日本人にとって海外は「超ぜいたく」になってしまうのか…ニューヨーク旅行での“衝撃”

BUSINESS INSIDER JAPAN

 

最大9連休ともいわれる今年のゴールデンウイークや夏休みを前に、久しぶりに国外に足を延ばす人もいるのではないだろうか。 

 

 

 

 

 

 

JTBによれば、2023年のGWに海外旅行に出かける人は推定で20万人で、コロナの影響があった2022年に比べると4倍増加を見込んでいる。 電車などの広告を見て、「コロナからも回復した今年こそ」とひさびさの海外旅行を計画している人も多いのではないか。私もその1人で、GWよりも一足早く、4月にニューヨークに行ってきた。 もちろん「米国の物価高」は知っていた。が、現地で実際に体感するとその衝撃はあまりに大きかった。

チップだけで、日本の時給超え

過去のコラムにも書いたが、私は現在ベルギーに留学中で、イースター休暇を使ってニューヨークに向かった。 4月初旬、現地に到着した私はまずは、ニューヨーク在住の友人と3人でランチにでかけた。友人は「あまり外食しない」と言っていたが、レストランでサンドイッチとスープを注文し、3人で税込み87.1ドル(1万1323円)だった。1人当たりだと約29ドル(3770円)になる。 ※2023年4月20日現在の円相場は1ドルが134円、1ユーロが147円。今回の原稿では、便宜的に1ドル=130円、1ユーロ145円で計算しています。 その上、チップは「Suggested Tips」と記載されており、20%から。店によっては15%もあるようだし、自分で好きな価格をいれることもできるが、20%と提示されると低い価格は入れにくい。 この時のランチの場合、最低20%のチップ(16ドル)を支払ったため、トータルでの支払い額は103.1ドル(1万3403円)だった。 

 

16ドルのチップといえば、2000円を超える。

 

料理を運び、水をつぐだけで日本人の時給をはるかに超えるのだ。 

 

 

そして、高いのはレストランだけではなかった。 

高額な値段とチップに懲りた私は、

 

ファストフードを食べるためにチェーン店の「スマッシュバーガー」に行った。 

 

ドリンクと

ポテトと

バーガーを

頼んだところ、

 

会計は約20ドル(2600円)。

もちろん、1名分だ。 

そして、驚くことにオーダーしただけでもチップを要求された。

チップは、レストランと変わらず20%程度の数字がならび、選択制だ。

さすがにレジ打ちにチップを払う理由がわからなかったので、

恐る恐る無視した。

気だるそうな店員の視線がさらに冷たくなった。 

 

超高級品となってしまったファストフードを楽しみにしていたが、

出てきたハンバーガーはサイズも心なしか小さく、日本と変わらない気がした

 

 

 

 

 

「50%オフ」がちょうどいい

ニューヨークは、私にとって思い出の大好きな地だ。 小学生から高校生にかけて、父親の仕事の都合で毎年のように訪れた。最後に行ったのは10年ほど前で、そのころにはお気に入りだった大手書店の「バーンズ&ノーブル」やビデオやCDを販売する「タワーレコード」も跡形もなく消えており、時代の変化を感じた。 それでも日本に未上陸のブランドや、日本だと「割高」になるものを買って楽しんだ記憶がある。 今回、いつものデパートや洋服店にいってみたものの、割安感が全くない。結局買ったのは、50%オフになっていたTシャツなど服2着だけ。そもそもセール価格以外は、目にはいってこなかった。 アメリカ自然史博物館にいけば、入館料と2つの特別展で1人39ドル(5070円)、エンパイアステートビルの入場料は51.17ドル(6652円)……とすごい勢いでお金が飛んでいく。 もちろん、楽しかったことも沢山ある。 ブロードウェイでは、朝早くからチケットの割引センターに並び、当日券を99.5ドル(1万2935円)で買った。普通にチケットを買った場合、2万円は超えるミュージカルだったが、格安の当日券の席はなんと、1階ど真ん中で最高に良い席だった。 久しぶりに会った人との食事やコンサート、天気のよい日にセントラル・パークで昼寝をするなどの経験は、素晴らしいひと時だった。 しかし、こうした思い出がかすむほどに、インフレの衝撃が大きかった。

痛感し続けた「円」のデメリット

ただ、日本からではなく、欧州からニューヨークに旅行したメリットもあった。 1つはベルギーという地理的立地だ。ニューヨークまでは8時間ほどのフライトで、日本から約半分の時間ですむ。航空券とホテルはセットで購入したが、英航空大手のブリティッシュ・エアウェイズを利用し、7泊8日で1人13万円しなかった。 旅が大好きな私にとって、他国への移動コストが安い場所で自分が生活できているメリットは大きい。 もう一つは、ニューヨークでの出費の一部は、ベルギーで普段使っているユーロで換算できたことだ。 例えばスーパーでそもそもが高すぎる15ドルの寿司をみたとき、「日本円で考えると1950円」と考えると、さらに気持ちが沈んだ。 駐在妻として現地で生活している友人が「悲しくなるからもう、円で計算するのはやめたんだ」と呟いていたが、全く同じ気持ちだった。 ちなみにユーロの場合は、1ドル=0.9ユーロ(4月21日現在)なので、生活する上ではドル=ユーロという感覚となり、頭の中で換金した場合の為替のショックはない

