バイデン、ATACMS長距離ミサイル供与の可能性に言及

ニューズウィーク日本版

<F16の供与に続き、ロシア領内まで届く長距離ミサイルATACMSも供与の動き。ロシアは>

ロシアからの連日のドローン攻撃で傷ついたキーウのビル。長距離ミサイルを求める声が強くなっている理由の1つでもある Pablo Petrov/REUTERS

 

 

 

ジョー・バイデン大統領は、ロシアの侵攻に対抗するためにウクライナが求めている米軍の長距離ミサイルシステムを、いずれウクライナに提供する可能性をほのめかした。

 

 

  【動画】ATACMSでウクライナは勝てるか? 

 

 

 

5月29日、ロシアがウクライナへの空爆を強化していることへの対応を記者から問われたバイデンは、ロシアの動きは「予想外ではない」と答え、「だからこそ、ウクライナに必要なものをすべて与え続けなければならない」と付け加えた。 続いて、スウェーデンのNATO加盟について何らかの動きがあるかと問われ、「来週」議論すると答えた。その後、ワシントンがウクライナに米国製地対地陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)の供与に合意する可能性について触れた。 ウクライナ内務省のアントン・ゲラシュチェンコ顧問はこのやりとりに関する動画をツイッターに投稿。そのなかで、バイデンはATACMSの供与について「それは今も検討中だ」と記者に答えている。 ウクライナのキラ・ルディク国会議員は、キーウに対する数日前の攻撃を含め、ロシアの攻撃が激しくなっていることから「われわれの要求に緊急性があることは明らかだ。長距離ミサイルをできるだけ早く手に入れる必要がある」とツイートした。 クリミアの奪還も可能になる ATACMSは、ロッキード・マーチン社製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)から発射される長距離地対地ミサイルで、ウクライナは以前からアメリカに供与を求めている。 一方、米政府はロシアが始めた紛争をエスカレートさせることを恐れて、300キロ以上離れたロシア領内の標的を攻撃できるこのミサイルの提供を見送ってきた。 一部の米軍関係者は、ウクライナが必要とするすべての武器、特にロシアが2014年に占領したクリミアの奪還を可能にする長距離システムを提供するよう米政府に繰り返し求めているが、米欧州陸軍の元司令官ベン・ホッジスはその一人だ。 ホッジスは30日に本誌に対し、バイデン政権は「最終的に」ウクライナにATACMSを提供すると信じていると語った。「話があまりにも遅々として進まないと、この戦争を無用に長引かせることになるし、腹立たしい」 バイデン政権は長距離精密兵器の提供には「引き続き消極的」な姿勢を見せているが、それは「米政府が求める戦略的成果を明確に定義したくない、あるいはできないからだ」と述べた。 「おかげで、バイデンはなかなか決定を下すことができずにいる。それはロシアを利するだけだ。ロシアが核攻撃に踏み切ることを恐れて、バイデン政権が自粛していることをロシアが察知しているからだ

 

 

 

 

ATACMSとクラスター弾で犠牲は少なくなる?

本誌の取材に対して、米国務省報道官は「米政府はロシアの侵略から国土を守るウクライナ軍を支援するために、利用可能な幅広い手段を引き続き使用する」という声明を出した。 それによれば、「米政府はウクライナと緊密に協議し、ウクライナの勇敢な国防軍を支援するために24時間体制で物資の提供を続けている」という。 コリン・カール国防次官(政策担当)は今年1月、ウクライナ側はATACMSがなくても「戦場での力関係を変えることができる」と発言している。しかし、長距離兵器の提供を望む声は高まっている。 5月末にウクライナを訪問したリンジー・グラハム上院議員(共和党)は、アメリカが早期にATACMSミサイルとクラスター弾をウクライナに提供すれば、ウクライナが奪還できる領土は「より多くなり」、「失われる人命はより少なくなる」と述べた。 イギリスはすでに、ウクライナに対してストームシャドウ巡航ミサイルを提供している。アメリカ欧州・アフリカ陸軍のマーク・ハートリング元司令官は、ストームシャドウの攻撃力はATACMSよりも優れていると述べている。ただし、ストームシャドウの射程は約200キロで、ATACMSより約50キロ短い。

ブレンダン・コール

 

 

 

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