ロシア、24時間で戦車55両・兵士1380人損失か アウジーイウカ攻勢継続

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ウクライナ東部アウジーイウカの様子(Ozge Elif Kizil/Anadolu via Getty Images)

 

 

 

 

ウクライナ侵攻を続けるロシア軍はつい最近、4日間で戦車8両を含め、少なくとも68両の装甲車を失った。1年8カ月に及ぶウクライナ侵攻でロシア軍は苦戦しているが、そうした中でも今回の損失は特に大きい。同期間にウクライナ軍が被った損失は、ロシア軍の10分の1とみられている。 68両という損失車両の数は、オープンソースの情報を分析しているアンドルー・パーペチュアがソーシャルメディアに投稿された写真や動画で確認したもののみが含まれている。ロシア軍の実際の損失は、これよりもかなり大きいことはほぼ間違いないだろう。 この戦闘についてウクライナ軍参謀本部は、19日から20日にかけた24時間で戦車55両を含む175両もの装甲車を破壊したと発表した。昨年2月以来、ロシア軍が1日に失う戦車は平均してわずか3両だった。同軍はまた、アウジーイウカ上空で少なくとも戦闘機5機を失ったと報じられている。 兵士の死傷者数は車両の損失に比例している。ウクライナ軍参謀本部は、20日までの24時間でロシア兵1380人が死亡したと発表。ロシアの侵攻以来、双方における1日の犠牲者数としては最多規模だ。 ロシア側の犠牲者増加の要因は明らかだ。ここ数週間、各兵力最大2000人の7、8個の連隊と旅団が、ウクライナで最も防御が固められている都市のひとつであるアウジーイウカを包囲し、防御を切り崩そうと試み続けるも、失敗している。ウクライナ東部ドンバス地方にあるアウジーイウカは、ロシアの占領下にあるドネツクの北西に位置している。 ロシア軍は連日、戦車や戦闘車両の長い隊列を組んで挑んでいる。来る日も来る日も地雷原を突っ切り、ミサイルで狙われるキルゾーンに入り込み、大砲の砲撃を受け、そして爆発物を積んだドローンの餌食になっている。 それでもなお、ロシア軍は部隊を送り続けている。 これは、ウクライナ側のアウジーイウカ守備隊を側面から攻撃して切り崩し、最終的には撃破することを目指したものだが、失敗続きのこの作戦にロシア軍がなぜこれほどの兵力と車両を投入するのかは、はっきりしない。ウクライナ軍はアウジーイウカに少なくとも2個の旅団と連隊、付属の大隊を展開している。 ロシア軍の指揮官らは、ウクライナ軍が6月に始めた南部での反転攻勢の強化を阻止するために、ウクライナ軍の旅団を多大な犠牲を伴う戦いに引き込もうとしている可能性がある。ウクライナ軍はこの反攻作戦で、ロシアが占領しているメリトポリの北側に伸びる軸と、さらに東側のモクリヤリ川沿いに伸びる軸で、少なくとも約16km前進した。 ウクライナ軍はまた、ドニプロ川の左岸や東部バフムートの南でも前進している

 

 

戦力引き付けの試みは失敗に

アウジーイウカの攻撃が本当にウクライナ軍の戦力を引き付けることを意図したものだとすれば、それはおそらく失敗している。「ウクライナ当局はすでに、アウジーイウカへの攻撃は戦力を引くための作戦だと認識しており、この軸にウクライナ軍が兵士を過度に投入することはないだろう」と米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は指摘した。 もしかするとこの攻撃は、引き付けの作戦ではないかもしれない。ロシアは単に、冬の到来を前にして、大規模な攻撃の機会が減少する中で勝利を収めようと必死になっているだけなのかもしれない。アウジーイウカの戦いで重要なのは、アウジーイウカ自体ではない可能性がある。 それはある意味、筋が通っているものの、実際には無意味な行為だ。ISWは「仮にアウジーイウカを掌握したとしても、ドネツク州の他の地域へ進軍する新たなルートが開かれることはない」と説明している。 だが、ロシアがアウジーイウカを象徴的な価値のために狙ったのだとすれば、それはひどい誤算だった。多くの血が流れた作戦が始まって2週間が経過した今、アウジーイウカが象徴しているのは、ロシア兵の死と大破した戦車だけだ。 攻勢の初日にロシア軍は撤退することもできただろう。ISWの推定では、ロシア軍は少なくとも45両の戦車や装甲車両を失った。だが、ロシア軍は攻勢を続けた。中隊や大隊が全滅しても、指揮官たちは気にしなかったようだ。 その意味で、ロシア軍のアウジーイウカでの作戦は、今年初めの東部ドネツク州ブフレダールでの作戦と不気味なほど類似している。ドネツクの南西約40kmに位置するブフレダールでは、ロシア軍の海兵隊が数週間、ひっきりなしにウクライナ軍の守備隊に猛攻撃をかけた。 ウクライナ側は、突撃隊を砲撃。ある交差点には、ロシア軍がウクライナ軍の攻撃に対応できなかった痕跡が残されていた。ウクライナ軍が数週間にわたってロシア軍に対する待ち伏せ攻撃を繰り返したこの交差点には、破壊された十数両の戦車や戦闘車両の残骸が散らばっていた。 激戦を経たブフレダールはいま、ウクライナ側にある。ロシア軍が制圧しようとできる限りの攻勢をかけているにもかかわらず、アウジーイウカも同様だ。 この戦いがどうなるかは分からない。ロシア軍は昨冬、ブフレダールの占領に失敗し、2つの海兵隊旅団の大部分を無駄に失った。だが春には、ドネツクの北約48kmに位置するバフムート周辺での戦いで、それより多くの犠牲を払いつつも、勝利を収めた。ウクライナ軍の旅団は時間を稼ぎ、ロシア軍に死傷者を出しながらバフムートから撤退したため、ロシア側にとってこの勝利は割に合わないものとなった。 キルゾーンが待ち受けるアウジーイウカに連隊を投入し続ければ、ロシア軍は最終的には同市を制圧できるかもしれない。だが、大きな損失を被った状態では、約970kmに及ぶ前線での作戦に支障をきたしかねない。 「この速い死傷ペースが続く限り、ロシア軍は効果的な攻勢をかけるのに必要とされる水準を満たせるよう、新兵を十分に訓練することができなくなる」と英王立防衛安全保障研究所は指摘している。

David Axe

 

 

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