ホストがすべて“悪”というわけではない」「選択権はお客様にある」…現役ホストが語る「社会とホストクラブ」のいびつな関係

現代ビジネス

写真/週刊現代

 

 

 

 空前のホストブーム。だが一方で近年、そのイメージが著しく低下している。中でもホストクラブで作った高額な「売掛金」を支払うために街頭に立ち客を取る女性たちの存在が問題となっている。 

 

 

 

ホストジャーナリストとして業界の動向を注視してきた現役のホストで経営者の心之友也さんは、「ホスト=悪ではない」と述べる。  前半記事『歌舞伎町で刺されたのもホストだった! 空前のブームでキャストの質は二極化…現役ホストが明かす、イメージ低下が指摘されるホストクラブ「本当の内情」』に引き続き、社会問題に詳しいジャーナリストの千葉春子氏が取材した。

「これが僕たちの生業です」

『CANDYS HEAVEN』のホスト兼経営者の心之友也さん

 

 

 

 

 「ホス狂」という言葉に象徴されるように、10代後半、20代の若い女性がお金もないのに目当てのホストに会いたい、No.1にしたい、との理由から、連日、店を訪れる。支払い能力に乏しい彼女たちは高額なツケを積み重ねた結果、お金を手っ取り早く稼ぐために自分の身体を売るといった事象が多発し、社会問題になっている。  そこで『CANDYS HEAVEN』のホスト兼経営者の心之友也さんに尋ねると、次のような見解を述べた。  「もちろんそうした問題がある、ということは聞いています。ただ、僕自身の周囲ではあまり感じていないんですよ。というのもまず、お客様に職業を聞くことは業界のタブーです。  何の仕事をして収入を得ているのかを知らないことなんてざらにあります。お客様自身が言わない限り、職業や年齢を尋ねることはしませんから。  たしかにホストクラブを利用する方は、水商売や風俗業のお客様がかなり多いということは実際にあります。それなりの収入があるからホストクラブに来れる、ということなのではないでしょうか。  そんな彼女たちが、僕たちに強い愛情を抱き会いに来てくれるわけですから、熱く応援を頂けるようにこちらからもアプローチをかける。これがぼくたちの生業です。とはいえ、本当の意味で資本力のない人に無理な営業をかけることは推奨しませんし、心情的にもできません

 

 

 

 

 

問題の多くは今に始まったことではない」

 そうはいうものの、ホストクラブに通ったことによって、風俗に堕ちた女性も数知れない。  「僕自身はそういったこと(※編集部注・風俗などの仕事を客に勧めること)を強要したしたことはありません。ただ、自身の売上を上げるために、女の子に(※編集部注・夜の)仕事を勧めるキャストはいるんでしょうね。  実際に、店にきた彼女たちのほうから『どうやったらもっと稼げるかな』といった相談を持ち掛けられることはあります。だからといって、強制的に労働を強いるというのは決して良い判断とは言えません」(友也さん、以下「」も)  ホストと客を巡る問題が多発しているように思えるのだが、友也さんは「こうした問題の多くは今に始まったことではない」として、今のホストがすべて悪いという見方を否定する。

選択権は女性たちにある

 「歌舞伎町の内側にいる身としては、世間で指摘されているような問題が増えている、という感覚はないんですよ。歌舞伎町内ではこれまでにも数々の問題が起きていました。  ただ、それはコミュニティ内で処理されていたため、表沙汰にならないものが多かった。それがお客様やキャストの分母が増えたことにより、一般の人の目にも届くようになったのではないでしょうか」  そこにはSNSやYouTubeなどによる発信の存在も大きいだろう。これまで閉じられていたコミュニティの中で起きていたことが、世間に広く伝わることになる。それを見た人々が「大変なことが起こっている」と過剰に反応する――たしかにその側面も否定はできない。  友也さんはさらに、こうした問題が起きるのは、ホストとその顧客の女性たちだけが原因ではないと強調する。  「というのも、選択権はお客様にあるんです。彼女たちがホストクラブに通わない選択はいくらでもできるんです。僕たちから『もうお店に来ない方が良いよ』と、促すことだってあります。  ですが、彼女たちは様々理由があって歌舞伎町にいるからこそ、簡単にはこの街を離れません。彼女たちは自らで選択して、歌舞伎町という町に出向いて、関わる相手を選んできている

 

 

 

 

 

ホスト」を必要とする彼女たち

 

 さらにホストクラブに通う女性たちを取り巻く社会の現状について、友也さんは訴える。  「勘違いしてほしくないのは、女性たちに自己責任を求めているわけではないんです。問題の根源は、彼女たちが歌舞伎町の外へ足を踏み出し、一般の社会に戻ったとき、そこに彼女たちの求める幸せがない、ということが根本にあると思うんです。  ホストクラブに行かないと寂しさを埋められない、ここではないと楽しいことがない。居場所がない。そうした状況にしてしまった、今の日本の社会にも問題があるのではないでしょうか。  今、ホストクラブに行くことでしか不安を解消できないという人たちが無数にいて、その背景や根っこの部分にはどんな問題を抱えているのか、そこを探る必要があると思います。  一辺倒にホストを責める前に、まずはそこにも目を向けてみて頂きたい。むしろ、一緒に考えていきませんか? といいたい。外の世界に居場所や目的が見つかったら、彼女たちはホストクラブを棲家にしなくなるかもしれません。  もし、日本の教育に男女間のエスコートや美意識向上の項目が組み込まれ、社会全体の幸福度が上がったとします。  それが故に『ホスト』って仕事がなくなってしまうのなら、僕自身それは仕方のないことだと思っているんです。そんな社会になればいい、と。  でも、現実は僕たちの仕事を必要としてくれている人が多数いる。だから、ホストクラブはあるんだと思うんですよ」

現代社会が生み出した問題

 さまざまな事情を抱える女性たち――彼女たちが自分の居場所や癒しをホストクラブでしか見いだせないのだとすれば、立ちんぼも多額の借金で苦しむ女性たちを減らしていくのは難しい。  歌舞伎町で起きている問題は、実は現代社会が生み出した問題でもあるかもしれない。  行き場のない少女たちの行き先が、歌舞伎町以外にも見つかる社会になることを願うばかりだ。  取材・文/千葉春子(ジャーナリスト)  ・・・・・  さらに関連記事『「風俗街の病院」に勤める新人女医が驚愕…トイレから血まみれで出てきた14歳少女の「衝撃の姿」』では、いま起きている“もうひとつの異変”について、詳しく報じています。

週刊現代(講談社

 

 

 

 

 

「ホストがすべて“悪”というわけではない」「選択権はお客様にある」…現役ホストが語る「社会とホストクラブ」のいびつな関係(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース