売電単価が下がっても太陽光発電はペイする、その根拠を解説

前 真之

 

東京大学大学院准教授

 

 

 

太陽光発電の導入を義務化する一部自治体の動きに、反対意見が根強い。理由の1つが採算性の不透明感だ。「太陽光発電はペイするのか」。東京大学大学院の前真之准教授が、公表データを基に独自分析する。

(イラスト:ナカニシ ミエ)

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 これまで2回の連載で、「断熱・気密」「高効率設備」「太陽光発電」の「三種の神器」がエコハウスには必須であり、中でも太陽光発電は最も重要であることに触れた。

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 ところが最近では、デメリットばかり強調して「太陽光発電は導入すべきではない」という「太陽光ヘイト(憎悪)」とも言える言説がインターネットを中心にまん延している。本当に、太陽光発電は載せない方が良いのだろうか。

 太陽光ヘイトの見方を分析する前に、「エコハウスの三種の神器」について、おさらいしておこう。これらは3つそろって初めて、ゼロエネという真価を発揮するのだが、それぞれの役割は少し異なる。

「断熱・気密」「高効率設備」「太陽光発電」はそれぞれにメリットがあり、エコハウスの実現には欠かせない。こと電気代や二酸化炭素(CO<sub>2</sub>) 排出量の削減に関しては、太陽光発電は最強の必須アイテムである(出所:公表資料などを基に筆者が作成)

「断熱・気密」「高効率設備」「太陽光発電」はそれぞれにメリットがあり、エコハウスの実現には欠かせない。こと電気代や二酸化炭素(CO2) 排出量の削減に関しては、太陽光発電は最強の必須アイテムである(出所:公表資料などを基に筆者が作成)

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 1つ目の断熱・気密は、冬の「ヒートショック」、夏の「熱中症」に苦しめられている日本の住宅では、その強化が不可欠である。ただし、日本では暖冷房の使用を控えようとする意識が根強いので、住宅全体の消費エネルギー量に占める暖冷房エネルギーの割合がもともと少ない。断熱・気密は室内環境の改善に必須だが、大幅な省エネ効果は見込みにくい。

 2つ目の高効率設備は、導入すれば生活に必要な熱や光を少ないエネルギーで賄うことができる。LED照明や自然冷媒ヒートポンプ給湯機「エコキュート」など、設備の効率向上は、日本のお家芸であったが、残念ながらすでに効率向上は頭打ち。今後、大きな改善は期待できそうにない。

 3つ目の太陽光発電は、再生可能エネルギーの筆頭格。住宅において実用的な再エネは、太陽光発電のみ。1度導入すれば、ゼロCO2、ゼロコストの電気がつくれるのだから、電気代削減につながる必須アイテムであることに疑いの余地はないはずだ。

 では、特によく耳にする「太陽光発電はもうペイしない」という反対意見を、ファクトチェックしてみよう

 

 

売電単価が下がっても太陽光発電はペイする、その根拠を解説 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)