設計よりも通水幅狭めた河川工事が原因、天神川の堤防決壊

佐藤 斗夢

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

 

兵庫県伊丹市の天神川で2023年5月に起こった氾濫は、河川工事に伴う仮締め切りの位置が設計と異なり、想定よりも川幅を狭めていたことが一因だと分かった。仮締め切りの土のうが越水で崩れ、ドライにしていた箇所に流れ込んだ水が河床から堤防に浸透して決壊を引き起こした。県が8月7日に開いた有識者委員会で明らかにした。

堤防の決壊現場の様子(写真:伊丹市)

堤防の決壊現場の様子(写真:伊丹市)

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 氾濫を起こした現場では、県が川の下を通るトンネルの拡幅と堤防の補強を進めている。被災当時は準備工事としてトンネル上部に仮設水路を構築するため、土のうを約1.6mの高さに積んで、左岸側の仮締め切りを実施。河川の水は、構築済みの右岸側の仮設水路に通していた。準備工事の施工者は宇都宮建設(兵庫県宝塚市)、設計者はいであ(東京・世田谷)だ。

仮設水路の完成イメージ。水路設置後、既設トンネルの撤去と掘削を実施する(出所:兵庫県)

仮設水路の完成イメージ。水路設置後、既設トンネルの撤去と掘削を実施する(出所:兵庫県)

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 設計では4m確保するはずだった通水幅が、実際には約2.5mしかなかった。設計よりも狭かったため、大雨による流量増加でせき上げに伴う越水が発生し、土のうが崩れた。施工計画には、仮締め切りの記載がなかった。

約2.5mの通水幅で施工した仮締め切り部と、設計時との比較(出所:兵庫県)

約2.5mの通水幅で施工した仮締め切り部と、設計時との比較(出所:兵庫県)

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 宇都宮建設は、設計通りに実施できなかった理由があったことは認めるものの、委員会での調査が継続しているので、現時点では公表できない考えを示す。一方で県は、設計通りにできない理由があったとは、同社から聞いていないという。

 仮締め切りでドライにしていた左岸側では、仮設水路を構築するために堤防を一部掘削し、河床のコンクリートを一部撤去。堤防の掘削面には遮水シートを設置していたものの、河床は地盤がむき出しのままだった。締め切った範囲に流入した水が堤体に浸透し、延長約30mにわたって決壊した。

堤防決壊時の再現(出所:兵庫県)

堤防決壊時の再現(出所:兵庫県)

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設計よりも通水幅狭めた河川工事が原因、天神川の堤防決壊 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

 

 

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2023/05/23