米国で日本車離れの動き EV化遅れ、顧客奪われる

時事通信

 日系自動車メーカーが、米国の市場で顧客を奪われ始めている。電気自動車(EV)への移行が遅れているため、EV大手テスラをはじめとした他社製のEVに乗り換える動きが強まっている。一方、米国ではこの数年、ハイブリッド車(HV)の人気も伸びており、HVを得意とする日本勢に追い風だ。EV化を緩やかに進める日系メーカーの方針は吉と出るか凶と出るか。(時事通信社ニューヨーク支局 武司智美)

 

 

 

 

  【ひと目でわかる】北米の市場で予想される自動車の割合

 

 

 

トヨタ、ホンダからテスラに

テスラのEV「モデルY」=2023年9月13日、米ミシガン州デトロイト(時事通信社)

 

 

 

 

 

 日本車離れの動きは、米国などで自動車ローン関連の信用調査を手掛けるエクスペリアンが2022年にまとめたデータに、くっきり表れた。米市場でEV販売首位テスラの「モデルY」を購入した顧客がもともと乗っていた他社製の車を調べたところ、トップ4は、トヨタ自動車「RAV4」と同高級部門レクサス「RX」、ホンダ「CR-V」、同高級部門アキュラ「MDX」と、いずれもトヨタとホンダのモデルが並んだ。モデルYは20年に市場投入されたスポーツ用多目的車(SUV)だが、22年時点の販売台数は米国全体で6番目に多く、日本勢への影響は決して小さくない。

 

 

 

 

 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の売れ筋のEV「シボレーボルトEUV」を対象にした23年春の調査でも、顧客が前に乗っていた車のトップは、シボレーの他モデルを抑えてトヨタの「プリウス」という結果に。シボレーブランド以外でこれに続くのはホンダ「シビック」、トヨタ「RAV4」、ホンダ「CR-V」と、やはり日本車だった。  他にドイツのフォルクスワーゲン、米フォード・モーター、韓国の現代自動車が米国に投入しているEVに関しても、トヨタやホンダ、SUBARUから顧客が流れている。

 

 

 

悲しみつつGMへ

 「HVの先駆者トヨタ、EVへの移行に苦しむ」。

 

米紙ニューヨーク・タイムズは、そう題した記事を2023年9月10日付の紙面に掲載した。

GMの「ハマーEV」を試運転するバイデン米大統領=2021年11月、米ミシガン州(AFP時事)

 

 

 

 記事の中で、米アリゾナ州在住で長年の「トヨタファン」を自称するレイチェル・キューリンさんが、トヨタのEV導入が遅いことを理由に、悲しみつつもプリウスからゼネラル・モーターズ(GM)のEVに乗り換えた事例を紹介。レイチェルさんは、燃費が良く頼りになるHVを評価してきたが、「トヨタを愛する人々の選択肢はどこにあるのか。本当に悲しい」と複雑な胸中を明かした。  

 

 

こうした調査結果や報道は、

それだけ日本車が米市場で人気を誇ってきた裏返しではある。

 

 

ただ、

 

EVを求める層に向けたラインアップを用意できていないために、

 

既存の顧客を少なからず失っていると言えそうだ

 

HVが選ばれる理由

 米国では日本よりもEV化が急速に進む一方、HVの販売割合も増えている。米エネルギー情報局によると、23年4~6月期の米乗用車販売に占めるEVの割合は6.7%、HVは7.2%だった。20年はそれぞれ1%台と2%台にとどまっており、いずれもこの3年ほどで急増した格好だ。  トヨタは現在、米国で20を超えるHVのモデルを展開している。EVや燃料電池車も含め「電動車」と呼ぶカテゴリーの販売台数は、20年1~3月期の約5万9000台から23年7~9月期には3倍の約18万5000台まで拡大した。

高騰したガソリン価格の表示板=2023年10月5日、米カリフォルニア州ロサンゼルス(AFP時事)

 

 

 

 ホンダの「電動車」(現状ではハイブリッドのみ)も、20年1~3月期の約1万1000台から23年7~9月期の約8万1000台へと大幅な伸びをみせた。日系メーカーの担当者は「ガソリン価格の高騰を受けて、HVの売れ行きが好調だ。EV用充電網がまだ十分に整備されていないことも、HVが選ばれる理由になっている」と分析する。

 

 

 

27年に逆転か

 

 ブルームバーグ通信も23年10月4日付で

 

「アメリカの高いEVコスト、買い手をHVに走らせる」という記事を配信。

 

 

「潜在的なEV購買層が、いつまでも下がらない価格と不十分な充電設備にうんざりし始め、HV(の需要)がカムバックして(戻って)いる」と指摘した。

 

 

  ただ、米調査会社S&Pグローバル・モビリティーは、

 

北米の自動車市場に占めるEVの割合が

 

27年に29%となり、

HV(28%)を逆転すると推計している。

 

その後、EVは右肩上がりに増える一方、

HVは30年代に入るとシェアを落とし、

35年時点でEVが70%、

HVは18%と予想している。

 

 

 

 

 

 

充電するEVピックアップトラック=2023年5月、米カリフォルニア州リッチモンド(EPA時事)

 

 

 

 

 同社の自動車業界分析部門エグゼクティブ・ディレクターのマイク・ウォール氏は「26~27年ごろから市場に投入されるEVの車種が急増し、販売が飛躍的に伸びる」と予測。

 

 

日本勢のHVについては、

「それまでに相当な数を売るだろうし、その後も割合がゼロになるわけではないから売れ続ける」と見通しつつ、

 

EVへの移行が遅れれば、長期的には業績に打撃となる」と分析した

 

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