F1「不毛の地」アメリカ、今では空前のブームに…若者人気の火付け役はネットフリックス

読売新聞

 

 

 

大勢の来場者でにぎわった米国グランプリ(10月22日、米テキサス州で)=小林泰裕撮影

大勢の来場者でにぎわった米国グランプリ(10月22日、米テキサス州で)=小林泰裕撮影© 読売新聞

 

 

 

 

■視聴者数は過去最高、ホンダやフォードは再び参戦へ

 

 【ニューヨーク=小林泰裕】米国で自動車レースの最高峰・F1の人気が加熱している。2022年にテレビ視聴者数が過去最高を記録し、23年には41年ぶりに年間3回のレースが米国で開催される。コロナ禍による動画配信の普及を背景に、若い世代の人気を取り込んだ。脱炭素ルールの強化が後押しとなり、ホンダなど自動車メーカーが相次いで参戦を決めている。

■◆41年ぶりの「年3回」開催

 10月20~22日にテキサス州オースティンで開催された米国グランプリでは、約43万人が来場した会場は大きな熱気に包まれた。欧米メディアによると、3日間通してのチケットは数百ドル超と高額ながら、12年の約27万人から6割増加した。

 マサチューセッツ州の高校生デナン・マッケンドリックさん(17)は「鋭いターンやスピードが最高」と興奮気味に話す。動画配信を通じてF1に魅了され、毎年のように観戦に訪れているという。

 米国でF1中継を手がけるスポーツ専門局・ESPNによると、22年の米国内でのテレビ視聴者数は1レース平均121万人と過去最高を記録した。特に若年層で人気が高まっており、18~34歳の視聴者数は平均約24万人で、前年比4割増だった。F1公式サイトなどでの動画配信を含めれば、視聴者はさらに増えている可能性がある。

 米調査会社ニールセンによると、米国のF1ファンは22年に約4900万人と、19年から1割増加した。米国でのF1公式サイトへのアクセス数は19年から22年にかけて倍増したとの調査結果もある。

 人気の高まりを受け、23年は1982年以来、41年ぶりに年3回のレースが米国で開催される予定だ。2022年からマイアミが、23年からラスベガスが追加された。11月16~18日に開催されるラスベガスグランプリでは、カジノ街を貫く市街地コースでレースが行われる。

■◆「インディ500」に押され…

 米国では1950年代にF1レースの開催が始まったが、「インディ500」など競合レースに押されて人気が定着せず、92~99年と2008~11年には米国内でF1が開催されなかった。「F1不毛の地」とやゆされることもあった。

 米国での人気の火付け役とみられているのが、19年に配信が始まったネットフリックスのF1ドキュメンタリー番組「ドライブ・トゥ・サバイブ(邦題・栄光のグランプリ)」だ。コロナ禍で視聴者数を伸ばし、F1に関心のなかった層を取り込んだと評価される。

 17年にF1の運営組織を米メディア大手リバティー・メディアが買収し、デジタル戦略に力を入れたことも奏功した。

■◆脱炭素ルール導入が後押し

 26年から、新たな脱炭素ルールが導入されることも注目を集める一因となっている。駆動装置の出力は現在のガソリンなどを燃料とするエンジン8割、電動のモーター2割から、5割ずつとなる。燃料もガソリンを禁止し、二酸化炭素の排出が少ない合成燃料などの活用が必要になる。

 電気自動車(EV)開発に注力するため21年限りでF1から撤退したホンダが26年から復帰するほか、米フォード・モーターと独アウディも26年から参戦する。フォードは約20年ぶりの復帰、アウディは初参戦だ。

 脱炭素技術を磨き、アピールする場になるとの思惑が背景にある。各社にとって米国は重要市場であり、ホンダの販売台数の3割弱は米国が占めている。F1で好成績を収めることができれば、ブランドイメージの向上も期待できる。

 ただF1には、エンジン開発などで年間数百億円が必要とされ、ホンダもこれまで参戦と撤退を繰り返してきた。肝心の米国市場の人気も、1980年代をピークに低迷した歴史がある。「一過性のブームで終わらせないためには、米国人のトップレーサーを育成するなど、息の長い取り組みが必要になる」(F1関係者)との指摘もある

 

 

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