「プロ野球選手と高校球児ほど違う」三冠王・村上宗隆はショックで自信喪失…大谷翔平が侍ジャパンで示した“驚愕の実力”
〈10年ぶりに再会した大先輩に「何でブルペンキャッチャーしてるんですか?」…大谷翔平がWBCで見せた“ヒーローの品格”〉 から続く
【特別公開】大谷選手の打撃練習を見てショックを受けた三冠王・村上宗隆選手を写真で見る
現役時代、栗山英樹監督が率いた日本ハムで、ダルビッシュ有、大谷翔平とバッテリーを組んだ経験を持つ元プロ野球選手の鶴岡慎也氏。侍ジャパンが世界一に輝いた2023WBCでは、ブルペン捕手としてチームに帯同した。 ここでは、ブルペンから見たWBC優勝の裏側や、栗山監督、ダルビッシュ投手、大谷選手などの素顔を綴った鶴岡氏の著書『 超一流の思考法 侍ジャパンはなぜ世界一になれたのか? 』(SB新書)より一部を抜粋。侍ジャパンの練習中、大谷選手のスゴすぎる打撃に対して、ほかの選手たちはどのような反応を見せていたのだろうか? (全2回の2回目/ 1回目 から続く) ◆◆◆
打撃練習は、日本選手への「メッセージ」
WBCの壮行・強化試合である3月4日の中日戦(バンテリンドーム ナゴヤ)、3月6日の阪神戦(京セラドーム大阪)で、大谷選手が打撃練習をしました。打球は広い両球場の上段に大きな弧を描いて突き刺さりました。 私は外野で打撃練習の球拾いをしながらその光景を見ていました。ふつう、このぐらいの角度で打球が上がれば、外野のこのあたりに落ちてくるというのは肌感覚で分かるものです。しかし、大谷選手の打球は落下するどころか、打球速度が落ちず、スタンド上段まで届いてしまうのです。 大谷選手と他選手の差を表現するなら、「プロの1軍と2軍ほど違う」と言うよりも、「プロ野球選手と高校球児ほど違う」の表現が妥当でしょうか。中日や阪神の若手選手は、あたかも花火大会でも見るように、打球が打ち上げられるたびに喜び、また驚愕の表情をしていました。スマートフォンで動画撮影をする選手も多かったです。 ファンサービスという側面もあったのでしょうが、岡本選手や村上選手ら日本球界の次代を担う選手に見せる意図もあったのかもしれません。2人のホームラン打者は、打撃ケージに貼り付いて見入っていました。私は大谷選手のメッセージだと思っています
「これぐらいのスイングスピード、打球速度、打球角度、コンタクト能力。それらが結集すれば、あそこまで打球が飛びます。メジャーで本塁打以上マークできますよ」というメッセージだと。
大谷が放った特大3ランが韓国戦の不安を打ち消した
WBC4戦目、オーストラリアのデーブ・ニルソン監督は、メジャー通算105本塁打。ブルワーズ時代の99年には野茂英雄投手とバッテリーを組んで12勝に導いています。00年には登録名「ディンゴ」で中日に入団。04年のアテネ五輪ではジェフ・ウイリアムス投手(阪神)とバッテリーを組み、日本戦の勝利に貢献。オーストラリアは銀メダルを手にしました。日本野球を知り尽くしています。 昨年11月の強化試合では、「侍ジャパン」は8対1、9対0でオーストラリアを一蹴しましたが、オーストラリアはその後の国内リーグで調子を上げ、WBC初戦の韓国戦に勝利。 油断は禁物で臨んだ試合でしたが、初回、大谷選手が放った東京ドームの看板直撃の特大3ランがすべての不安を打ち消しました。
村上は大谷の打撃練習を見て自信喪失(?)
大谷選手の打撃練習の話には続きがあります。実は1次ラウンドのとき、試合前のアップをしている近藤健介選手と村上宗隆選手に呼ばれたんです。 「ツルさん、プロ5年目って、翔平よりムネのほうが凄かったですよね?」 「どういうこと?」 「ムネが大谷選手の打撃練習を見ていて、凄すぎてショックだったんですって」 思えば2月21日、WBC「侍ジャパン」の宮崎合宿における実戦形式の打撃練習で、ダルビッシュ投手が「初登板」。真ん中高めのツーシームを村上選手はスタンドまで運びました。 村上選手は「風です」と謙遜しましたが、ダルビッシュ投手は村上選手を絶賛。 「こんな(みんなが見ている)ところで、公開処刑されて悲しいです(苦笑)。あの球をそんなに簡単にはメジャーのバッターは打てない。それを1発で打ったのでびっくりしました」
最高の形での村上の復活
それだけに、近い将来のメジャー入りを視野に入れているだろう村上選手にとって、大谷選手の打撃は衝撃的だったに違いありません。そういうわけで、同じ「高校出プロ入り5年目」の比較となったわけです。大谷選手のプロ5年目は故障もあったので、4年目MVP時の打撃成績を挙げてみましょう。 ・大谷16年=104試合104安打、打率.322、22本塁打、67打点 ・村上22年=141試合155安打、打率.318、 56本塁打、134打点 近藤選手と私が2人で、まるで村上選手を励ますような雰囲気でした。 「ムネは三冠王なんだから、ムネのほうが凄かったんだよ」(近藤、鶴岡) 「でも、もっと上をめざさなきゃいけないんですね」(村上) それが1次ラウンドの村上選手の不調と関係しているのかは定かではありません。しかし、準決勝のサヨナラ打、決勝の本塁打と、最高の形で村上選手は復活しました
メジャー超一流選手とのプレーは、自らを比較対照させる「物差し」に
大谷翔平選手と一緒のユニフォームでプレーしたことは、村上選手だけではなく、ピッチャー陣、バッター陣にとっても最高の刺激になったことと思います。私は大谷選手のテクニカル面はもちろんのこと、フィジカル面を注目してほしいです。「パワーから生まれる技術がある」というところです。 さらに、メジャー超一流選手とみずからを比較対照させる1つの「物差し」になったと思います。今後、メジャー志望選手は増えるでしょうね。 「日本球界の空洞化」を心配する人もいますが、今回のWBCを目の当たりにした子供たちからまた有望選手がきっと出てきます。そういう意味でも、今回のダルビッシュ投手、大谷選手のWBC参加は日本野球にとって意義深いことでした。
鶴岡 慎也/Webオリジナル(外部転載
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