Miles TAD's Blog

 

 

MilesTAD’s Blog (hatenablog.com)

 

9年ほど前、オーディオ仲間と連れ立って千葉県の「日東紡エンジニアリング(現在の日本音響エンジニアリング)」の開発拠点を訪問したことがありました。 彼らが開発した「柱状拡散体」がどんなものか、その性能と効果を知るためです。 下記の写真がメインのデモ・ルームで、当日ここで試聴が行なわれました。

 

 一聴して感じられたのは、直接的な反射が感じられない割には高域がほとんど減衰していないこと、ライブ演奏のCDを聴くと、聴衆の拍手が前方から自分の両サイド、そして後方まで回りこむ独特の音場感にとても新鮮な印象を覚えました。

 

 当時はまだ、現在の主力製品「ANKH」は製品化前で「SYLVAN」という少し小型の製品のみが販売されていましたが、デモ・ルームにあったのは現在の主力製品である「ANKH」の奥行きが600ミリもある特注品、これがほぼ360度周囲に配置され、個人の部屋では物理的にも予算的にも実現は難しい環境で試聴できたことになります。

 

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日東紡エンジニアリングの試聴室

 試聴が終わって(試聴の最中も時々席を立って)、この「柱状拡散体」をつぶさに観察してみると、これを自作するのはそれほど難しくはないという感じ、モチベーションが高まって来ました。しかし不定形に配置された「丸棒」がどれくらいの位置精度で並べられているのか、材質は何なのか、高さはどれくらい必要なのか、と疑問が湧いて来ました。

 

 試聴が終わって、テーブルを囲んで質問を受け付けてくれたので「丸棒の材質は何なのか」を聞いてみると「タモの集成材」とのこと、共振しない木材であればタモにこだわらず何でも構わない、との回答を得ました。

 さすがに丸棒の配置寸法を聞くことは避けましたが、「木工好きのオーディオ・ファン」であれば一度は自作にトライしてみたくなる製品であることは現在でも変わりません。

 

 構造的にも簡単であるし、無垢の木材(タモの集成材)を使って製作し、最後にオイル・ステインを塗って磨き上げるのはいつも楽しいし、よお~し、この「柱状拡散体」を自作してみよう。

 

次期プロジェクトが決まりました。

 

 

 

 

 

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初めて「日東紡音響エンジニアリング」を訪問してから9年も経過し、現在は社名が変って「日本音響エンジニアリング」となっていますが、主なスタッッフも同じで販売している「柱状反射体」も「ANKH」のシリーズが増えていますが、「SYLVAN」も継続販売されています。

 

 自作「ANKH」の設計を始める前に、9年前は製品化されていなかった「ANKH」の実物を見るために、試聴予約の電話を入れて、秋葉原のテレオンに行って来ました。

 テレオン秋葉原店のビルの2階にも展示はされているのですが、5階にある専用の試聴室(下の写真)で、スタンダードな平型「ANKH-1 ST-15」を試聴させてもらいました。

 

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 初めて見る製品版の「ANKH-1 ST-15」は、かなりガッシリとして重さも34kgとのこと、自作する際には簡易の組立ジグを製作した方が精度が出せるな、などと考えながら試聴を始めました。

 

 9年前の日東紡Engで聴いた時は、周囲360度に「ANKH」が設置された圧倒的な環境だったので比較するのは難しいのですが、この日は2台の「ANKH」を置いたり外したり、1台を前に残して後側に1台を設置してみたり、という比較をして、1、2台でも納得できる効果が確認できました。

 

 この日に得た情報として、コーナー型「ANKH-2 CO」を天井付近まで伸ばせば、天井近くのコーナーに設置するはアンク4という小型の製品は必要がないだろう、とのことでした。

 また、テレオンでは10%引きでの販売で、まとめて買えばもう少し価格交渉もできるかも、という雰囲気でしたが、やはり依然として高価な製品であることは確かです。

 

「柱状反射体」に関しての特許文献を調べてみると、2008年に最初の出願がされていることが分かります。Abstractによると「直径が異なる柱状反射体を、音源に対して近くに高い周波数の反射面を形成し、遠くに低い周波数の反射面を形成する様に設置条件を算出する。配置した柱状反射体の内部空間を利用した吸音機構により、低域の定在波対策として効果的である。」とのこと、そしてClaimsには「柱状の反射体の位置の算出、そして反射と吸音」についての記載があるので、反射だけでなく吸音効果もあることが分かり、ますます製作してみたくなって来ました。

特に両コーナーに設置するコーナー型「ANKH-2 CO」が一番興味深いです。

 

 同じ特許文献のDescription を読んでいくと下記のテーブルがあり、柱状反射体(丸棒)の直径と各々が反射可能な周波数の解説があります。 現在市販されている「ANKH-1 ST」のタモ材丸棒の直径に関しては下表の下から3段目までがそのデータの様です。

 

 興味深いのは最上段、直径400ミリの太い丸棒を使っても「175Hz」までが限界で、さらに低い周波数帯域を狙おうとすると、もっと太い丸棒が必要で、この設計では「両コーナー」に収まりません。

