施工ミスを隠蔽していた横手駅前のビル、接合部の強度不足で補強に半年か
奥山 晃平
日経クロステック/日経アーキテクチュア
秋田県横手市のJR横手駅東口の再開発事業で、完成間近の複合ビルに施工不良が発覚した問題で、柱と梁(はり)の接合部の強度が不足していることが設計・監理者の調査で分かった。
ビルの安全性に大きな影響はないものの、接合部の補強を要する。対策には数カ月かかる見込みだ。設計・監理者のアーレックス・浅井謙建築研究所・Arch5共同企業体(JV)が2023年8月9日、再開発事業の実施主体である横手駅東口第二地区市街地再開発組合の理事会で報告した。
アンカーボルトのずれを吸収するために0.275度傾けた鉄骨柱(写真:横手駅東口第二地区市街地再開発組合)
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施工不良が発覚したJR横手駅東口の再開発ビルの2階平面図。問題の柱の位置を赤丸で示している(出所:横手駅東口第二地区市街地再開発組合)
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施工不良があった地上7階建ての複合施設「B-1棟」では、鉄骨柱を1階の基礎コンクリートと固定するためのアンカーボルトを65mmずれた位置に設置していた。
施工者の横手建設・半田工務店・伊藤建設工業JVはミスに気付いたものの、是正せずに隠蔽を図った。1階から3階まで長さが10.5mある鉄骨柱1本を0.275度傾けてずれを吸収。柱の傾きに合わせて2階の梁の端部を切断したり、柱と梁を接合するボルトの穴を新たに開けたりした。
横手建設が施工ミスの隠蔽について発表したのは23年7月7日だ。これを受けて設計者のアーレックスJVは、7月11日からビルの安全性などの調査を始めた。調査の結果、傾きに合わせて調整した柱と梁の接合部4カ所の強度不足が判明。同JVは8月9日、「接合部の金属板やボルトの交換など補強工事が必要」との見解を示した。
一方、42本の柱のうち1本が傾いていることの影響は小さいと見積もった。ビルの構造安全性に問題はなく、建て替える必要はないという。
アーレックスJVは今後、再開発事業で建設する建物の工事監理業務において、抽出検査で確認する柱の本数を増やす方向で検討している。これまでも抽出検査を実施していたものの、今回、問題となった柱は対象外だったため、施工ミスや隠蔽を見抜けなかった。
問題があった柱と梁の接合部(写真:横手駅東口第二地区市街地再開発組合)
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