史上最高値を更新】NYダウは「数十年に一度」の過熱感 ここから暴落する可能性はあるのか?過去の「VIXショック」時の相場環境と比較

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連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で話すFRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長(写真:AFP=時事)

 

 

 

 

 米国市場は、12月のFOMC(連邦公開市場委員会)を終えて、さらなる上昇を見せている。NYダウは連日続伸し、史上最高値を更新している。一方で、テクニカル分析では、過熱感も指摘されているが、はたして今後の見通しはどうなるのか。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんによる、シリーズ「まるわかり市況分析」。森口さんがテクニカル分析の観点から米国株の過熱感について解説する。

 

 

 

  過去最高値を更新する2023年のNYダウのチャート

 

 

 

 

 * * *  アメリカ株が好調を維持しています。12月のFOMC(連邦公開市場委員会)において、FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が2024年の利下げについて言及したことから、市場は利下げへの期待が意識され、株価は上昇を続けています。しかし、短期的な市場の過熱感が歴史的な水準に達していることも見逃せません。  今回は、過去に同様の過熱感が観測された際の市場動向を振り返ることで、年末から年始にかけての相場にどう備えるか、考察してみたいと思います。

 

 

 

 

 

米国株の過熱感を示すRSI(相対力指数)

 今回、特に過熱感が顕著なのは、アメリカを代表する株価指数であるNYダウです。15日までにNYダウは7日続伸し、史上最高値を更新。過熱感を示す主要なテクニカル指標であるRSI(相対力指数)を見ると、12月15日の終値時点で85.25まで上昇しています。  RSIは0から100の間で変動し、70以上は買われ過ぎ(売りシグナルの可能性)、30以下は売られ過ぎ(買いシグナルの可能性)を示します。  アメリカの主要3指数は全て、日足チャートのRSIで70を超えており、米国株式市場全体に過熱感がある状態にあります。中でも特に目立つのがNYダウです。

 

 

 

NYダウの過熱感は歴史的な水準に?

 私自身、NYダウのRSI(相対力指数)が85を超える状態をほとんど記憶に留めていなかったので、調べてみました。  すると、2018年1月26日以来、5年11ヶ月ぶりの高水準であることが分かりました。さらに驚くべきことに、それよりも前にRSIが85を超える事例は1996年(27年前)まで遡る必要があります。  つまり、今のNYダウの状態は数年から数十年に一度見られるほどの過熱感があり、市場の調整が入りやすい状態にあるといえます

 

 

 

 

2018年1月に起きた「VIXショック」

 2018年1月26日にRSIが85を超えた後、いわゆるVIXショックとして知られる急落が発生しました。  この結果、NYダウはわずか10営業日で12%以上下落しました。この時の市場の注目点は主に以下の2つでした。 ・利上げによる金利上昇:アメリカの好調な景気を背景に、金融政策の正常化が進み、政策金利が引き上げられました。 ・米中貿易摩擦:米国財務長官の中国による人民元の意図的な価値下げに関する発言や、中国に対する厳しい税関検査などが、これらの懸念を増幅させました。  これらのリスク要因が重なり、市場のボラティリティが増加。その結果、“恐怖指数”と呼ばれるVIX指数が急上昇し、VIXショックが引き起こされました。

今のアメリカ株には警戒が必要か?

 現在、アメリカ株には歴史的な水準の過熱感が見られ、株価の調整が起こる可能性を指摘する声も増えています。  とはいえ、必ずしも2018年のVIXショックのような大きな下落になるわけではないでしょう。経済指標を見る限り、金融引き締めによってインフレ率は落ち着きを見せてきています。その一方で、雇用や消費は底堅く、ソフトランディング(緩やかな経済着陸)への期待が高まっているからこそ、株価が上昇していると考えられます。  今後の金融政策に関しては、現状でも十分に引き締め的な水準にあるとの発言も見られ、経済やインフレが再び加速度的に強まらない限り、利上げが再度リスク要因になるとは考えにくいです。

 ただし、2024年の米大統領選挙に向けた世論調査では、2018年の米中貿易摩擦拡大の中心人物であったドナルド・トランプ氏が、激戦州でバイデン氏を上回る支持率を獲得しています。もしもこの状況が続けば、市場が米中貿易摩擦の再燃を意識する可能性も否定できませんし、2018年の過去の事例と状況が重なるだけにリスクを感じます。  もちろん、ほかにも新たなリスクが出現する可能性も否定できません。特に、RSIが高水準を示している現在、資金の流れが反転することによる一時的な急落へのリスクは上昇とともに高まっていると言えるでしょう。  史上最高値を更新し続けるNYダウの、年末年始の動向には特に注意が必要ではないでしょうか。 【プロフィール】 森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中

 

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