斜壁」が積み重なる最先端オフィス、高架沿いで光・音・風を制御

中東 壮史
 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

東京都台東区のJR総武線沿線に、銀の器を積み重ねたような形状のオフィスビルが完成した。外観を特徴付けるのが、斜めに傾いた壁「斜壁(しゃかべ)」だ。セキュリティーや照明・空調などの設備システムをタブレットで制御できるシステムを備えた最新オフィス、「MONOSPINAL(モノスパイナル)」で、2023年8月末から入居開始している。

写真の中央に見える銀色の建物が「MONOSPINAL」。左の高架線路にJR総武線が走る(写真:日経クロステック)

写真の中央に見える銀色の建物が「MONOSPINAL」。左の高架線路にJR総武線が走る(写真:日経クロステック)

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銀色の斜壁による外観が特徴的だ(写真:日経クロステック)

銀色の斜壁による外観が特徴的だ(写真:日経クロステック)

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 MONOSPINALはゲーム制作会社の本社ビルだ。地下1階・地上8階建て、延べ面積は約3570m2。建築の設計・監理者は山口誠デザイン(東京・港)で、施工者は清水建設だ。構造と機械、電気設備の設計・監理はアラップ、外構工事はSOLSO(東京・港)が担った。設計期間は18年10月~20年2月、工事期間は20年3月~23年6月だ。

 山口誠デザインを主宰する山口誠氏によると、発注者の要望は「建物外部からの視線を気にせずに仕事できる環境」だった。敷地は雑居ビルに囲まれ、すぐ隣には電車が頻繁に通過するJRの高架線路がある。

 山口氏は、「外部からの視線」の他、オフィスの作業環境を整えるために「直射光の遮蔽」「間接光の入射」「鉄道騒音の防音」などをテーマに斜壁を提案。Grasshopper(グラスホッパー)によるパラメトリックスタディ手法を用いて形状を検討した。

 光や音環境の制御に加え、斜壁は、卓越する南北の季節風を屋内へと促すウインドキャッチャーの役割も備える。他にも高効率な空調や換気設備、照明設備、二酸化炭素(CO2)濃度制御、雨水利用設備などを設置し、建物全体で高い環境性能を実現した。

斜壁が光・音・風を制御するコンセプトイメージ(出所:Arup )

斜壁が光・音・風を制御するコンセプトイメージ(出所:Arup )

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斜壁について説明する山口誠氏(写真:日経クロステック)

斜壁について説明する山口誠氏(写真:日経クロステック)

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 同ビルの地下1階は駐車場で、地上1階がエントランス。2階にはアーカイブやシアタールーム、3階には声を録音するスタジオなどがある。4階から上には会議室や執務室などがあり、上階ほどセキュリティーが高くなっている。

MONOSPINALの断面図。斜壁の高さは上階ほど低くなり 、外側に向かって傾く角度が大きくなる(出所:山口誠デザイン)

MONOSPINALの断面図。斜壁の高さは上階ほど低くなり 、外側に向かって傾く角度が大きくなる(出所:山口誠デザイン)

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 主体構造は鉄骨造で、基礎免震構造を採用した。4階以上の執務室などがある階はグリッド状に配置した柱で支持し、3階を層間トラスによるトランスファー構造に見立て、下階の4隅のCFT(コンクリート充填鋼管)柱に集約した構造システムと連結させた。CFT柱は地下の免震装置の上に荷重を集約している。

構造計画のイメージ(出所:Arup)

構造計画のイメージ(出所:Arup

 

 

「斜壁」が積み重なる最先端オフィス、高架沿いで光・音・風を制御 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)