竹中工務店が万博「三菱未来館」の地盤改良でCO2を固定する新工法

星野 拓美

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

未来社会の実験場」をコンセプトに掲げる2025年国際博覧会(大阪・関西万博)。開幕に先駆けて、竹中工務店が新工法「CUCO-CO2固定地盤改良」を民間パビリオンの地盤改良工事に初適用した。セメント系固化材を地盤に混ぜる際、二酸化炭素(CO2)を固定した微粉末を加えることで、施工時のCO2排出量を実質削減するグリーン技術だ。24年1月31日に発表した。

 適用したのは、竹中工務店・南海辰村建設・竹中土木JV(共同企業体)が施工を手掛ける「三菱未来館」の敷地。建物の外周部分で大型重機用仮設走行路として使用する約600m2のうち、約200m2を新工法で施工した。

「三菱未来館」の外観イメージ。三菱グループ31社で構成する三菱大阪・関西万博総合委員会が出展するパビリオン。建物は鉄骨造、一部木造。地下1階・地上2階建てで、延べ面積は約2100m<sup>2</sup>(出所:三菱大阪・関西万博総合委員会)

「三菱未来館」の外観イメージ。三菱グループ31社で構成する三菱大阪・関西万博総合委員会が出展するパビリオン。建物は鉄骨造、一部木造。地下1階・地上2階建てで、延べ面積は約2100m2(出所:三菱大阪・関西万博総合委員会)

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 新工法は、地表面全体を掘り起こし、セメント系固化材を添加・撹拌(かくはん)して締め固める表層改良工法をベースにした。セメント系固化材を添加する際に、CO2を吸収したコンクリート用材料の微粉末(CCU材料)を追加で投入して均等に混ぜ合わせる。これにより地盤改良体にCO2を閉じ込める。従来工法に混合する材料を追加するだけなので、施工効率が変わらないのが特長だ。

 今回は約6000kgのセメント系固化材に対し、約1800kgの微粉末を混ぜた。地盤改良体の中に閉じ込めたCO2の量は約180kgで、微粉末を投入しない従来工法に比べてCO2排出量を実質約5%削減した。

 微粉末の大きさはおよそ200μm以下。コンクリート構造物の解体材(コンクリート解体ガラ)などに含まれるカルシウム分にCO2を固定したものだ。破砕したコンクリート解体ガラなどから微粉を取り出し、水中で撹拌しながらCO2ガスを送り込むことで製造する。

 今回は圧縮強度27N/mm2のコンクリートを打設し、これを解体・破砕・炭酸化することで微粉末を製造した。竹中工務店技術研究所建設基盤技術研究部の河野貴穂地盤・基礎2グループ長は、「今回の適用は研究の一環であるため、使用した微粉末の特性を明確にして後から検証しやすいようにした」と説明する。

セメント系固化材と共に二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)を固定した微粉末を混ぜることで、地盤改良体にCO<sub>2</sub>を貯留する(写真:竹中工務店)

セメント系固化材と共に二酸化炭素(CO2)を固定した微粉末を混ぜることで、地盤改良体にCO2を貯留する(写真:竹中工務店)

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セメント系固化材と微粉末を撹拌(かくはん)した地盤を締め固める(写真:竹中工務店)

セメント系固化材と微粉末を撹拌(かくはん)した地盤を締め固める(写真:竹中工務店