ドジャースの大谷1000億円契約「実はめちゃくちゃおとく」な理由…地元広告代理店「マーケ効果だけで余裕でペイ」
大谷翔平選手が10年1000億円の破格の契約をロサンゼルス・ドジャースと結んだ。目玉が飛び出そうな金額に日本人の多くは驚愕したが、米国ロサンゼルスで広告代理店を20年間営んでいる岩瀬昌美氏によれば「実はめちゃくちゃおとく」なのだという。広告代理店の視点から、これが破格な理由を解説してもらったーー。
東京ディズニーランドが東京にないように、エンジェルスもロスにはない
12月9日、日米が注目した大谷翔平の移籍先が決まりました。私が住んでいる米国カリフォルニア州ロサンゼルスでもTV、オンラインともに大賑わいでした。さて私はここロスにて広告代理店を創業してはや20年以上経ちます。今回の大谷ドジャーズ移籍を広告代理店の目からみて報告をしたいと思います。 まず、以前にもみんかぶにてお話しさせていただきましたが、ここロサンゼルスにとって野球チームと言えば"ドジャーズのみ"です。日本のTVではロサンゼンルスには野球チームが2チームあるなどと紹介されますが、大谷が今シーズンまで所属していたエンジェルスはロスにあってロスにはないのです。エンジェルスは過去アナハイム・エンジェルスと名乗っていたように、彼らはカリフォルニア州オレンジ郡アナハイム市のマイナーなチームです。 ロス近郊であるのは間違いないのですが、繰り返しますが、正確にはロサンゼルスではありません。日本でいえば千葉にある東京ディズニーランドみたいなものです。
神戸と京都の人たちが大阪といっしょくたにされると激怒するのと一緒
神戸と京都の人たちが大阪といっしょくたにされると激怒するように、アナハイムの人たちもロサンゼルスと一緒にされるのを嫌います。ロスの地元民の私としても「アナハイムの方々はロスの人ではない」という認識ですし、アナハイムの方々も同じことを思っているでしょう。 ちなみにエンゼルスは、現在のアルトゥーロ・モレノオーナーの前はアナハイムでディズニーランドを運営しているウォルト・ディズニー社が所有していました。ディズニー社はアナハイムという地名の認知度向上を狙って1997年に、もともとカリフォルニア・エンゼルスというチーム名からアナハイム・エンゼルスに変更しました。 ただ2003年に現オーナーに経営が移り、2年後にはマーケティングの観点から、さらに名称を「ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム」に変更しました。ここでモレノはアメリカではなく、千葉にある東京ディズニーランドと同じ戦略に打って出たのですね!
そんな残念球団エンジェルスが起こした奇跡のバックネット広告
しかし、このモレノの決定にアナハイム市民が憤怒し、訴訟にまで発展しました。結局名称はそのままでしたが、モレノの手腕によりエンゼルスのファン数は増加し、2016年に今の「ロサンゼルス・エンゼルス」という名前になりました。エンジェルスは、本拠地は変わっていないのに、カリフォルニア→アナハイム→ロサンゼルスと10年間で2回も名前を変えた「落ち着きのない」チームでもあります。 さて、そんな事情からも、エンジェルスの試合をちゃんと観たことがあるロサンゼルスっ子は意外に少ないのです。それでも、「大谷の活躍を観戦したい」と大谷が客をエンジジェルスタジアムに引き連れてきたのがここ数年のことです。 これまでちょっと残念だったエンジェルスでしたが、大谷がホームランを打つたびにSNSで何回もその様子が再生されました。日米の大谷ファンたちはそれを食い入るように見てしまうのですが、そうなると自然と打席でスイングする大谷選手の後ろにある広告も視界に入ってきますよね。そんな中で、「くら くら くら」「くら くら くら」と大谷選手の後ろに掲載された ”謎” の日本語広告がSNSで話題を呼びました。
読んでいてクラクラしそうなくら寿司の広告
野球はTVより生で観る派の私。球場に行くと「球場そのものが広告」という具合に、ありとあらゆる広告で溢れかえっています。その「広告汚染」っぷりには、アメリカで総合広告代理店を20年経営している私ですら煩わしさを覚えます。なのでSNSで話題になるまではこの「くら くら くら」と、読んでいてクラクラしそうな広告には気づきませんでした。ですが、たしかにこれは気になります。バックネット広告、目立ちますねぇ……。 この呪文めいた広告は「くら寿司」の広告です。シンプルかつインパクトのある広告のためか、多くの視聴者に深く印象が残ったようで、「くら寿司(の広告が)出ないと打たない説」などとつぶやくファンもいました。 そんな日本で評判のバッター裏の広告ですが、実はこれデジタル・サイネージでなく、よくよく見ると昔懐かしいビニール製のバナーがスロットマシーンのようにクルクル回るんタイプなのですよね。さすが、不人気球団エンジェルスの本拠地……。バックネット広告はグリーンバックにしてハメ込むのが今や主流になっているんですけどね
