現代人にとって生き方の手本のような建物だ」築300年超の日本家屋が、香川県からカリフォルニアへ丸ごと移築されて話題に

クーリエ・ジャポン

築300年を超える庄屋がカリフォルニアに移築された

 

Photo: Jason Armond / Los Angeles Times 

 

via Getty Images

 

 

 

2023年10月、

米カリフォルニア州の教育研究機関

「ハンティントン・ライブラリー」に

移築された庄屋が一般公開された。

 

 

香川県・丸亀で

300年以上受け継がれてきたこの建築は、

なぜ丸ごと米国へ移されることになったのか

 

──米紙「ロサンゼルス・タイムズ」が、

壮大なプロジェクトの裏側を報じた。 

 

 

【画像】ハンティントン・ライブラリーに移築された庄屋の様子

 

 

古い庄屋が海を超える

美術館と庭園が併設された

ハンティントン・ライブラリーには、

日本の庄屋がある。

 

築300年のこの木造の建物はかつて、

丸亀の小さな農村に建っていた。

 

 これがハンティントンの日本庭園に移築された経緯は、

庄屋そのものに負けず劣らず魅力的だ。 

 

移築には8年近くかかった。

 

数々の交渉、

煩雑な事務手続きに加え、

約3000平方メートルの家と庭を解体し、

組み立て直し、

場合によっては新たに作り直す作業には、

熟練の大工の力が欠かせなかった。 

 

代々受け継いできた家をハンティントンに寄贈したのは、

ロサンゼルス在住の横井昭・洋子夫妻。

 

1000万ドルかけたこの計画は

簡単ではなかった。

 

 

バラバラになったパズルを戻すような、

単純な作業ではなかった。

 

 

  瓦屋根ひとつとってもそうだ。

鈍い銀色の瓦は、

日本の大工が作り直す必要があったという。

 

元の瓦は屋根に埋め込まれており、

家を解体するときに壊さなければならなかったのだ。

 

 家のなかでいちばん広く、重要な部屋は、

すばらしい庭に面していた。

 

 

この庭の図面も細心の注意を図って引き直されている。

使われていた石にもすべて番号が振られた。

 

こうした移転のための作業をおこなったのは、

空間デザイナーの山田拓広だ。 

 

庄屋の移築にあわせ、

ハンティントンには

米、

蕎麦、

ごま、

小麦など、

伝統的な日本の農産物を栽培する小さな農園も作られている。

 

農園の周りにはコスモスが咲き誇る。

 

家は農園よりも高いところにあり、

屋根や池に貯まった水が、

農園に灌漑されるようになっている。 

 

 

「文化を紹介することだけがこのプロジェクトの主眼ではありません」

 

 ハンティントンの文化プログラムの副主任である

ホリ・ロバートはそう語る。

 

ホリは、このプロジェクトのはじめから終わりまで携わってきた。

 

 日本の庄屋は主張が少ないながらも、

持続可能性を学ぶ格好の教材だと、ホリは考えている。

 

 

「過去から学び、よりよい未来を作る」こと、

そして「農家が社会の屋台骨であること」を庄屋から学べるのだという。

 

 

 試行錯誤は長く続いた。

 

建物を移築するため、

2年以上にわたって

町、

州、

連邦政府

と交渉し、

必要な許可や占有許可証を取得する必要があった。

 

  コロナ禍では、

解体された庄屋の建材は木箱の中で9ヵ月近く放置されてしまった。

 

ホリは渡米に難色を示した日本の職人たちを説得した。

 

古い木片が、

南カリフォルニアの乾燥した夏の暑さでゆがまないよう、

建物を組み立ててもらわなければならなかったからだ。 

 

 

「丹精こめて修繕してきたのに、それがすべて失われるかもしれない。

そう聞いて、一生懸命にこの仕事をしてきた大工の方々は立ち上がりました。

とにかく不安な時期でしたが、

庄屋を復元することが自分たちの使命だと感じたのです

 

 

 

 

 

江戸時代のはじまりに生まれた建物だった

このプロジェクトは2016年、

 

ロサンゼルスの慈善家、

ジャクリーン・アヴァントの自宅で開かれたパーティーをきっかけに始まる。

 

 

 それは偶然の出会いだった。

ハンティントンの施設に

日本美術のコレクションを寄贈したいと

アヴァントは考えており、

ホリはその話をするために来ていたという。

 

 

会話のなかで、

アヴァントは友人の横井洋子をホリに紹介した。

 

洋子はまもなく日本へ一時帰国するところだった。

 

 「『桜が満開で、すばらしい滞在になるでしょうね』と私は言ったんです」

とホリは言う。

 

 

「すると横井さんは『いえ、私は家の手入れをしないといけないので』とおっしゃいました。

そうして、この庄屋の話になったんです」 

 

この庄屋は戦後に建てられたものだった。

 

「だから私は、てっきり1950年代に建てられた粗末な作りのプレハブ住宅だと思ったんです。

 

 

そうしたら横井さんは

『うちは昔、お城だったんですよ』

と言うわけです。

 

それでその家というのは、

1700年頃、

日本の全国統一が実現されたころに建てられたことを知りました」

 

 

Jeanette Marantos

 

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