如何に、日本の土建屋・ハウスメーカーたちが、

 
”手を抜こうとしているかの証明”
 
「消費者は、彼らは信じてはだめです」

 

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ZEH水準の等級5で断熱は十分か、国交省のプログラムで検証

前 真之

 

東京大学大学院准教授

 

 

 

改正建築物省エネ法で2025年4月から適合義務化となる省エネ基準は、断熱等級4に相当する。この上位等級が22年に新設された。前真之・東京大学大学院准教授が上位等級の詳細と省エネ効果を解説する。

(イラスト:ナカニシ ミエ)

(イラスト:ナカニシ ミエ)

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 寒さが本格化し、住宅の断熱性能の優劣について身をもって感じる季節がやって来た。建物外皮の断熱・気密は、室内の温熱環境を穏やかに整え、暖冷房に必要な熱を減らすという、他では代えがたい重要な役割がある。残念ながら、日本では断熱・気密の規制が著しく遅れてきた。

 断熱の基準は1999年に等級4が定められて以降、実に23年間にわたって放置されてきた。2022年になってようやく断熱等級5・6・7が追加されたが、25年に適合義務化となるのは、

 

この上位等級ではなく等級4である事実は、

 

日本の断熱軽視を象徴していると言わざるを得ない

 

今回は、断熱等級の詳細と国が示すその効果のウソを検証していこう。

 

 

 

上位等級はHEAT20がベース

 住宅の断熱性能は、外皮平均熱貫流率「UA値」で評価される。UA値は数値が小さいほど断熱性能が高い。新設された断熱等級5・6・7は、「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会(HEAT20)」が定めた住宅外皮水準であるG1・G2・G3を基にしている。

 

 

 

2022年に新設された断熱等級5・6・7は、ベースとなったHEAT20のG1・G2・G3よりも一部の地域でUA値が大きく、低断熱化されている。建設数が多い首都圏を含む6地域の仕様を他の地域でも適用したい住宅供給事業者の意向が強く働いたと推測する(出所:公表資料などを基に筆者が作成)

2022年に新設された断熱等級5・6・7は、ベースとなったHEAT20のG1・G2・G3よりも一部の地域でUA値が大きく、低断熱化されている。建設数が多い首都圏を含む6地域の仕様を他の地域でも適用したい住宅供給事業者の意向が強く働いたと推測する(出所:公表資料などを基に筆者が作成)

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住宅の断熱性能は主に、地域区分ごとに定められた外皮平均熱貫流率「UA値」で評価される(出所:公表資料などを基に筆者が作成)

住宅の断熱性能は主に、地域区分ごとに定められた外皮平均熱貫流率「UA値」で評価される(出所:公表資料などを基に筆者が作成)

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 断熱等級とHEAT20の基準値(要求値)を比べてみると、断熱等級のUA値がHEAT20より一部の地域で大きく、低断熱化されている。特に、「誘導基準」であり、いわゆるZEH水準の断熱等級5については、準寒冷地の3・4・5地域において、HEAT20のG1よりも著しく低断熱に設定されている。

 

 

 この「低断熱化」は、建設数が多い6地域と「同じ仕様で済ませたい」という、住宅供給事業者の強い要望があったためと、筆者は推測している。

 

全国に広く住宅を供給する事業者は、たまにしか建てない地域にも6地域の“標準仕様”を流用して、余計な手間をかけたくないのだろう。

 

しかし、寒冷な地域こそ断熱強化は必須。4地域の秋田から7地域の鹿児島まで同じUA値で合格となるような等級5では、明らかに力不足だ。

 

 

 

 

住宅の外皮平均熱貫流率(UA値)基準の国際比較。日本の省エネ基準である断熱等級4は世界的に著しく劣っていることが分かる。いわゆる「ZEH水準」の等級5も準寒冷地で不足が顕著だ(出所:国土交通省の資料に筆者が加筆)

住宅の外皮平均熱貫流率(UA値)基準の国際比較。日本の省エネ基準である断熱等級4は世界的に著しく劣っていることが分かる。

 

いわゆる「ZEH水準」の等級5も準寒冷地で不足が顕著だ

(出所:国土交通省の資料に筆者が加筆)

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 断熱等級のUA値を、海外の基準とも比較してみよう。そもそも、等級4は断熱性能が低過ぎて論外。等級5も、準寒冷地である3・4・5地域で、各国の基準に見劣りしている。全地域で各国基準に見劣りしない等級6以上を目指すべきだ

 

 

 

ZEH水準の等級5で断熱は十分か、国交省のプログラムで検証 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)