ぶっちゃけ安かったあのバックネット広告
そしてそのバッター裏の広告のロゴは(あくまでも体感で)8割が日本企業。「バンダイナムコHD」「ヤマダ電機」「船井電機」「ヤクルト」などです。逆にアメリカの会社でメジャーな会社はここにはあまり見られませんでした。例えば、地元の医療機関や韓国のタイヤメーカーなど、ちょっとマイナー感がありました。 実はこのバッターボックス裏の広告枠なのですが、アメリカの高速道路(フリーウェイ)際に立っているビルボード(巨大立て看板)広告などを請け負っている会社も手がけています。ビルボードは4週間契約で数十万円~数千万円とピンキリなんですが、実は球場の広告もビルボードの「キリ」に近い金額です。この金額は高いのか、安いのか……。ぶっちゃけ不思議なくらい「安い」です。 そして球場内に掲載されている固定広告だと日本とアメリカの会社が半々位です。米国系では米国最大の損保「ステート・ファーム」、マクドナルド、地元のカジノなどなど。 さて、その一方でドジャーズはというと……。2023年のコーポレートスポンサーは、米国陸軍、AT&T、バドワイザー、コロナ(ビール)、コートヤード・マリオット、デル、ペプシといった優良企業らがズラリと並びます。日本の会社は……。
大谷がドジャースにもたらす広告効果は年俸以上
これはドジャーズに取って空前のチャンスですよね。12月10日のLAタイムズによると、エンジェルスは大谷効果で毎年1千万ドル~2千万ドル(15億円~30億円)球場内の広告とオンライン広告でゲットしていたようです。
ドジャーズに移籍したことで、
業界では大谷の広告効果は3倍にもなると言われています。
そうすると6千万ドル(90億円)大谷効果で広告代が上がり、
それ以外に帽子やT シャツの売り上げも考えると、
彼の10年7億ドル(1000億円)
の契約を年間千すると1年7千万ドル(115億円)は
彼自身が稼いでくれることになります。
マーケティング効果だけでペイできるのに加え、
放送権や
入場券収入も
加えればお得すぎるお買い物です。
上記のエンジェルスの球場内スポンサーの日本の会社が、
大谷と一緒にドジャーズに移動することは120%確定と広告代理店としては見ています。
この中で来年もエンジェルスに残るのは大谷が移籍前に工場をオレンジ郡に建てたヤクルト、
最近オレンジ郡に米国本社を移設したバンダイ・ナムコだけでしょうか?
この2社は地元貢献を念頭に現在エンジェルスに広告を出稿しているため、
ドジャーズへの鞍替えは考えにくいです。
ちなみにエンジェルス・スタジアムには
Lexus Diamond Clubと言うラウンジがあり、
レクサスに乗って球場に行くと、
球場に近いところに駐車できます。
トヨタ(レクサス)は以前はロス南部に北米本社があったのですが、
ご存知のように今はテキサスに北米本社を移したので、
これをいい機会と思ってドジャースに移動するのではないかと私は思います。
そして、その後釜にはオレンジ郡に本社を移したHYUNDAIが狙っているのではと
ドジャースは好きでもないのにグッズを持っているチーム
さて、日本の企業がドジャーズのスポンサーになることは、エンジェルスより米国マーケットによりリーチしやすくなります。例えばうちの息子はロサンゼルス生まれですが、私が仕事の関係でもらったエンジェルスのチケットを見せても何も興味を持ちません。そもそも野球自体もあまり興味がないバスケ好きで、生粋のLAレイカーズのファンです。そんな息子はなぜかドジャーズの帽子を6~7個も持っています。 本人曰く、ドジャースはグッズにしてもデザインが幅広く、多くのコラボ商品も手がけいているから、だそうです。彼は自分からは率先して試合を観に行きませんが、友達の親がシーズンチケットを持っているので、お呼ばれすることもあるそうです。ちなみに、ドジャーズのシーズンチケットを持っている人は近所にも結構います。ただエンジェルスのシーズンチケットを持っているアメリカ人には今のところ会ったことがありません。 これがここロサンゼルス民のドジャースに対する「ラブ」なんです。ドジャーズのコラボ商品は大谷ファンだけでなくドジャーズファンにマーケットできるので、大チャンスです。 今こそロサンジェルス マーケットに入りたいと思っている方、チャンスです!
岩瀬昌美
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