価格以上のパフォーマンスはプロ機のなかでも随一

プロの信頼を勝ち得た120V技術投入のDAC/プリ、SPL「Diamond」をオーディオファンに推奨したい

2023/05/25生形三郎

 

 

スタジオへの多数の導入実績を持ちプロフェッショナルからの信頼も厚いブランド「SPL」が、日本のコンシューマーオーディオに向けた本格展開を進めている。今回ご紹介するDAC/プリアンプ「Diamond」もまた、オーディオファンにとって喜ばしい、現場クオリティの実力をもった製品となる。早速その実力をレポートしたい。

 

■プロからの信頼を得る独自技術が投入された質実剛健なモデル


SPLは、オリジナルのマスタリングコンソールをはじめとする様々なスタジオ機器を、世界中の著名スタジオに導入しているブランドだ。スタジオにおける重要な役割を担う機材だけに、如何にその信頼が厚いかが分かる。筆者も仕事で様々なスタジオに出入りするが、出音を決めるモニターコントローラーや各種アウトボード類など、各所で頻繁にその姿を目にするブランドである。

世界のスタジオに導入されるSPLブランド


そんなSPLは、高性能ヘッドホンアンプ「Phonitor」シリーズを発表してコンシューマー分野にも本格進出し、高い支持を集めてきた。それら製品は、プロ向けでも家庭向けでも投入する技術や設計思想は変わらず、一貫したハイクオリティを追求、実現していることが最大の特徴だ。Diamondの開発においてもその姿勢にブレはない。

SPL「Diamond」(294,800円/税込)


なかでも、本機搭載のSPL根幹技術となるのが120V技術「VOLTAiRテクノロジー」や「DLP120アナログローパスフィルター」である。VOLTAiRテクノロジーは、 ICベースの半導体オペアンプの4倍にもあたる±60ボルトの直流電圧で動作する独自開発オペアンプ「SPL 120V SUPRA」を用いた技術だ。±60ボルトという高い内部動作電圧によって高いヘッドルームを確保することで、最適かつ安定した動作範囲を確保して「心地よく、自然で、リラックスしたサウンド体験」を実現するとしている。

120Vの直流電圧で動作する独自の「VOLTAiRテクノロジー」を投入。この高電圧に対応するために、特別なオペアンプも開発している


また、アナログ出力に欠かせないローパスフィルターにも、そのVOLTAiRテクノロジーによって生み出される「DLP120アナログローパスフィルター」を搭載。一般的にDACチップ内でフィルタリング処理が行われるの対し、本機はDACチップの外部にてディスクリートでローパスフィルタを設置し、なおかつ先述のVOLTAiRテクノロジーを用いることによって、ダイナミクスやヘッドルーム、そして質感に優れる滑らかなサウンドの確保を追求している。これら根幹技術をもとに、「次世代の明瞭さと輪郭を捉えやすい音にチューニングしつつ、それを高精度かつナチュラルに表現する」ことを掲げて設計されているのが本機なのである。

ICベースの半導体オペアンプでの30V動作と120V動作の比較グラフ


その他の特徴としては、デジタル入力は、光デジタルと同軸デジタルを各2系統ずつ搭載している上、AES/EBU入力とUSB入力にも対応。USB接続時に最大768kHz/32bit、DSD 11.2MHzまでのフォーマットに対応し、なおかつワードクロック入力も備えており、クロックマスターとの組み合わせによってさらなるサウンドのチューニングを可能としているなど、充実したデジタル再生機能を誇る。

最大PCM 768kHz/32bit、DSD 11.2MHzまでのハイレゾ音源に対応


アナログ出力は、バランスXLRおよびアンバランスRCAの2系統を装備。さらに個別にダイレクトアウト(固定ボリューム出力)への設定を可能としているなど、信号ラインの使い勝手にも配慮が深い。これによって、例えばパワーアンプやアクティブスピーカーに接続したXLR出力は本体ボリュームで音量調整をしつつ、RCA出力は、ダイレクトアウトに設定してヘッドホンアンプなどに接続し、ヘッドホンアンプ内蔵のボリュームを用いて楽しむことができる。

背面のディップスイッチから、固定/可変出力の設定を切り替えられる

本体背面部


加えて、本機の特徴として、プロ機で培った高度な技術や音質を実現しながらも、実にシンプルな操作感を達成している点も注目ポイントである。いたってシンプルなレイアウトでまとめられたフロントパネルは、プロ向け機材にありがちな難解な操作は皆無だ。それでいて、プロの現場で求められる水準を実現するための機能がしっかりと備わっているので、ホームオーディオシステムに取り入れやすい製品である。

前面のノブはアルミ削り出し。入力切替やボリューム調整など、シンプルな操作で扱えるのも魅力

 

 

 

 

■モニター思想が活きるも神経質ではない、聴き心地の良いフラットサウンド


そのサウンドは、一聴して色付け無く客観的で、プロ向けモニターシステムを手掛けるブランドならではの仕上がりだ。音数の多さや立体的な楽器や空間表現力も過不足無く、音の質感も十二分で、本機よりもさらに高い価格帯のハイエンドDACに比類する実力を持っていることがよく分かる。なお、このSPL製品の価格を超えるパフォーマンスというのは、実はプロ機ジャンルにおける競合他社との比較でも、筆者が度々感じていたことである。

ホームオーディオにおいても遺憾なく性能を発揮する


サウンドで印象的なのは、S/N感が大変良く、一つ一つの音の陰影が見やすいこと。そして、モニター的でフラットなバランスながらも、質感の良さが十全である。これらはまさに、先述した120VテクノロジーやDLP120アナログローパスフィルターの恩恵なのだろう。それでいてホームオーディオ機器にありがちなキャラクター的な質感は一切存在しないので、まさに聴き心地の良いフラットサウンドを求める方にピッタリの音質だといえる。

ジャズのピアノトリオでは、3人の楽器同士の間合いが明解で、音楽が立体的に浮かび上がる。そしてやはりS/N感が良いので、スタジオのアンビエンスやピアノのサスティンなどがよく見えてくることが快い。ピアノの左手音域やウッドベース、そしてバスドラムの低域は、ローエンドまでしっかり再生しながらも、膨らみや重たさが皆無で爽やか。まさにモニター思想が活きていると感じる。だが、描写の方向性としては、立体感やS/N感に富みながらも鋭く神経質な描き方にならず、それが美点と言える。

バロックオーケストラの再生では、やはりホールへの音の広がりがしっかりと再現され、余韻の滞空時間の長さが明瞭に浮かび上げる点が実に爽快だ。また、ストレートな描写で、歌声や楽器の姿や音楽の和声が、ナチュラルに表出するさまが印象的だ。

先述のようにプロ機譲りの機能性や音質を備えながらも、いたってシンプルな操作感を実現していることが素晴らしい。また、SPLではDAC機能内蔵ヘッドホンアンプもラインナップしているが、愛用のヘッドホンアンプを活用するという点において単体DACである本機がジャストマッチと言えるだろう。

DAC/プリアンプとして、ヘッドホンアンプやアクティブスピーカーなどとの組み合わせにも活用できる


以上のように、本機「Diamond」は、プロの現場でも厚い信頼と評価を得ているSPLならではの確かな音質が実現された高性能DACである。ニュートラルで客観的なバランスながらも、同社の独自技術が生かされた透明感豊かな描写力と良質な聴き心地を備えており、高音質を追求するホームオーディオファンに推奨できる実力を持ったハイパフォーマンスDACであるとレポートしたい。

(協力:A&Mグループ株式会社

 

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