徹底比較
「稼げる建築士」は何が違う?
木村 駿
日経クロステック/日経アーキテクチュア
伊藤 威
日経クロステック/日経アーキテクチュア
2023年6月に実施した日経アーキテクチュアの労働実態調査では、1級建築士の平均年収は745万円だった。ただし、同じ1級建築士でも年収1000万円を超える人がいれば、年収300万円に満たない人もいる。ここでは「平均年収超」と「平均年収以下」の1級建築士の回答を比較し、「稼げる建築士」の特徴を探る。
属性・業務内容編
勤務先の業態や業務内容によって、年収にどのような違いがあるのだろうか。平均年収超の1級建築士と平均年収以下の1級建築士について比較してみよう。
まずは勤務先の業態。平均年収超の1級建築士の特徴は、平均年収以下と比べて、建設コンサルタント会社や総合建設会社に勤める人の割合が高い点だ。平均年収以下では建設コンサルタント会社が1.9%、総合建設会社が11.0%だったのに対し、平均年収超ではそれぞれ5.9%、27.9%を占めていた〔図1、2〕。
〔図1〕平均年収超を稼ぐ1級建築士の属性と業務内容
平均年収超の1級建築士の属性や業務内容について回答をまとめた。平均年収以下の建築士と比べると、「経営・管理」や「PM(プロジェクトマネジメント)」など組織や計画を指揮する業務を担う人が多い。設計業務でも「教育・研究施設」のような大型案件を担当した経験がある人が多い(資料:日経アーキテクチュア)
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〔図2〕平均年収以下の1級建築士の属性と業務内容
平均年収以下の1級建築士の属性や業務内容について回答結果をまとめた。平均年収超の建築士と比べると、「建築設計・監理」や「インテリアデザイン」を担う人が多い。設計業務では「戸建て住宅」のように消費者向けの小規模案件を担当する人が多数だ(資料:日経アーキテクチュア)
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一方、平均年収以下の1級建築士は設計事務所に属する人が圧倒的に多く、回答者の62.3%に上った。住宅会社・工務店で働く人の割合も高く、12.3%を占めた。
勤務先の規模に違いはあるのか。平均年収超の1級建築士は約6割が従業員100人以上の企業に勤めており、特に1000人以上の大手企業に勤める人の割合が30.1%で最も多かった。逆に平均年収以下では、10人未満の中小企業に属する人が約6割を占めた。
続いて役職を比較してみよう。平均年収超の1級建築士は管理職の割合が最も高く、41.9%を占めた。次いで多かったのが経営層で39.0%だった。一方、平均年収以下では経営層の割合が46.1%と最も高く、次に多いのは一般社員の31.8%。管理職は16.2%だった。
大手の組織設計事務所や総合建設会社、建設コンサルタント会社などで管理職として活躍する平均年収超の建築士と、自ら小さな設計事務所を経営するか、そうした組織に所属する平均年収以下の建築士──。以上のデータからは、そんな実像が浮かび上がる。
マネジメント人材の年収が高い
仕事内容にも違いが表れている。担当業務について複数回答で尋ねたところ、両者とも「建築設計・監理」が最も多かったものの、平均年収超の1級建築士は17.6%が「経営・管理」を、11.8%が「PM(プロジェクトマネジメント)」を挙げるなど、設計実務を手掛けるだけでなく、組織やプロジェクトを管理する業務に携わる人が多いことが分かる。
一方、平均年収以下の1級建築士については「建築設計・監理」の71.4%を筆頭に「建築積算・見積もり」や「構造設計・監理」、「インテリアデザイン」など、自ら手を動かしている人が多い様子がうかがえる。
設計を担当したことのある施設には、所属する組織の規模に起因するとみられる違いがあった。平均年収超と平均年収以下で、それぞれ上位5つの用途を見てみると、平均年収超では「教育・研究施設」が46.3%で5位に挙がった。小規模な設計事務所ではなかなか設計に携われない用途だ。
一方で、平均年収以下では「戸建て住宅」が76.6%。「集合住宅」が72.1%と多かった。一般消費者を相手にした小規模な案件を担当する人が多いことが分かる
「稼げる建築士」は何が違う? | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)