 

 

 

 

 

 

 

日本のビッグマック指数はベトナムとほぼ同じ

ニューヨークに1週間ほど滞在していると、恐ろしいことにこの価格が「当たり前」になってくる。 次第に思ったのが、むしろ「高い」といっている自分のほうが世界からみたらおかしいのではないか、ということだ。 さすがにニューヨークほどではないが、ベルギーでもレストランでランチを外食すれば20ユーロ(2900円)はするし、フランスのケンタッキー(KFC)にいったらバーガーとポテト、ドリンクで10ユーロ(1450円)を超えてくる。 世界の物価はどうなっているのか? 参考に、英・エコノミスト誌の発表する「ビッグマック指数」を見てみることにした。 各国で販売されるビッグマックの価格を元に、それぞれの外国為替レートや物価水準を割り出す指数で、経済指標の1つとしても使われている。 55カ国中で最も指数が高かった第1位はスイス。このビッグマック指数によると、スイスのビッグマックは6.7スイス・フラン。1スイス・フラン=149.7円で計算(4月19日現在)すると、ビッグマック1個でなんと1002円になる。 日本は42位とベトナム(43位)の一つ前。韓国は31位、タイは32位、中国は37位だ。パキスタンも40位なので、日本より高いことになる。 タイに旅行した友人に聞けば、タイの物価はもう「安くない」と言う。 ベトナムはまだ安いようだが、現地に住む友人は「家賃はどんどん上昇し、現地の人の生活を圧迫している。ローンが特に怖い」「先月4万ドン(約230円)だったフォーの値段が白く塗りつぶされ、手書きで5万ドン(約280円)になっていた」と言っていた。

賃上げラッシュでは追いつけない、世界との「溝」

戦後日本では1ドル=360円の固定相場制を採用していた。1973年には完全に変動相場制に移行するが、経済発展をつづけた日本の「円」はどんどん価値を増し、結果的に、海外旅行は身近になった。 しかし、2022年6月、通貨の総合的な実力を算出する指標である「実質実効為替レート」でみると、統計が残る1994年以降で最低を更新。変動為替相場制に移行する前の低水準となり、「日本円の実力、半世紀ぶりの低水準」(読売新聞オンライン)と報じられた。 その意味では、インフレと円安が進む中でのニューヨーク旅行は、「1ドル=360円時代」に近いものがあったのではないかと感じた。 「安い日本」という言葉をこの数年よく聞くようになった。これが、外国人観光客が日本に殺到している理由の1つだろう。外国人は安く日本を満喫できても、日本人は、物価でも為替でも立場が低い。 海外に出るコストはどんどん上がるばかりだ。これに気づいたときに、寂しくなった。 日本企業で賃上げラッシュが相次いでいるというが、仮に月収で1~2万円程度上がったところで、円安やインフレが進む中で、他の先進国には追い付けない。 このままでは、特に欧米に足を運ぶのは、限られた人間だけになってくるだろう

 

 

 

 

 

 

留学が特権になってしまう日本

海外旅行のハードルの高まりについて話してきたが、日本からの「留学」となれば、なおさら影響は大きくなる。 岸田文雄首相は3月、議長を務める教育未来創造会議で2033年までに日本人学生の海外留学者を50万人にする目標を掲げた。 しかし、それは日本が変わらなければ、実現は厳しいのではないか。たとえ留学先に米国を選ばなかったとしても、為替でも、物価(それに伴う賃金上昇)でも世界の「ニューノーマル」との格差が開けば開くほど、海外留学は富裕層だけに許された「特権」になっていくことになる。教育格差は加速するだろう。 昔のようには海外で買い物ができなくなってしまった「日本」の現状にこのまま慣れていくのか。それとも、巻き返す方策があるのか……。 ニューヨークの街を歩きながら、考えずにはいられなかった。

雨宮百子

 

 

 

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30歳で大企業を辞めベルギー留学。想定外キャリアを選んだ理由は「取り残される危機感」だった

 

雨宮百子

ベルギーの欧州議会(左)と、「完全防備」で滞在した2022年1月の筆者。いずれも筆者撮影。

筆者提供

2022年の夏に、7年間勤めた新聞社を退職した。

最終出社日から約1週間後、私はフランスとドイツに挟まれた小国、ベルギーにいた。9月から、大学院に通い、欧州の政治やビジネスを学ぶことにしたのだ。長年にわたる夢や計画ではなかった。思いついたのは2022年の1月で、コロナ禍の真っただ中だった。

なぜ私が住み慣れた日本と定職を捨てて、留学という道を選んだのか?

理由は「国際標準の感覚から取り残される」という危機感があったからだ。

 

 

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