パンケーキ症候群」梅雨時から夏場にかけて要注意!…意識障害を起こして命に関わることも

読売新聞(ヨミドクター)

 じめじめした梅雨時から夏場にかけては、「パンケーキ症候群」に気をつける必要があるといいます。意識障害を起こすこともあり、これから夏場にかけては特に注意が必要です。いったい、どのようなものなのか、「秋葉原あつたアレルギー呼吸器内科クリニック」(東京都千代田区)院長の熱田了さんに聞きました。(聞き手・利根川昌紀) 

 

 

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むしろパンケーキ以外で

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――パンケーキ症候群とは、かわいらしい名称ですが、どのようなものですか。  パンケーキを口にした後、全身にアレルギー症状が出る病態です。湿疹やかゆみ、腹痛、下痢、嘔吐(おうと)、くしゃみ、せき、胸からゼーゼー音がする喘鳴(ぜんめい)といった症状が出ます。血圧低下や呼吸困難、意識障害を起こして命に関わることもあります。  症状は、パンケーキを口にした直後から30分以内に出ることが多いですが、4時間程度たってから出ることもあります。大人でも子どもでも発症します。 ――パンケーキ以外のものを食べても発症しますか。  

 

日本の場合、お好み焼きやたこ焼きを食べて発症する人の方が多いかもしれません。ただ、お店で食べた場合は、発症することはあまりないと思います。

 

 

 ――いずれも材料に小麦粉が使われています。小麦に対するアレルギーですか。  

 

パンケーキ症候群は、

小麦粉などの中に混入したダニが原因です。

 

 

小麦粉やホットケーキミックスの封を開けて使い切らず放置しておくと、

袋の中にダニが入り込み繁殖します。

 

それを口にするとアレルギー症状が出ます。

 

パンケーキ症候群は、

経口ダニアナフィラキシーと呼ばれています。

 

 

  ダニの数が少なければ問題は起きにくいですが、たくさん繁殖していると危険です。気温や湿度が高くなる梅雨時から夏場にかけては、ダニが繁殖しやすく、特に注意が必要です。  

 

小麦アレルギーも同じような症状が出ますが、

小麦アレルギーがある人は、

過去に症状が出たことがあると思います。

今まで小麦製品を食べて何も症状が出なかったのに、

パンケーキやお好み焼きなどを食べたら突然症状が出たといった場合、

経口ダニアナフィラキシーを疑います。  

 

正確に診断するには、

小麦をはじめ、

エビなど、

使われている食材に対するアレルギーがなく、

ダニに対するアレルギーがあることを検査で確認する必要があります。  

日頃から鼻炎やぜんそくがあるという人はなりやすいと考えられています

 

 

 

加熱してもダメ

――パンケーキにしてもお好み焼きにしても火を通します。加熱すればダニは死ぬのではないですか。  熱を通してダニは死んでも、一部のアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)は残るので、アレルギー反応は起こります。 ――症状が出たらどうしたらいいですか。  口の中がかゆくなる、全身に湿疹が出るといった程度で症状が治まることもあれば、急に息が苦しくなったり血圧が下がって意識がなくなったりすることもあります。特に、症状が急速に進行する場合は要注意です。  湿疹が出て嘔吐もして……という具合に複数の臓器に関連する症状が出たり、呼吸が苦しくなったりした場合は救急車を呼んでください。呼吸困難や意識障害になるアナフィラキシーショックという状態になると、命に関わります。  アレルギー症状を和らげる「エピペン」という注射薬を持っている人は、応急措置として使ってほしいと思います。  また、救急車が来るまでの間は、脳に血液が流れやすいよう両足を高くしてあおむけに寝かせます。吐いているようならば、喉が詰まらないよう横向きの体勢を取ります。心肺が停止している場合は胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行ったりAEDを使ったりし、蘇生措置をします。

小麦粉は使い切る

読売新聞社

―― 一度、症状が治まっても、パンケーキやお好み焼きなどを食べたらまた発症しますか。  ダニアレルギーがある人は、アレルゲンが再び体内に入ってくれば、同じような症状が繰り返し出る可能性は高いと言えます。 ――対処法はありますか。  経口ダニアナフィラキシーを引き起こす原因となるダニは、「気温25度、湿度75%」前後で増えやすいといわれています。小麦粉やホットケーキミックスを自宅で使用する場合、開封したら使い切ることが大切です。使い切れなかった場合は冷蔵庫で保管すると、ダニは増殖しにくくなります。  一方、アレルゲンに体を少しずつ慣らしていく「アレルゲン免疫療法」という治療法もあります。錠剤や注射薬によって体内にアレルゲンを投与し、3~5年程度かけてアレルギー反応を起こさない体にしていきます。最近は、錠剤を使った舌下免疫療法が広く行われています。アレルゲンの抗原エキスが含まれる錠剤を1日1回、舌の下に入れ、薬剤を体に吸収させます。ただし、重症の気管支ぜんそくがある人など、この薬を使えない人もいます。 ――ダニを排除するのは難しいですか。  家の中から100%排除するのはほぼ不可能です。ただ、こまめに掃除機をかけたりダニを防ぐ布団用カバーを使ったりすることでダニとの接触を減らすことはできます。

 

 

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あつた・りょう

あつた・りょう

 順天堂大医学部卒。国立相模原病院呼吸器アレルギー科、順天堂大呼吸器内科准教授、先任准教授などを経て、現在は同大呼吸器内科非常勤講師。2018年4月から、秋葉原あつたアレルギー呼吸器内科クリニック院長