9年前の日東紡Eng訪問時の記憶では、タモ材色の「ANKH」の下に黒色の「吸音箱」があったと覚えていますので、寸法的に難しい場合は通常の吸音材を使った吸音箱を使うのが良いのかと考えます。

 

イメージ 2

 

 いろいろ考えを巡らせてプランを練っていると、ますます自作へのモチベーションが高まって来ました。やはり自作で進めることにします

 

 

 

 

 

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コーナー型「ANKH-2 CO」の実物は、秋葉原のテレオン2Fで見ましたが、じっくり裏側の写真や寸法を採取した訳ではないので、今ひとつ設計のコンセプトがまとまりません。

 

 アフロ・オーディオのサイトで裏側の写真を見つけました。

これを見ると、コーナーの一番奥は断面が「円の4分の一」となっていることが分かります。 つまり特許文献のDescriptionにあった「157Hzを反射させる場合」は直径400ミリの丸棒を使い、200ミリの奥行きで済む訳ですが、実際の「ANKH-2 CO」の写真では、そんな太い丸棒は使われていない様です。

 

 下の写真を見ると、大体140~150ミリ直径の丸棒を「4分の一」に縦割りした寸法に見えます。この直径から計算すると反射吸収できる周波数は「480Hz」程度となり、低い周波数まで反射吸収できる訳ではないことが分ります。

 

イメージ 1

 

 よって、現在の製品として販売されている「ANKH-2 CO」をそのままの寸法で自作しただけでは、9年前の日東紡エンジニアリングで聴いた音にはならないはずです。

あの時の前後左右周囲のANKHは奥行きが600ミリありましたので、現在の製品とは別物と言えます。 そこまで厳密に追求するよりも、まずは第1作を設計していくことにします。

 

 主な構成部品はすべてタモ集成材です。この丸棒は、一般のインテリア材料で、「手すり」や「インテリア材料」で検索すれば安価なものが見つかります。 階段の「手すり」に使う「直径32ミリ、あるいは35ミリ」の丸棒は、いろいろな材質から選べます。 材質は「タモ」が一般的ですが、全体のコストを下げるなら、外側の目に付く部分だけに「タモ材」を使い、後側は「ピール材」などでも良いと思います。全体を黒色に塗ってしまうつもりなら、全部を「ピール材」にすれば半額程度になります。

 

 上下のプレートは「20mm厚」のこれもタモ集成材です。底板のプレートは木ねじで固定されていて、天板プレートは外部からネジが見えない様に「鬼目ナット」が埋め込まれています。

固定するのは特に難しくありませんが、14本の直径の異なる丸棒を全部「垂直に立たせる」のが一番難しく、なまじな手法では市販品と同等な品質にはなりません。あらかじめ組立用ジグを設計製作しておく方が無難だと考えています。

 

 「全高」をどれくらいにするかで必要な材料の総数が決まりますが、単位長さ当りのコストが安いのは一番長い「全長4000ミリ」です。 ホームセンターで2mものを買うよりインテリア業界の専門店から購入すれば、例えば直径35ミリのタモ材の丸棒が3千円少々で購入できるので、トータルコストは安く出来ます。

 

 現在市販されているANKHの全高は、1200~1800ミリが標準です。 自分で作るのなら、床から天井までの高さ(3m)に合わせて「1本モノ」で製作すべきだろう、天井もより高く感じられるだろうし、と図面を描いてみました。 しかし、この部屋で製作し、完成して引き起こし、コーナーまで運んで設置する、と想定したら、あまりに巨大で重量もあり過ぎて危険であることが分かりました。

  

 よって市販のANKHの様に「1800ミリ高(41kg)」を標準で製作し、これに「1000ミリ高(34kg)」程度のANKHを製作して上に載せる、という設計にする予定です

 

 

 

 

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低域をさらに改善しようという目的で「グラスウール32 kg/m3(寸法:1800 x 900 x 50厚)」が合計10枚(5枚組/セットx2箱)届きました。現在、大きな梱包が2個、オーディオルームに置かれています。 

開梱する前に眺めていたら、今までこんな大きな寸法の吸音パネルの類を製作したこともないし購入したこともなかったので、これでF特や残響時間がどのくらい変化するのか、どの様な影響/悪影響があるのか、設置場所をいろいろ変えたりして測定をしてみよう、と思いつきました。

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32kg グラスウール 2セット
 
 
 
 
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前壁を石井式壁構造に改造(3)

 

寒いのが嫌いなDIY大工は、冬の冷たい北風が吹いているとモチベーションが下がります。曇天の寒い日は、角材を1本切るのにも庭に出るのをためらってしまうし、少し疲れて来るとすぐに休憩してコーヒーを一杯、そのままJazzを聴き始める、、、そんな気ままなDIY大工なので一向にペースは上がりません。

 それでも何とか気持ちを奮い立たせ、15ミリ厚のラワン合板を取り付けて行きます。 今回は角材の寸法が「45x45」で、32kgグラスウールの厚みが「50ミリ」なので、多少(5ミリ程)グラスウールが圧縮された状態になります。

