大手建設コンサルがリレー式で被災調査、技術者不足の能登町を救う

佐藤 斗夢

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

 

大手建設コンサルがリレー式で被災調査、技術者不足の能登町を救う | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

 

能登半島地震の初動対応では建設会社の活躍の陰に隠れがちだが、建設コンサルタント会社も発災直後から自治体の要請を受けて技術支援に乗り出している。石川県能登町では大手を中心に各社が「リレー式」で連係し、道路や橋梁、上下水道などの被害の調査と応急対応を続ける。今回のような1つの市町村に対して大手建設コンサル総出での大規模調査は初だという。

石川県能登町からの要請で実施した支援概要と担当した建設コンサルタント会社(出所:取材を基に日経クロステックが作成)

石川県能登町からの要請で実施した支援概要と担当した建設コンサルタント会社(出所:取材を基に日経クロステックが作成)

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建設コンサルタント会社による現地調査の様子。左の2人は大日本ダイヤコンサルタントの社員(写真:大日本ダイヤコンサルタント)

建設コンサルタント会社による現地調査の様子。左の2人は大日本ダイヤコンサルタントの社員(写真:大日本ダイヤコンサルタント)

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 能登町は2024年1月3日、インフラのアセットマネジメントの普及・発展を目指す会社・自治体などが加盟する「日本アセットマネジメント協会(JAAM)」との災害協定に基づき、支援要請を出した。同町には土木技術職員が数人しかおらず、被害調査などに人員を回せる余力がなかった。地元の建設会社への道路啓開の指示や、避難所の運営などに手いっぱいとなっていた。

 JAAMは同町との21年11月の協定締結を機に、加盟各社の技術者を派遣してインフラの調査を定期的に手掛け、町職員との信頼関係を築いてきた。そのため、発災後に町と連絡が取れるようになった1月2日早朝には町の担当職員からJAAMの戸谷有一理事へ声かけし、支援に向けた調整を実施。7日に現地での活動を開始した。

 JAAMの戸谷理事は、「平時からコミュニケーションを継続していたことが奏功した」と話す。

 現地調査では、町道の主要路線の被災状況の記録から始めた。第1陣のオリエンタルコンサルタンツは記録用に、同社のグループ会社が開発した地図情報クラウドサービス「SOCOCA(ソコカ)」を利用した。位置情報を踏まえて被害と対応状況をデータベース化するシステムだ。SOCOCAを使えば、町職員は庁舎にいながら被害状況が分かる。

 特筆すべきは第2陣以降の会社もSOCOCAに一本化した点だ。異なる会社間で情報を登録・共有できるようになった。

石川県能登町でのSOCOCA活用イメージ(出所:オリエンタルコンサルタンツ)

石川県能登町でのSOCOCA活用イメージ(出所:オリエンタルコンサルタンツ)

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 SOCOCAでは被害が大きいと判断した箇所に、通行止め用のコーン標識を設置するなどした対応状況も登録できる。当初、町は通行止めの対応がほとんどできておらず、調査先に向かっても現場へたどり着けないことが多かったという。

 SOCOCAに通行止めの情報を反映した後も、電力関係の復旧工事と鉢合わせするなどして、調査を中止せざるを得ないことが多々あった。「復旧を担う様々な工事関係者と情報連係できる仕組みがあったらよいと感じた」。八千代エンジニヤリング技術管理本部DX推進室の畑浩太室長はこう語る。

 地元住民との間でも情報連係の重要性を実感することになった。主要ではない町道などの道路陥没では、地元住民自ら注意喚起している箇所が複数あったものの、道路の距離が長く、町で記録するのに対応しきれなかったという。パシフィックコンサルタンツ交通基盤事業本部の福澤伸彦室長は「地元住民が被害状況を登録できるシステムが必要だ」と考える。

地元住民が注意喚起のために、主要ではない町道の陥没箇所の前後に設置したと見られるビールケース(写真:パシフィックコンサルタンツ)

地元住民が注意喚起のために、主要ではない町道の陥没箇所の前後に設置したと見られるビールケース(写真:パシフィックコンサルタンツ