「処分取り消しと賞金(約640万円)ポイントが戻るのを願う」全仏混合ダブルスで失意乗り越え優勝の加藤未唯が異例Vスピーチ

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女子ダブルスでボールガールへ球をぶつけ失格処分となっていた加藤未唯が混合ダブルスでグランドスラム初優勝を果たす(写真・AP/アフロ)

 

 

 

 

失意の涙を輝く笑顔に変えた加藤は、処分の取り消しを訴える異例の優勝スピーチを行った。

 

  【混合ダブルス画像】失格問題の加藤未唯が失意を乗り越え快進撃

用意してきた英文ペーパー

 異例の優勝スピーチだった。 「英語がそれほど上手ではないので準備してきました」  加藤がちょっぴり照れくさそうに優勝したときに備えて英文をしたためてきたペーパーを取り出した。右手でマイクを握った体勢で文面を読み上げようとすると、あいにくの風でペーパーがめくれ上がってしまう。悪戦苦闘するヒロインへ助け舟が入った。 「僕が持ってあげるよ」  機転を利かせてとっさにマイクを持ったのは、隣で見つめっていたプッツ。両手でしっかりとペーパーを持った加藤が、万感の思いを込めながら言葉を紡いでいく。 「ここまでチャレンジングな日々でした。特にここ数日は精神的にも大変でした」  4日に行われた女子ダブルスの3回戦の試合途中で、ボールガールへ球をぶつけ、当初警告だったものが、対戦相手のマリエ・ブズコバ(24、チェコ)とサラ・ソリベストルモ(26、スペイン)組の「失格では?」「わざとじゃないの」「泣いているじゃない」などの執拗な抗議で、失格に変わり、約640万円の賞金も、ポイントも取り上げられた。  加藤は優勝スピーチで異例の訴えを行った。 「失格は残念でしたが、主催者が処分を取り消して、ポイントと賞金を取り戻せるように願っています」  すでに正式に提訴。プロテニス選手協会も「不公平で不当な処分」との声明を出して、大会主催者に処分の取り消しと、賞金、ポイントの返還を働きかけているが、改めて、公の場で、加藤は、この問題を口にした。  スタンドには、女子ダブルスでペアを組んだアーディラ・スーチャディ(28、インドネシア)の姿もあった。加藤は、そのスーチャディにもこう話しかけた。 「アーディラ、女子ダブルスでペアを組んでくれて本当にありがとう。インドネシアのファンのみなさんにも感謝しています。私たちは失格処分になりましたが、全力を尽くしました。これからも女子ダブルスで頑張って、またここに来たいですね」  そして、こう続けた。 「ボールガールが無事であることを願っています。そして、女子ダブルスで対戦したペア、サラとマリエにも、またいい試合をしたいと私は願っています」

 

 

 

 

 

 会見に同席したプッツも「標準的な手順では、除外されていたと思う」と明言。出場継続が認められた配慮に感謝しながらこう語っている。 「ここに座っている彼女は、もう泣いていない。物語の最高の結末だ」  そもそも、プッツとペアを組む予定もなかった。  ドイツ紙の「WAZ」は「今大会のエントリーが締め切られる直前に、2人は混合ダブルスでペアを組むのを決めた」と、文字通りの急造ペアだったと伝えている。 「当初は2人とも別のパートナーと組む予定だったが、ともに大会エントリーに必要なランキングポイントの合計が不足していた。そこで加藤の当初のパートナーが、プッツに対して『彼女とプレーするのはどうだ』と声をかけたのがきっかけだった。ただ、加藤が英語をあまり話せない分だけ、コミュニケーションを取るのは困難を極めた。プッツも大会前の時点で『戦術や作戦はほとんどない。コートに立って、どうなるのかを見てみよう』と語っていた」  混合ダブルスのエントリーを済ませたのは、締め切られる2分前だったという。同メディアによれば、お互いのポジションや走るルートについて、プッツは「1週間も話し合っていない」と笑い飛ばしていたという。それでも大会では快進撃が始まった。

 

 

 

 

京都市で生まれ育った加藤は7歳から始めたテニスで、最初にダブルスで頭角を現した。2017年の全豪オープン女子ダブルスでは、ジュニア時代からお互いを知る穂積絵莉(29、日本住宅ローン)とのペアで、堂々のベスト4へ進出している。  四大大会優勝者として歴史に名を刻んだ。日本人選手による全仏オープン混合ダブルス制覇は1997年の平木理化、昨年の柴原瑛菜に続く3人目の快挙だ。ただ最後は息もぴったりだったプッツとのコンビは、次のウィンブルドンでは見られそうにない。 ドイツの一般紙「Bild」が、プッツの今後を伝えている。 「ウィンブルドンでは、プッツはおそらく混合ダブルスに出場しない。それでも、男子ダブルスのタイトルを長く欲してきた彼は、混合で手にしたタイトルに『ちょっと変な感じがするけど、混合もとても楽しかった』と語った。さらに『次に混合で出場するとしたら、そのときは未唯と一緒かな。ニューヨークでは再び混合で会えるかな』と続けている」  取り消しを訴えた処分の今後の扱いなど、まだ解決されていない問題は残るが、いろんな意味で世界の注目を集めることになった加藤は、7月3日開幕のウィンブルドンで、因縁の女子ダブルスと新ペアでの混合ダブルスに続けて挑むことになる。

 

 

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