 当初は、低域のエネルギーを吸収させるなら多少でも隙間を空けてグラスウールの動きがあった方が良いのではないか、などと考えましたが、石井さんの本には「グラスウールを押し(ダンプ)気味にし、15ミリ厚の合板の共振を防いだ方が良い」との記述があったので、それに従うことにしました。

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合板の取り付け

1層目の合板の取り付けが終わったら2層目、そして3層目の合板を取り付けて行きます。
タテヨコの方向を変え、位置をズラし、合わせ目が重ならない様に、振動モードを分散できる様に(気持ちの問題?)と、3x6合板を合計12枚、全部使い切ってのレイアウトです。

一般的に、3x6ラワン合板の概略重量は「厚さ1ミリあたり1 kg」で計算をします。 今回の場合は1枚が15kg、12枚合計で180kgになりますので、音響用の壁としてはまずまずの重量です。

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1層目、2層目そして3層目のレイアウト
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オプティカル・アイソレーション(光絶縁)ー1

 

 

 

 

 

 

PCオーディオを手始めに、デジタル・オーディオを初めて約15年、デジタルノイズやネットワーク関係のノイズには、今まで全く気にしていませんでした。 しかし昨年暮、Roonを導入して以来、光ファイバーケーブルに関しての記事が目に止まる様になり、特にルーター以降のLAN環境で「デジタル・ノイズが臨場感に及ぼす悪影響」を知って、やる気になって来ました。

 実際に何を対策すれば良いのか、、、最近のトレンドは「オプティカルアイソレーション(光絶縁)」らしいです。 電気信号を光の信号に変換すれば、確かにノイズは遮断できるのはエレキに弱い私でも理解できますが「電気を光に変換する時に、DACの様に音質が変化するのでは」という疑問も湧いてきますが、重箱の隅をツツいていると前に進めません。

 ハイエンドクラスのネットワークプレーヤーやハブには「SFP端子」と呼ばれる光通信用の端子が付いている機種もあるので、この場合はこれらSFP端子を光ファイバーケーブルで接続すれば、目的の「光ファイバーで電気的ノイズを遮断」が完成します。

 我家の場合はというと、ネットワークプレーヤーにもハブにもSFP端子は付いていないので、今まで通りのLANケーブル(RJ45)で出し、これを光信号に変換して光ファイバーで送信し、今度は光信号から電気信号に変換して、またLANケーブルで出す、という2台の光メディアコンバーターを一体化したユニットを製作すれば完成です。 

自作する場合と市販の「Fiber Box 2」を比較した分かり易い説明図がネット上にありました。

 2台の光メディアコンバーターは、Amazon で入手できます。他メーカーでも出しています。私は2台セットの製品を揃えました。光ファイバーケーブルも、同じくAmazon で「シングル・モード」のケーブルが5本入1200円で買えます。 

Amazon

https://www.amazon.co.jp/dp/B07795LFWF/?coliid=I32YR1DF9P6WS1&colid=JEIU9PIRX9VY&psc=1&ref_=list_c_wl_lv_ov_lig_dp_it_im

 これら2台の光メディアコンバーターを一体化してシャーシに収めた製品が「Ediscreation Fiber Box 2」で、標準モデルが23万円、上級モデルが40万円となっています。 見た瞬間に買いたくなる様なExcellentな外観デザインではないですが、上記の「電気 → 光 → 電気」の変換をこれ1台で済ませるスグレモノです。

 

「OCXOクロックを採用」とか「ByBee Quantum Purifiers素子を採用」「リニア電源」など、エレキに弱い自作マニアでは実現できそうもないスペックが記載されています。

 

 

さて、どの位のレベルのものが自分で製作できるのか、実験しながら、楽しみながら自作でやってみようと思います。
 

 

追記:

 最下段に「高品質な航空機グレード6061 ソリッド・アルミニウムCNC加工ケースを採用」との記述がありますが、最近の百万円を超える様なハイエンドのオーディオ製品によく見かけるフレーズです。 一般のオーディオマニア諸氏は、すんなり読めるかも知れませんが、多少でも金属材料を知っていれば「奇妙な記述」だと気が付きます。

「航空機グレード6061 アルミ」とのことですが、「6061 アルミニウム」は一般的な切削加工や引抜加工などに適した、加工性に優れた(加工し易い)安価な材料で、決して特別なアルミ素材ではありません。 一般的な用途として、一戸建の家屋やマンション/アパートの窓枠やドアなどに広く使われている「アルミサッシ」の材料が「6061 」です。

同様の記述は日本製の、一千万円を超えるアルミ製エンクロージャーのSPシステムにも見たことがあります。「6061 アルミが航空機グレード??」と機械系の学部の大学生に笑われそうです。

こんな記述をしなくても「Ediscreation Fiber Box 2」は優れた製品ですから、欲しい人は必ず買うでしょう。

良い音を追求している「純真なオーディオ愛好家」を惑わせる様な、ツッコミを入れられる様な奇妙なフレーズは控えた方が良いですね