一足先に規制適用
在宅勤務の普及で離職率増加? 建設コンサルの働き方改革は道半ば
青野 昌行
日経クロステック/日経コンストラクション
佐藤 斗夢
日経クロステック/日経コンストラクション
建設会社に先んじて2020年度から、残業規制が全面適用されている建設コンサルタント会社。早くから対策を進めて一定の成果を上げた会社があるものの、まだ課題は残る。効率的に時間を使えるリモートワークは普及したが、弊害も生じている。
建設コンサルタント会社では、勤怠管理にパソコンのログ(稼働履歴)を反映させるシステムを導入するなど、大手を中心に残業削減へ向けた取り組みが進む。建設会社と比べてリモートワークを活用した柔軟な働き方を取り入れやすい。
日本工営は2012年にWLB(ワーク・ライフ・バランス)推進委員会を設けて対策にいち早く取り組み、残業時間を減らしてきた(資料1)。取り組みを始めたきっかけは、子会社の玉野総合コンサルタント(現日本工営都市空間)から出向し、自社に戻った社員の過労死だ。出向中の過重労働が原因だと認定された。11年3月の所定外労働時間は200時間を超えていた。
資料1■ 日本工営は残業時間が1~2割減
2011年度を1とした、社員1人当たりの年間平均残業(所定外労働)時間の推移(出所:日本工営の資料と取材を基に日経クロステックが作成)
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日本工営管理本部の竹田久和副本部長は、「過重労働を撲滅するには、全社的な意識改革が必要だった」と話す。
そこで、非効率的な業務プロセスの是正を目指した。残業削減に関する施策と目標、達成状況を記した月報の作成を各部署に要請。これを最終的に各部門のトップが確認し、必要な施策を決めた。
それでも課題は残る(資料2)。例えば、一部の社員に業務負荷が集中する傾向は続いている。プロポーザルなどで受注を勝ち取るには優秀な社員に頼らざるを得ず、仕事の割り振りで管理職の負担が増えた。
資料2■ 管理職の負担増が課題に
日本工営が働き方改革に着手した後、浮上した課題(出所:日本工営の資料と取材を基に日経クロステックが作成)
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新型コロナウイルス禍によって多くの会社で定着したリモートワークも、管理職の労務管理増につながっている。移動時間を減らせ残業削減に効果があるといった利点がある一方で、勤務状況が分かりづらく、逆に長時間労働につながりかねない恐れもある。
リモートワークの拡大に対して慎重な姿勢を取るのは、オリエンタルコンサルタンツだ。同社では、在宅勤務による社員間のコミュニケーションの減少などが深刻化していた。
社員へのアンケートによると、コロナ禍でほぼ全社員が在宅勤務をしていた20年から21年ごろにかけて、会社へのエンゲージメント(帰属意識など)が低下。退職者が増えるなど実害が出始めていた。
そこで22年度に、出社と組み合わせる「ハイブリッドワーク」を導入。外部コンサルタントの指導も取り入れ、若手などが意見交換する対面研修を始めた(資料3)。
資料3■ オリエンタルコンサルタンツの若手社員を対象とした対面研修。社員のエンゲージメント(帰属意識)を高める狙いがある(写真:オリエンタルコンサルタンツ
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