住宅や納屋などに見られた伝統的なクラックトラス構法も採り入れた。「全て鉄骨で建ててクラック(曲がった柱や梁)を飾りにすることもできなくはないが、宮崎監督の追求するリアルに応え、構造材として使用している。クラックは鉛直荷重を負担しており、国内の新築で実現した例は初ではないか」と大山氏は説明する。
魔女ベラ・ヤーガの作業部屋。「映画の舞台が昔の英国郊外であると想像して、その時代の建築を再現するためにクラックトラス構法を勉強し直した」と大山氏は語る(写真:日経クロステック)
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家具に隠れた壁まで全て本物同様に仕上げており、建築として普通に建ててから展示する家具を入れるようにした。「他にも欧州の建築を再現するのに広葉樹が求められるなど素材選びも容易ではなかった。ウッドショックの時期と重なり、建材の調達には難儀した」と大山氏は振り返る。
「魔女の谷」エリアを見渡す。左手前から映画「ハウルの動く城」の「ハッター帽子店」、エレベーター塔、映画「魔女の宅急便」の「グーチョキパン屋」をイメージした建築だ。エレベーター塔は映画にない建物で、設計者たちが世界観を想像しながらつくり上げた(写真:日経クロステック